【芸能界クロスロード】


 旧ジャニーズ事務所には忖度していたテレビ局も、弱い者には上から目線で振る舞う。昔と変わらぬ体質が透けて見えたのがタレントで歌手のあの(年齢非公開)の騒動だった。


 5月18日放送の冠番組「あのちゃんねる」(テレビ朝日系)で「嫌いな芸能人は」と振られたあのは「鈴木紗理奈」と実名で発言。後日、鈴木は自身のインスタで「だいぶ後輩なうえ、そんなに絡みもない。そんな当たり屋みたいな事されて、それを勝手に放送されて、そういうのって面白いの?」と不快感をあらわにした。事の重大さに気づいたテレ朝は「不快な思いをさせてしまった」と鈴木に謝罪も、時すでに遅し。


 あのは自身のXで「名前を出すのを“やめてください”と意見したが、聞き入れてもらえなかった」と舞台裏を明かし降板を発表。事実上の番組消滅になる。


 確かに、実名を出したほうがインパクトはあるが、本来、ピー音を入れるのが通例。名前を出すなら女優の“綾瀬はるか”でも実名放送しただろうか? という疑問もわく。深夜のバラエティー番組。タレントの紗理奈なら「大丈夫」と高をくくっていたのか――。


 テレ朝には田村淳司会の「ロンドンハーツ」で「格付けしあう女たち」というコーナーがある。女性タレントがスタジオでバトルを展開する企画だが、予定調和とはいえ迫力ある口論は人気を博している。

「過去の人気番組にヒントを得るはテレビマンの性」といわれる業界。


 視聴率のため実名にしたのだろうが、一方が出演していないのは配慮に欠ける。番組側のタレントに対する驕りとしか思えない。


「嫌い」という言葉に視聴者は敏感に反応する。思い出すのが芸能界の「犬猿の仲」。主婦層に関心が高く、井戸端会議のかっこうのネタになることもあり、女性誌のお家芸だった。


 本人が「〇〇は嫌い」と記者に言うわけもなく周囲を取材。不確かなまま記事にすることもあった。ある女優にこう言われた。


「仲がいいも悪いも一度しか共演していないのに、“犬猿”と言われてもね。気にする人もいるでしょう。ただ、共演して合わない人は男女問わずいるものです。

この世界は」


 テレビのピー音のように週刊誌はイニシャルで記事にしていた。当然、話の中心はスキャンダル。


「歌手のABと女優のCDが熱愛」といった具合に記事になるが、読む人のヒントになるように「関西出身でスタイル抜群のセクシー系女優」といった話を付け加える。口コミで広がり、やがて実名で話が独り歩きすることもあった。


 イニシャルは姓・名の順で表記されたが、「イニシャルでもわかってしまう」と抗議してきた俳優もいた。


 近年では「好きなタレント・嫌いなタレントランキング」なる企画がよく特集されていた。あののように女性が嫌う女性芸能人のほうが関心は高かったが、思わぬ弊害もあった。


「一部の週刊誌のアンケートでも嫌いのトップ3に入っていれば、広告代理店も参考にする。好感度が生命線のタレントにとっては広告が入らなくなる可能性もあった」(芸能関係者)


 嫌いな芸能人でターゲットになるのは大半がタレント。女優や歌手は少ない。


 仕事を取るためには番組の要望に応えネタの提供も必要だが、自分自身もネタにされるのがバラエティーの世界。言われる人だけでなく、言うほうもダメージを負う。

番組は鈴木だけでなくあのに対するフォローも必要になってくる。


(二田一比古/ジャーナリスト)


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