モーニング娘。
OGの田中れいなが7月11日と12日にソロライブを、道重さゆみが7月13日にバースデーイベントを開催した。2003年に加入した6期メンバーの2人は、この2023年に加入から20周年を迎える。共に10年以上をグループで過ごし、今でもセルフイメージを大切に、芸能界で活動を続けている2人の軌跡は、アイドルのなかでも稀な存在だ。

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今年1月19日、田中と道重の2人はそれぞれSNSとブログでデビュー20周年を迎えたことを報告した。加入記念日の1月19日には、2人は毎年このブログでの報告を欠かさない。2人は共にオーディションに合格した亀井絵里、既にソロアイドルだった藤本美貴と共にモーニング娘。
に加わった。

選考時点から伸びやかで澄んだボーカルを持ち、歌唱力が抜きんでていた田中は早くからソロパートを多くもらうなど、グループのパフォーマンスの中核を担っていく。

一方、加入初期の道重はまだキャラ付けが定まっておらず、実力面でも目立つ場面は少なかった。歌はのちに自身で「歌に音程があることを知らなった」と自虐ネタにするほどで、加入後の初シングル『シャボン玉』で初めてもらったソロパートはワンフレーズのセリフ部分だった。
 
そんな6期も、黄金期メンバーの卒業によってポジションが上がっていき、00年代後半の『プラチナ期』と称される時期になると、田中は亀井や高橋愛らとともにエース級の活躍、そして歌・ダンスで磨きをかけていく。道重も2007年からラジオ『ヤングタウン土曜日』(MBS)のレギュラーになり、パーソナリティー明石家さんまの相方として、丁々発止のトーク力も鍛えられていった。


また当時、田中を含めて多くのメンバーが髪を染めていた中で卒業まで黒髪も貫いていた彼女は、バラエティでは毒舌キャラも買って出て、“可愛いぶりっ子”路線を開拓。全力のアイドルぶりに共感するファンが増えていき、12年5月のリーダー就任後は、彼女のアイドル像をカリスマ的に支持するファンや別グループのアイドルも少なくなかった。

同期の亀井や高橋愛、新垣里沙光井愛佳といったプラチナ期を共にしたメンバーを見送ると、2012年には田中と道重がグループ最年長。しかも2人の他は全員が10代という若いメンバーを引っ張ることになる。

クールとキュート、メンバーカラーはライトブルーとピンク、動物に例えると猫とウサギ――正反対のアイドル性を持つ2人が先頭に立った時期のモーニング娘。は、ファンから「カラフル期」と呼ばれる新しい時代を作った。
田中には天然キャラかつ表現力にたけた佐藤優樹、道重には当時まだ研修生だった牧野真莉愛と親しい後輩もでき、とりわけ佐藤は田中にとって、モーニング娘。メンバーでいる緊張感を和らげてくれる存在でもあった。

「モーニング娘。の環境って 自分の中では特殊な環境で、
弱みを見せたら終わる覚悟とゆーか 笑
誰にも甘えられんし、甘えたくないし
誰が味方か分からんし。みたいな感じで
本来のれーなは、その佐藤に見せたのが田中れいなっちゃけど
今まで そうやって気持ちを緩ませる?とゆーか
素になれるタイミングがなかったなぁって」

と、田中は21年12月18日のブログで、佐藤の卒業に寄せて当時のことを振り返っている。

田中は2013年5月21日に、在籍10年4か月でモーニング娘。
を離れた。卒業後、バンドの『LovendoЯ』のボーカルの活動を続けながら、舞台俳優の道も開拓していった。ボーカロイドの楽曲を舞台化したミュージカル『悪之娘』(2017)、ヒロイン格のお市を一貫して演じた『信長の野望・大志』(2018~2021)、ミュージカル『赤毛のアン』(2019~2021)などに出演を続け、とりわけ2.5次元ジャンルでの出演も多く、二次元的なビジュアルもモノにしてみせている。

ステージ上ではプロのアーティストぶりが健在ながら、SNSではペットの愛猫『シルバ』と『ジャック』を溺愛する様子を頻繁にアップしたりするなど、飾らず気さくに日頃のルーティンを発信している。TikTokも開設してトレンドにも敏感と、マインドは10代・20代の若者に負けてはいない。

何より今でもティーンが着ても似合うファッションを愛用し、ギャル風の服装も格好よく着こなす様子を披露する度に、その若々しさが話題になる“奇跡の30代”でもある。


2014年11月26日に当時のモーニング娘。最長在籍記録を残してグループを卒業した道重は、約2年の休養期間を経て芸能活動を再開すると、音楽ライブとも演劇とも違う独自の舞台公演を始めた。『SAYUMINGLANDOLL』 (サユミンランドール)というこのシリーズは、東京・有楽町のCOTTON CLUBをメイン会場に毎年テーマを変えて開催、道重とダンサーだけという少人数でのステージで演じられてきた。

公演ごとにストーリーがあり、楽曲もそれにあわせた書き下ろしで歌と踊りだけで進む。ただしステージはシンプルで、道重によるこじんまりとしたステージショーという雰囲気で続けてきて、通算公演も200回を超えるまでに。パフォーマンススキルよりも道重自身の少女性を活かした舞台づくりで、客席との距離が近いCOTTON CLUBで、長年彼女を応援し続けてきたファンと道重の「同窓会」のように続いている。


他にもファッション誌でのモデル活動も続けていて、同世代の女性に向けてフェミニンなコーデを発信。年を重ねても可愛くありたいという乙女心を体現してきたのがモーニング娘。卒業後の道重でもあるようだ。

個別に活動を続けながら、21年には『ポップコーン グラノラ』(日本ケロッグ)のCMで高橋愛と田中・道重の3人で共演して『LOVEマシーン』の替え歌を披露。こうして時にはモーニング娘。のOGとして一緒になってくれるのもファンにはありがたく、「エモい」ことだろう。

アイドルを卒業しても歌や演技でパフォーマンスを続け、オフも含めて期待されるイメージを完璧に演じてみせる。1989年生まれで同い年の田中と道重の歩みを比較してみると、ルックスや性格は正反対でもこの生き方は共通していて、しかもデビューから20年にわたってノースキャンダルを貫いてきた。

モーニング娘。を卒業するタイミングで、田中は『Rockの定義』、道重は『シャバダバ ドゥ~』というソロ曲をそれぞれもらっている。いずれもオーディションから2人を見てきたつんく♂が作詞・作曲しただけに両人のアイドル性を的確に音楽にしてくれたが、2人とも2023年の今でも曲のイメージ通りでいてくれることも奇跡的だ。これからも世間に流されずに、ロックでキュートな生き方を貫いていってほしい。それがファンの願いではないだろうか。

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