フィリピンの電力インフラの脆弱性が、この5月の記録的な酷暑によって一気に露呈している。ダバオ市を中心とするミンダナオ地方では比較的安定した供給が維持され、大規模停電は発生していない。
しかし、中部ビサヤ地方の電力事情は綱渡りの深刻な危機に直面している。国家送電網コーポレーション(NGCP)や主要各紙の最新報道によれば、ビサヤ地方の送電網では予備電力が極度に低下し、需給逼迫警報が連日発令されている。すでに3週連続で慢性的な電力危機が続いており、特に地域全体の電力需要の約半分を占める経済・観光の中心地メトロセブやマクタン島への影響は深刻だ。配電大手は送電網全体の崩壊を防ぐため、数時間単位の計画停電を地域ごとに実施しており、夕方から夜間のピーク時を中心にいつ停電が起きても不思議ではない状況が続いている。

その他の写真:セブ イメージ

 報道を精査すると、燃料調達リスクに加え構造的な要因が浮き彫りになる。GMAニュースは、5月だけでビサヤ地方の発電プラント13~14箇所が突発的に停止し、さらに14~15箇所が出力制限下で稼働しているため、必要量の約4割にあたる1000メガワット近くが失われていると伝えた。特にセブ島の基幹石炭火力発電所テルマビサヤ(TVI)1号機と2号機が機械トラブルで同時停止したことが致命的打撃となっている。The Philippine Star紙は、連日の猛暑で冷房需要が過去最高に達し、予備電力がわずか50メガワット前後しか残されない日もあると報じた。Inquirer紙は、セブが自給できず、供給余力のあるミンダナオ地方から海底ケーブルMVIPを通じて毎日約450メガワットを送電しているため、かろうじて大規模ブラックアウトを免れている実態を伝えている。

 エネルギー省(DOE)の発表を総合すると、故障した主要発電所の復旧は7月から8月下旬にずれ込む見込みであり、本格的な雨期が到来して需要が落ち着くまで、少なくとも数ヶ月間は突発的な輪番停電のリスクが続くとの見通しである。

 この状況は日本人旅行者や留学生にとって安全上の問題となる。マクタン島の高級リゾートホテルは大型自家発電設備を備え、停電時でも客室のエアコンや通信環境を維持できる。
しかし非常電源のない小規模ホテルや格安宿泊施設、民泊では死活問題となる。停電が発生すれば室温は瞬く間に30度を超え、熱中症リスクが急上昇する。さらに電動ポンプ停止による断水でシャワーやトイレが使えなくなり、通信基地局のダウンでスマートフォンによる外部連絡や情報収集も不可能になる。今後セブ島やマクタン島への渡航を予定する場合は、宿泊施設に自家発電設備があるか、またその発電機が客室のエアコンやコンセントまで供給可能な規模かを事前に確認することが重要だ。
【編集:Eula】
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