【桧山珠美 あれもこれも言わせて】


 今期のドラマで大活躍なのが歌舞伎俳優坂東彌十郎(69)だ。朝ドラ「風、薫る」、「夫婦別姓刑事」「銀河の一票」と3作に出演し、ひときわ存在感を放つ。


「風、薫る」では日本橋で舶来品などを手広く扱う「瑞穂屋」を営む清水卯三郎を演じている。婚家を出て東京に逃れてきたヒロイン・りん(見上愛)に仕事と住まいを与える。彌十郎自身も海外通で俳号を酔寿とするほどのスイス好き。異国の気配をまとった役どころがよく似合う。


 初めて会ったりんを励ますため手品師のようにチョコレートを差し出す場面はチャップリン映画のワンシーンを彷彿とさせ思わず引き込まれた。


 ただの紳士というわけでもなさそうで、ことあるごとに「リターンさえあれば」と口にし、勝海舟(片岡鶴太郎)とも交流があり謎めいた怪しさは彌十郎にぴったり。


 佐藤二朗橋本愛ダブル主演の「夫婦別姓刑事」では2人が結婚していることを知る唯一の人、署長役。令和版「おくさまは18歳」、はたまた「秘密のデカちゃん」のような、例えるなら森川信や名古屋章の立ち位置でコミカルに演じている。


 打って変わって黒木華主演「銀河の一票」では実の娘(黒木華)も容赦ない与党幹事長役でその冷徹さにおののく。


 彌十郎がテレビで活躍するようになったのは2022年の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」で北条時政を演じてから。彌十郎をテレビ界に引っ張り込んだ三谷幸喜の目利きにも感心するが、わずか4年でなくてはならない俳優になった力量と奥行きは計り知れない。



山口馬木也は劇画タッチの顔立ちも含め唯一無二

 もう一人、今期ドラマで大活躍なのが「銀河の一票」で彌十郎演じる星野幹事長の懐刀、政策秘書を演じている山口馬木也(53)。


 今は清濁併せのむ忠実な側近に見えるが、その胸中にたぎるものを抱えているようにも見えて目が離せない。


 また、波瑠麻生久美子ダブル主演「月夜行路-答えは名作の中に-」にゲスト出演し、職人気質のジュエリーデザイナー兼彫金師・辰雄を確かな演技で魅せ、物語に奥行きを与えた。


「豊臣兄弟!」では柴田勝家役。24年に大ヒットした映画「侍タイムスリッパー」の主演以来、勢いはとどまるところを知らない。あの劇画タッチの顔立ちも含めて唯一無二の個性が光る。


「豊臣兄弟!」といえば秀長の姉ともを演じる宮澤エマ(37)は春ドラマ「産まない女はダメですか? DINKsのトツキトオカ」で主演。毒親に育てられ、自分もそうなるのではと子供を産まない選択をした女性を繊細に演じている。


 同時期にドラマを掛け持ちする俳優について、かつては片手間ではないかと疑問に思っていたが、芸達者で制作者が放っておかない。仕事が集中するのは「使いたくなる俳優」ということだろう。


(桧山珠美/コラムニスト)


編集部おすすめ