今回のニュースのポイント


国産LLMと国内AIデータセンターを統合:ソフトバンクは、SB Intuitionsが開発する国産LLM「Sarashina(更科)」シリーズを中核に、自社が管理する国内AIデータセンター上で運用するAI基盤の提供を本格化させています。


「データ主権」の確保を最優先:金融、医療、公共などの機密性の高いデータを扱う分野を対象に、海外の法域にデータを晒さず、国内で完結した安全なAI活用環境を構築し、2026年6月から順次サービスを提供します。


業界特化型モデル(LTM等)の段階的展開:通信業界向けの「Large Telecom Model(LTM)」をはじめ、公共や金融など各業界に最適化した特化型モデルを順次展開。守秘性の高いデータを用いたAI活用を支援します。


政府による5年間で1兆円規模の支援:政府は2026年度からの5年間で約1兆円規模の国産AI開発支援を打ち出し、ソフトバンクを含む国内企業による1兆パラメーター級のモデル開発を後押ししています。
 


 企業がAIを導入する際、コストだけでなく「どこにデータを置くか」が重要な判断軸となりつつあります。単にどのAIを使うかだけでなく、どこでデータを処理し、どの国の法律が適用されるかという場所の問題が新たな課題となっています。


 ソフトバンクは、子会社のSB Intuitionsが開発する国産LLM(大規模言語モデル)「Sarashina(更科)」シリーズを中核に、自社が管理する国内のAIデータセンター上で稼働するAI基盤の整備を加速させています。この基盤は、日本語に最適化したLLMと、国内のクラウドや専用環境での運用を前提としたアーキテクチャを特徴としており、「LLMと実行環境」をセットで提供する形をとっています。


 背景にあるのは、機密データとガバナンス、いわゆる「データを外に出せない」という事情です。海外クラウド上のLLMを利用する場合、物理的なサーバーが日本国内にあっても、運営企業の母国の法律(米国のCLOUD法など)によって、本国政府がデータにアクセスする権利を有する場合があることが懸念されています。金融・医療・公共といった分野では、個人情報や機微な業務データを国外法域に晒したくないというニーズが強く、国内資本・国内法域で運用される国産AIインフラがその受け皿となるとみられます。


 ソフトバンクは、こうした国産基盤の上に「Large Telecom Model(LTM)」のような業界特化型モデルを構築しています。自社内や国内データセンターでAIを動かすことで、これまで守秘性が高く活用の難しかった通話ログや契約情報なども、安全にAI処理の対象にすることが可能になります。

行政分野においても、ガバメントクラウドや自治体システムと連携しやすい国内基盤として、データの海外流出を懸念する組織での導入が想定されています。


 AIは近年、簡易業務ツールを超え、各国で「主権」や産業インフラの一部として位置付けられています。日本政府も、2026年度からの5年間で約1兆円規模の国産AI開発支援を打ち出し、国内最大規模の基盤モデル開発を推進するなど、AIを安全保障の重要領域と捉えています。ソフトバンクも自社のLLMやGPUクラスターを「デジタル主権の基盤」と位置づけており、AIはどの国の基盤を使い、どの法領域でデータを処理するかという主権に関わる選択肢になりつつあります。


 国産AI基盤が整うことで、国内の主要産業が安心してAIを活用し、生産性向上や新サービス創出につなげることが期待されています。一方で、国内インフラの維持には巨額の投資と半導体調達が継続的に必要であり、海外メガクラウドとのコスト・パフォーマンス競争も避けられません。「どこまで国内完結にこだわり、どこから海外メガクラウドを賢く使い分けるか」という判断が、日本企業のデジタル戦略における重要なテーマとなるでしょう。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)

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