脱炭素に端を発した、ガソリン車から電気自動車(EV)へのシフトチェンジの潮流は、拡大の一途を辿りそうだ。大手調査会社のAstute Analytica社が発表したレポートによると、EVの世界市場は、2050年までに72兆7,980億ドルに達すると予測されている。
自動車メーカーの低迷は、自動車部品メーカーの低迷にも繋がる。ただでさえガソリン車に比べ、EVの部品の数は約1万点少なくなるとされており、自動車部品メーカーにとっては逆風の真っ只中だ。事業の縮小や廃止を検討する企業も出て来る中、新たな活路を見出す企業も出始めている。長年、日本の基幹産業を支えてきた自動車部品メーカーの、新たな挑戦を見て行こう。
電気機器大手のマブチモーター株式会社は、自動車向けの小型・中型モーターで世界的なシェアを確保している。
日産自動車株式会社のグループ会社であるジヤトコ株式会社は、自動車用変速機(CVT/AT)市場で世界シェア首位を握っていたが、EVでは他社にお株を奪われていた。その同社が10日、日産の新型EV「アリア」において、減速機用部品が採用されたことを発表した。
既にEV市場で一定のシェアを確保しつつあるのが、国内大手の電子部品メーカー・ロームだ。欧米の自動車メーカーにSiCパワーデバイスなど数多くの電子部品を供給している同社は、更なる車載アプリケーションの小型化を実現する周辺部品として2.5mm×1.3mm小型「PMDEパッケージ」ダイオード(SBD・FRD・TVS)のラインアップ拡充を発表した。パッケージを小型化し実装面積を42%削減しながら、従来パッケージ品と同等の電気的特性を維持しており、実装強度はむしろ1.4倍に向上するということで、EV市場からも注目を浴びている。ラインアップされた小型パッケージのダイオードは全製品で高い信頼性を確保しており、車載アプリケーションはもちろん、産業機器や民生機器など、様々な用途で採用が見込めるため、同社の躍進に繋がるだろう。
上記のいずれの企業も、自社の得意分野を追求し、時勢の流れに臨機応変な対応をしていることで、今後の発展に繋げようとしている。折しもロシアによるウクライナの侵攻でエネルギー価格が急騰し、脱炭素の流れも、その中身に変化が見え隠れしている。先を見通すことが難しい時代だからこそ、時流を先読みし、成長戦略を実行する企業の臨機応変さを見習いたいものだ。 (編集担当:今井慎太郎)