『バック・トゥ・ザ・フューチャー』や『バタフライ・エフェクト』など、海外にはタイムトラベルやタイムリープなどを扱った名作映画がいくつも存在する。しかし実は日本の映画界も負けてはいない。
現在に至るまで、秀逸な時間SFが数多く生み出されてきた。

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劇団「ヨーロッパ企画」の代表・上田誠氏は、これまでアニメ『四畳半神話大系』(フジテレビ系)など様々なループもの作品を手がけてきた時間SFのスペシャリスト。上田氏は、最新映画『リバー、流れないでよ』でも時間SFへのこだわりを爆発させている。

同作は京都府の貴船にある旅館を舞台に、延々と繰り返される2分間に囚われた人々を描くタイムループコメディ。その見どころはなんと言っても、どの2分間もしっかり2分間の1カットで撮影されていることにあるだろう。

2分間を重ねるごとに違う顔を見せていくキャラクターとテンポよく進むストーリーは口コミでたちまち話題となり、上映館数も全国18館から着々と拡大中。
公開から約1カ月が経った7月24日時点で観客動員数は4万人を突破し、ファンタジア国際映画祭(カナダ)のアジア部門では観客賞第2位に輝いている。

2020年公開の映画『ドロステのはてで僕ら』では“画面に映るもの全てが伏線になる構造”を導入し、数々の著名人が同作を大絶賛。お笑いタレントの山里亮太もその一人で、自身の公式X(旧Twitter)にて「上田誠さんすげぇってひたすらなりました!」「全ての伏線回収もので最多伏線最短回収だったきがします」と感激していた。

上田氏が手掛けた作品の中で、夏真っ盛りの今に観たいリープ映画といえば、2005年に公開された『サマータイムマシン・ブルース』だ。「ヨーロッパ企画」の代表作を映画化した青春SFコメディで、俳優の永山瑛太や上野樹里などが出演している。

物語は、とある大学の学生たちがひょんなことから手に入れたタイムマシンで昨日と今日を行き来するという内容。
時間SF作品にありがちな悲劇や別れなどの要素はなく、とにかく終始明るく緩い雰囲気でストーリーが展開されていく。タイムマシンを使う理由も、クーラーのリモコンが壊れてしまったために、「昨日」に戻って壊れる前のリモコンを取りに行きたいからというなんとも平和的なものだ。とはいえ、作品の緩い雰囲気とは裏腹に、終盤での伏線回収は見事のひと言に尽きる。

ちなみに今年10月から始まるテレビドラマ『時をかけるな、恋人たち』(フジテレビ系)も、上田氏が手がけた作品。主人公と未来からやってきたタイムパトロール隊員が紡ぐSFラブコメになっているそうだが、はたしてどのようなSF展開が繰り広げられるのだろうか。

また時間SFの邦画といえば、『時をかける少女』も外せない。
小説家・筒井康隆氏の同名小説が原作で、これまでに実写映画、アニメ映画、舞台などが何度も制作されている人気作だ。

最近は細田守監督によるアニメ映画のイメージが強いだろうが、1983年に公開された女優・原田知世主演の実写映画は、アニメ版とはまた違った面白さを醸し出している。

そもそも実写版とアニメ版は同じタイトル、同じ題材でありながらも、主人公や物語の設定は大きく異なる。実写版の主人公は、高校1年生の芳山和子。ある日、学校の理科実験室でラベンダーのような香りを嗅いだことがきっかけでタイムリープの力を手にする。

そんな和子の姪・紺野真琴を主人公に据え、原作から約20年後の世界を舞台にしたのがアニメ版だ。
主人公の性格も活発で行動的な真琴に対し、和子はおしとやかで優等生なイメージ。まるで正反対の主人公像だが、アニメ映画版の脚本を初めて読んだ筒井氏は「今(『時をかける少女』を)作るのであれば、こういう作り方であろう、と思いました」「新しい時代のヒロインは、原作よりも行動的でなければいけない」と感じたという。

しっとりした切なさの残る1983年版と、爽やかな青春アニメに仕上げた細田守版。どちらもそれぞれ違う魅力があるので、演出や設定などを見比べてみると面白いかもしれない。

また、ある意味『時をかける少女』と同じ“青春SF”と呼べる作品が、昨年10月に公開された『MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』。

広告代理店で働く社員たちが1週間を繰り返していることに気付き、ループ脱出の鍵である上司にループを気付かせようと奔走するというお仕事コメディだ。
上司に気付いてもらうという目標のために、社員が一丸となって協力する展開は、さながら社会人の青春ドラマといったところだろう。

ちなみに同映画は、スタッフたちの実話が基になっている。制作スタッフたちが上司のツイートに既視感を覚えたことが始まりだそうで、そこから「もしかして上司はタイムループしているが、本人は繰り返していることに気づいていないのではないか。自分たちだけがこの現象に気づいてしまったのでは……」と雑談を重ね、ストーリーの原案が生まれたのだという。

ほかにも『神回』という青春タイムループ映画が7月に公開されるなど、近年はタイムループものが流行の兆しを見せている。次はどのような時間SFものが登場するのか、今から楽しみでならない。


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