歌舞伎俳優・坂東彌十郎(69)が今期、3本の連ドラに登場している。


 なぜ、これほど彌十郎人気が高いのか。

それは「デレデレ」「ニコニコ」「オロオロ」「ヒリヒリ」すべてを表現できる貴重なおやじ俳優だからだ。


 注目を集めるきっかけになった三谷幸喜作の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」では、主人公・北条義時(小栗旬)の父・時政役だった。時政は荒っぽい東国武士の気質を持ちながら、若い妻(宮沢りえ)には、眉毛を下げてデレデレ。妻にそそのかされるような形で、息子たちと対立し、追放になってしまった。同じ三谷作品の「もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう」(フジテレビ系)では、娘(浜辺美波)に隠れてストリップ劇場に通う神主に。客席で眉毛を下げてうれしそうだった。


 今期の朝ドラ「風、薫る」では、舶来品店の主人・清水卯三郎。山高帽に蝶ネクタイの洒落たスタイルでいつもニコニコしている卯三郎は、幼い娘と婚家を逃げ出したヒロインりん(見上愛)を雇い、彼女がナースになると仕事を辞める際には、英和辞書を贈る。口癖は「リターンさえあれば」である。


「夫婦別姓刑事」(フジテレビ系)では、夫婦であることを隠してバディーとして捜査する四方田(佐藤二朗)、鈴木(橋本愛)の事情を唯一知る署長・井伏として、彼らの秘密がバレないかとオロオロ。「銀河の一票」(フジテレビ系)では、政治素人のスナックのママ(野呂佳代)を都知事候補にし、参謀として戦う星野茉莉(黒木華)の父鷹臣。与党幹事長である鷹臣は、不正を見逃せなかった娘を冷たく追い出すヒリヒリぶりを見せた。


 並べると、多彩なおやじ像を見せていることが、よくわかる。日本のドラマ界は、こうしたおやじ俳優を待望していたのである。


■「VIVANT」続編にも出演


 私は時代劇撮影所でしばしば存在感のある大殿、黒幕、大親分がいないという嘆きを聞いてきた。1973年の初舞台以来、183センチの長身を生かし、堂々とした武将などを演じてきた彌十郎は、まさにぴったり。個人的には2023年に上演された歌舞伎「水戸黄門」の水戸光圀役も軽妙で面白かった。


 ちなみに銀幕の時代劇スターだった彌十郎の父・坂東好太郎も59年の映画「水戸黄門とあばれ姫」で黄門様を演じている。


 インタビューした際は、「映像作品の経験はまだまだなので」と控えめだったが、若手から慕われ、当人もスタッフ、キャストとの出会い、最新の映像技術にも好奇心を持って仕事をしていることがよくわかった。


 来期はTBS日曜劇場「VIVANT」続編にも出演する。硬軟自在のおやじとして、ますますドラマに欠かせない顔になるはずだ。


(ペリー荻野/時代劇研究家)


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