「1人2万円」の根拠がブレ始めている。7月3日の参院選の公示が迫り、石破首相は本格的な地方遊説を開始。
「1年間の食費は外食とお酒を除くと27万円だ。27万円に物価上昇率の7%を掛けると、だいたい2万円」
おや? これまで石破首相は2万円の算出根拠に関し「家計調査を基にして、食費にかかる消費税負担額を念頭に置いた」と語っていたはず。この説明も怪しかったが、「後出し」の根拠をうのみにして1年365日で割れば1日3食で約740円。1食250円にも満たない。はたして妥当なのか検証する。
■少なくとも1人3万3000円が妥当
総務省の家計調査によると、総世帯が昨年1年間に「食料」に支出した平均額は89万239円(税込み=以下同)。石破の言う通り「酒類」(3万7114円)と学校給食(4736円)を除く「一般外食」(16万8082円)を引くと68万5043円となる。
家計調査は世帯単位の結果のため、全ての世帯の平均人数2.17人で割って、1人あたりの額を算出すると31万5688円──石破の根拠とは、年間4万5000円以上の開きがある。
調査結果の「食料」から、さらに「菓子」(8万4418円)を除けば1人あたり27万6785円。ようやく27万円に近づくのだが、実にいい加減な説明ではないか。
また、総務省の消費者物価指数をみると、昨年1年間の「生鮮食品」の上昇率は前年比7%増。
共同通信による参院選立候補予定者アンケートで、消費税の税率引き下げの賛否を聞いたところ、自民の27.4%が「どちらかといえば」も含め「賛成」と回答。日経新聞の同様の調査だと「軽減税率を引き下げるべき」「消費税率の引き下げ・廃止すべき」が合わせて計43%に上った。
党内の減税賛成派の意見を無視し、ケチな給付金をバラマキ。しかも「金額ありき。理由はあとづけ」(官邸事情通)で、算出根拠までブレまくれば選挙を勝ち抜く“武器”になりっこない。
■2万円給付「評価しない」66%
その石破首相が参院選公約として掲げている全国民を対象に一律2万円を給付することに対して、人々が極めて冷ややかに見ていることが、各紙の最新世論調査でも改めて浮き彫りになった。
毎日新聞の世論調査(6月28、29日実施)によると、2万円給付を「評価する」はわずか17%で、「評価しない」は66%に上った。物価対策として「消費減税案」が良いとする人が55%で、「給付金案」の16%を大きく上回った。
読売新聞の調査(同27~29日実施)では、2万円給付を「評価する」は28%、「評価しない」は66%だった。
日経新聞の調査(同27~29日実施)では、物価対策の現金給付に「効果があるとは思わない」と回答した人が82%に上り、「効果があると思う」は16%にとどまった。
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