レビュー

あなたは、自分が働いている企業の「志」を語れるだろうか? その企業ならではの価値、社会に貢献するという想いを説明できるだろうか?
自らの利益のみを追及し、地球環境や取引先、あるいは従業員を痛めつけることを省みない企業がもはや時代遅れであることは、誰の目にも明らかだ。自己増殖するカネの運動によって全てが回るという素朴な資本主義は、もはや終わりを迎えようとしている。


では、その先は何か。企業活動に必要な三大要素は「ヒト・モノ・カネ」であるが、いま先進国では「モノ余り」と「カネ余り」の状態が続いている。21世紀の価値創造の基軸は「ヒト」以外にない。しかもその根幹は単なる欲望にもとづくものではなく、他者にとって価値のあることをしたいという信念、すなわち「志(パーパス)」である。これが本書の主旨だ。
「志」という漢字は「士(さむらい)の心」と書く。
武士たちが行動規範とした「仁」や「義」といった考え方。日本に資本主義を根付かせた渋沢栄一は、道徳と利益の両立する企業社会を実現するため、このような孔子の教えをベースに「論語と算盤」を書いている。私たちは改めて渋沢に学ぶべきなのだ。
しかし、道徳と利益の両立は簡単ではない。個別の技術や事業ではない、真のイノベーションが必要だからだ。それは志にもとづいて企業のあり方を再構築することによってのみ実現できる、と本書は主張する。

未来に向けた決断に正解などない。著者の言うように、志を実現しようとする決意こそ、未来を切り開くのだ。

本書の要点

・資本が無限に増殖することをめざす資本主義の破綻は誰の目にも明らかだ。21世紀は「志」を基盤とした「志本主義」をめざすべきではないか。
・いま経営者や投資家は、企業の社会的価値の規範をESG、SDGs、CSVという3つの3文字言葉に求めている。しかしこれらは資本主義の論理の中で答えを出そうともがいているにすぎず、これだけでは志本主義に到達できない。


・志本経営を実現するコンセプトとして、現在のSDGsに変わる「新SDGs」を提唱する。新SDGsとはサステナビリティ、デジタル、グローバルズの3つだ。



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