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ここで気になるのは、『どうする家康』において本能寺の変がどのように扱われるかという点だろう。日本史の中でも謎が多く残されている本能寺の変は、これまでのフィクションの中でも様々な解釈で描かれてきた。
例えば2020年~2021年まで放送された『麒麟がくる』(NHK)は、長谷川博己演じる明智光秀が主人公だったこともあり、暴走した信長(染谷将太)を光秀が討とうとし、最後は信長の自害によって終局するという、展開だけ見れば定説通りの物語が描かれたものの、結末に至るまでの各々の感情の流れなどに、オリジナリティを見せた。
しかし『どうする家康』の主人公は、光秀ではなく家康。『麒麟がくる』と展開は同じでも、光秀がヒロイックに描かれる可能性は低い。とりわけ『どうする家康』の光秀(酒向芳)は、家康にとって“嫌なやつ”として描かれている。
第13回で家康が妻や子どもたちへのお土産に買った「コンフェイト(金平糖)」を足利義昭(古田新太)に取られてしまう場面でも、光秀は冷ややかな笑みを浮かべていた。また自分の非を棚に上げて家康に責任を押しつけたりするなど、今作の光秀はとにかく器の小ささがにじみ出ているのだ。
こういったキャラクター性から鑑みるに、計画的に信長を討つというよりは、たまたま討つ機会が巡ってきたから本能寺の変を起こした、という展開の方がしっくりくるだろう。
あるいはムロツヨシ演じる狂人一歩手前の豊臣秀吉が、光秀をそそのかして本能寺の変を起こさせる可能性も考えられる。実は歴史ファンの間では、本能寺の変の背景として“秀吉黒幕説”がまことしやかに囁かれてきた。
残念ながらこの説を裏付ける史料は見つかっていないため、信ぴょう性こそ低いものの、『どうする家康』の世界線となれば話は別だ。同作に登場する野心の塊のような秀吉なら、己の出世のために信長を討ってもおかしくはないだろう。
しかし「築山殿・信康事件」を濃密に描いてきた今作においては、“家康黒幕”ルートという衝撃展開も考えられそうだ。
先述した通り、『どうする家康』第25回では瀬名と信康が壮絶な最期を迎えている。武田勢と手を組み、奪い合うのではなく“与え合う関係性”の大国を築こうと内々で事を進めてきた瀬名らだったが、この計画が織田信長(岡田准一)にバレてしまったのだ。
織田家の臣下である徳川家が、敵対する武田と手を組むなどもってのほか。家康は何とかして彼女らを逃がそうと画策するものの、最終的に瀬名と信康は全ての責任を背負って自ら命を絶ってしまう。
愛する妻子を同時に失った家康の悲しみはどれほどであっただろうか……。これをきっかけに、家康が信長に対して強い恨みを持ったとしても何ら不思議ではない。
かつてクーデターを起こした信康の家臣・大岡弥四郎(毎熊克哉)は、「(徳川が)信長にくっついている限り、戦いは永遠に終わらん」と口にしていた。彼の言葉が一つのきっかけとなり、瀬名は戦のない“慈愛の国”を作ろうと壮大な計画を練ったわけだが、その瀬名も今はもういない。
となれば、いよいよ本能寺の変“家康黒幕”ルートもあり得そうな気がしないだろうか。
いずれにせよ歴史的ターニングポイントである本能寺の変は、もう間近に迫っている。家康と光秀、信長の動きが気になるところだが……。本能寺の変、どうする?
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