石破首相の後継を選ぶ自民党総裁選は5人の争いが確実で、今週は出馬会見ラッシュとなりそうだ。現時点で高市早苗前経済安保相(64)と小泉進次郎農相(44)の一騎打ちの構図は揺るがず、女性初の総理を目指す高市氏は打倒進次郎氏に向け、マイナス面の払拭に躍起だ。
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本命2人の勝敗を握るのは、まず国会議員票の動きだ。前回1回目の投票は進次郎氏の75票が最多で、高市氏が72票と続いた。票の動きを左右するのは、いまだ党内に影響力を持つ重鎮の意向である。石破首相を除く首相経験者3人のうち、すでに菅副総裁は進次郎氏の後ろ盾を気取り、岸田前首相は財政政策などの相違から高市氏を推すとは考えにくい。前回は自派に所属した議員に、決選投票では「高市以外に」と密かに呼びかけたほど。それでも高市は11日に議員会館の事務所に岸田前首相を訪ね、立候補を伝達した。誠意を見せることで政策面の垣根を越え、支持を得たいのだろうか。
残るは党最高顧問の麻生氏の判断である。前回は、首相時代に「麻生おろし」を仕掛けられた石破首相への遺恨もあり、高市氏を支持。決選投票で敗れ、非主流派に転げ落ちた。
「前回は石破憎しの感情が勝り、判断を誤ったと後悔しきり。その苦い経験から、今回は失敗できないと“勝ち馬”を見極めるまで様子見ムードです。
前回の党員票は「下駄をはかせた数字」
議員票と同数の295票が割り振られる党員・党友票も大事となる。前回は、高市氏がトップの109票を獲得。進次郎氏は61票で3位にとどまった。「地方は高市優勢」と語られているが、「下駄をはかせた数字」と自民党関係者はこう言う。
「大ひんしゅくを買った政策リーフレットの影響です。高市陣営は『金のかからない総裁選』との党方針に反し、全国の党員30万人にリーフレットを郵送。禁止通達の前に送ったと言い張ったが、他陣営の支持者に『今回、うちの先生は高市さんを応援するの?』と誤解を与えた。忘れられがちですが、アレがなければ彼女の党員票は2~3割ほど減っていたはずです」
前回、高市氏の推薦人20人のうち旧安倍派の裏金議員が13人も名を連ねた。衆院選と参院選を経て、すでに9人が政界を去ったが、裏金議員に推される印象がつきまとうのも、高市氏にはマイナスだ。
「高市さんは11日夜に議員宿舎で約20人の議員と会合を開き、推薦人確保のメドが立った。その後、取材に応じたのは、衆院当選5回で無派閥の黄川田仁志議員。裏金イメージ払拭のため、今回の推薦人名簿は恐らく旧安倍派の色を薄める方向になるのでしょう」(別の自民党関係者)
高市本人もイメチェンを図っているという。
はたして付け焼き刃の裏金隠しと変身メークは奏功するのか。
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早くも市場は「サナエノミクス」に浮かれているが庶民への恩恵は期待できなさそうだ。●関連記事【もっと読む】『市場は早くも「高市トレード」だが庶民に恩恵なし…サナエノミクスが招く株高・物価高の暗澹』で詳報している。