SEも照明演出も、紙吹雪みたいな特効も一切なし。客電はずっとついたまま。背景にはLEDビジョンがあるが、そこに映し出される映像は手ぶれまくりのワンカメ撮影で、スイッチングもなし。演出やショーアップ的な要素は本当に何一つない。5月6日に開催された『a flood of circle 20周年記念公演 LIVE AT 日本武道館』。記念すべき初の日本武道館単独公演だ。
バンドはここ数年ここを目指して歩んできた。客席をぎっしり埋めたオーディエンスもみな、それをわかっている。だけど特別なことは何一つなかった。生身の4人の身体がただただ全力でロックンロールを鳴らす。それをドキュメントとして見せる。それだけで惹き込まれるものがあった。
登場もインパクト大だった。開演15分前、ギターケースを背負った佐々木亮介が客席からふらりと歩いて現れる。ステージに上がり、サウンドチェックをして、リハーサルとして「全治」「本気で生きているのなら」を弾き語る。「本気で生きているのなら」の演奏の途中に開演時刻の16時になると、HISAYO(Ba)、渡邊一丘(Dr)、アオキテツ(Gt)の3人が合流しバンドイン。佐々木が「おはようございます。a flood of circleです」と言い、1曲目「伝説の夜を君と」の演奏がスタート。日常とステージが地続きでつながっている。はっきり言って型破りだ。
披露したのは本編26曲、アンコール4曲の計30曲。ライブでの鉄板曲、最新アルバム『夜空に架かる虹』収録曲、レア曲、新曲も披露。キャリアを総括するようなセットだ。
なかでも、この場所で演奏するからこその意味が立ち上がる楽曲は、やはり特別な瞬間を生んでいた。
「ゴールド・ディガーズ」では歌詞の「武道館 取んだ3年後 赤でも恥でもやんぞ」のところを満面の笑みで「来たぜ武道館! 俺らがゴールド・ディガーズ!」と叫び、オーディエンスのシンガロングが応える。「夜空に架かる虹」では「俺たちはここで ここで歌ってる」と、足元を指さして歌う。「5月6日武道館 目を開けて夢を見ている」というフレーズで曲を終えると拍手が巻き起こる。
転がり続ける人生をそのまま曲に書き、不屈と奮闘をそのまま燃料にして音に鳴らしてきたのがa flood of circleというバンドだ。だからこそ歌ってきた言葉がドキュメンタリーとなり現実と固く結びつく。バンドとオーディエンスがそれを共有する。そういうロックンロールのリアリズムが彼らの音楽に宿っているのを感じる。
「元気な人は元気でいてください。谷底にいるやつにはロックンロールをあげる」と、アンコール1曲目には新曲「ロックンロール」を披露。高揚感よりも重い切迫感を感じさせるナンバーだ。最後には「明日下北沢SHELTERでワンマンライブします。
メンバー3人がステージを降りると、「じゃあおしまいですので気をつけて」と佐々木は抱えていたギターをギターケースにしまい、それを背負って缶チューハイを飲みながら客席の間を通って退場した。
最後まで型破りのライブ。でもそれは武道館公演という夢を叶えたバンドが、大団円ではなく、日常に続く道を示す終わり方を見せたということだ。
20周年を経て、今、彼らは間違いなく絶頂期にある。そう確信した一夜だった。
text by 柴那典


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