【関連写真】岡崎体育も出演、『どうする家康』21回場面カット
そして近年でも“音楽”というジャンルを飛び越え、演技力で魅せるアーティストが増えてきている。今回は特に注目すべき3名のアーティストをピックアップし、彼らの俳優としての活動ぶりを紹介しよう。
まず一人目は、シンガーソングライターの岡崎体育だ。ユニークな音楽やアイデアの効いたミュージックビデオ、クスリとさせるパフォーマンスなどで知られている彼だが、近頃は俳優としての才能も発揮している。
なかでも最近注目を集めたのが、NHK大河ドラマ『どうする家康』の奥平家臣・鳥居強右衛門役。同作で彼は絶体絶命の長篠城を救うため、約50km先にある岡崎城へ援軍を要請しに行く、いわば戦国版“走れメロス”を演じていた。
大河デビューにして一夜限りの出演だったが、彼の名演技は当日のTwitterでトレンドを飾るほど大きな話題に。特にクライマックスのシーンで、「徳川様はすぐに参らっせるぞ! 織田様の大軍勢と一緒じゃ!」「皆の衆、まあちいとの辛抱じゃ! 持ちこたえろ! 持ちこたえるんじゃ!」と懸命に声を張り上げる姿には、多くの人が心打たれたのではないだろうか。
また岡崎体育は、阿部寛主演の日曜劇場『DCU』(TBS系)や、綾野剛と星野源がW主演を務めた金曜ドラマ『MIU404』(TBS系)などにも出演したことが。いずれも演技力は好評を得ており、バイプレーヤーとしての地位を確立しつつある。
ちなみに自身初のドラマ出演作品であるNHK連続テレビ小説『まんぷく』でも、岡崎体育のコメディ・リリーフ的な演技が光っていた。彼は作中で大阪なまりの日本語を話す日系人を演じていたのだが、その役への起用は思いもよらない理由だったとか。
元々岡崎は「英語風に聞こえる日本語の曲」などを歌っていたため、それを聴いたキャスティングの人が本当に英語を喋れるのだと勘違いしたところから役が決まったらしい。この話は以前放送された『ダウンタウンなう』(フジテレビ系)で岡崎本人の口から語られており、ドラマはスピードラーニングで乗り切ったと話していた。まさか楽曲のちょっとした遊び心が朝ドラに繋がるとは……。
演技力でいえば、SEKAI NO OWARIのボーカルであるFukaseも負けてはいない。彼は映画『キャラクター』の両角役で俳優デビューを飾り、狂気的でありながらどこか子どもっぽい不気味な殺人鬼役を熱演した。
実はオファーをもらった当初は断るつもりだったそうだが、“事前に演技の勉強をすること”を条件に出演を決意している。撮影に入るまでの一年半はレッスンやワークショップに時間を費やし、その演技力を本物にしていったそうだ。
結果、同作で見せた独特な存在感とリアリティ溢れる演技力は高く評価され、「第45回日本アカデミー賞」では演技初挑戦にして新人俳優賞に輝いている。ちなみに映画を見たFukaseの父親は迫真の演技に圧倒され恐ろしくなり、家中の戸締りを確認していたとか。
一番の身内ですら慄くような演技力。それほどまでに、Fukaseの演技は観る者を引き込み、表現の世界に誘い込んだということなのだろう。
そして最後に紹介するのは、King Gnuの井口理。
今年3月公開の映画『ひとりぼっちじゃない』ではついに初主演を飾り、人とうまくコミュニケーションがとれない歯科医・ススメを熱演。その自然体な演技が注目を浴びていたが、実は彼の起用にもちょっとした面白い逸話が隠されている。
昨年開催された東京国際映画祭「Nippon Cinema Now」にて、映画の監督・脚本を務めた伊藤ちひろ氏が語ったところによると、井口の起用は元々決め打ちだったそう。監督自身が彼の芝居に惚れ込み、「脚本書く前に、原作を読んでもらって井口君がやってくれるなら映画化しよう」と思い立ったのが制作のきっかけだった。
もはやKing Gnuのボーカルで……という紹介を入れずとも、“いち俳優”として井口は演技の世界で存在感を放っているようだ。
音楽家という枠にとらわれず、俳優としての才能を示した岡崎体育、Fukase、井口理の3人。そんな彼らにはまさに、天が“二物”を与えたという言葉がふさわしいだろう。
今後も音楽活動はもちろん、彼らの“俳優”としての活躍に期待せずにはいられない。
【あわせて読む】ドラマ『ブラッシュアップライフ』脚本大絶賛、芸人が羨望するバカリズムという才能