レビュー

あなたにとって「いい会社」とは、どんな会社だろうか。あるいは起業するなら、どんな会社にしたいだろうか。

多くの場合、判断基準になるのは「お金」だろう。高い収益を上げる会社、株価が上がる会社、社員や幹部の報酬が高い会社、といった具合だ。ならば、会社がいちばん大切にしなければならないのはお金、あるいはお金をもたらす顧客のはずだ。しかし、こう言い切ってしまうことに、何か違和感を覚えないだろうか。
本書はこれまで8,000社以上に訪問調査やアドバイスをしてきた、ベストセラーシリーズ『日本でいちばん大切にしたい会社』の著者でもある坂本光司氏が、優良企業の経営者から得た気付きを100の「金言」としてまとめたものだ。これらの金言が示す方向性は一見、合理性や効率と正反対だ。本書によれば、会社がいちばん大切にすべきなのは社員とその家族であり、顧客はその次であるという。また会社とは「人を幸せにするための、人が幸せになるための場所」と定義されている。最先端の経営理論に慣れた方が本書を読めば、松下幸之助や本田宗一郎といった昭和の名経営者たちを思い浮かべるかもしれない。
しかし、本書を時代遅れのノスタルジックな書と位置づけてしまうのは早計だ。会社の存在価値とは何か、会社を存続させるにはどうすればいいのか。その答えは数値や理論ではカバーできない「あり方」にあると言ってもいい。
本書の価値は、新型コロナウイルスの感染拡大であらゆる会社が存亡の機にある今こそ、ますます高まっているのではないだろうか。

本書の要点

・どんな組織体であれ、最も重要かつ大切なものは活動目的だ。目的とは、何のために、誰のためにといった、その活動の原点であり使命である。
・決断は経営者の使命であり責任である。決断に際しては、損得や勝ち負けではなく、どうするのが正しいことなのか、自然なことなのかを基準とすべきだ。
・企業の最大の商品は社員である。なぜなら、価値ある商品やサービスを創造・提案してくれるのは社員だからだ。



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