レビュー

「考えるな、感じろ」。世界中で大ヒットしたカンフー映画で語られたこのセリフが、禅の思想に裏付けられた言葉であることをご存じの方も多いだろう。

ところで、私たちは「考える」ことと「感じる」ことの両方を意味する熟語を日常的に使っていることをご存じだろうか。それは「意識」という言葉だ。この言葉は感じることを表す「意」と、考えて分別することを表す「識」からなる。
たとえば、苦手そうな人と出会ったとしよう。その際、「ちょっと合わないかもしれない」という「意」の部分だけにとどめ、「この人と一緒にいても得るものはない」などと「識」の部分までは踏み込まないようにする。そうすれば人間関係の悩みはぐっと減るだろう。
これは本書で語られている「考えるな、感じろ」の具体例のひとつだ。
禅の思想は捉えにくく、言葉にしにくいものといわれる。なぜなら、修行や座禅のように、体を動かしたり、ひたすら座り続けたりすることによる身体的な実感こそが、禅の理解に不可欠と考えられているからだ。
本書の著者は禅僧と庭園デザイナーの顔をもち、大学で教鞭をとる人物だ。禅の考え方とそれを日常に活かすための身近な方法を、やさしい語り口で紹介してくれる。世界40か国で翻訳され読み継がれてきた本書は、あえていうと、私たちがよりよく生きるためのライフハック集である。
禅の思想にふれ、少しだけ見方や習慣を変えることで、心穏やかに過ごすヒントを得ていただきたい。

本書の要点

・体を動かしながら深い思考をするのは難しい。禅の修行で最も重要な坐禅では、呼吸を整え、姿勢を整え、心を整えることが欠かせない。
・禅寺の修行僧が掃除をするのは、その場をきれいにするためだけでなく、自分の心を磨くためでもある。身の回りを整えることで、雑念なく仕事に打ち込める。
・命を無駄にしてはいけない。

本来の自分を正直な心で見つめ、やりたいことを必死でやらなければならない。



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