【大学駅伝の注目校】「エース躍進」「強力新入生」「練習改革」...の画像はこちら >>

 手応えは、確かにあった。関東インカレ(5月21~24日)で創価大は主力が結果を残し、新体制の成果を示した。

エース小池莉希(4年)の躍進に加え、トラック組とロード組に分けた新たな強化方針も機能し始めている。だが、箱根で勝つためには、なお埋めるべき差がある。創価大の現在地と、その先の可能性を追う。

【「やっと"大人の小池"を見せられた」】

「全体としてよく戦えていたと思いますし、チームの成長を感じました」

 関東インカレ終了後、創価大の榎木和貴監督はそう語った。満足そうな表情からはチームへの手応えがうかがえる。

 2部10000mでは、小池莉希(4年)が27分52秒43で創価大初の27分台をたたき出して日本人トップの4位、スティーブン・ムチーニ(4年)は5位、山口翔輝(3年)は12位。2部1500mでは、いずれもルーキーの田村幸太が4位、内田涼太が6位。さらに2部5000mではムチーニが3位、小池が5位、ルーキーの村上遵世(1年)も13分46秒35の自己ベストで11位と健闘。2部3000m障害ではソロモン・ムトゥク(3年)が優勝した。

 榎木監督は、出色のできを見せたエースの小池について、こう語る。

「小池はまさかあんなに行く(27分台)とは思っていなかったです(笑)。いつも前半から前に行くんですけど、今回は"目立ちたいレース"ではなく、"(上位入賞して)得点を稼ぐレース"を川嶋(伸次)総監督から指示されていました。その通りに、冷静なレース運びで余裕を持ちながら後半に勝負して27分台を出しました。

5000mも冷静に考えて走り、後半に上げて13分31秒の5位。2本をまとめたのは非常に高く評価できます」

 これまでの小池は、レース前半に飛ばしすぎて後半に失速するパターンが多かった。積極果敢な強気の走りが持ち味とはいえ、安定感を欠いていた。ところが、今回は首脳陣の指示を守り、"ニュー小池"のアピールに成功。レース後の本人は"舌好調"だった。

「今日の(10000mの)メンバーと今の自分の実力を冷静に考えた時、日本人トップが妥当だと判断しました。いつもは5000m地点で力を使い果たしてしまうことが多かったのですが、今回は冷静に余裕を持って走れて、やっと"大人の小池"を見せられました(笑)」

 4月の日本インカレの10000mでは7位に終わり、1位の山口竣平(早稲田大・3年)にメディアが集まる様子を見て、「勝たないと取材してもらえないですよね」と悔しさを噛みしめていた。今回、10000mに続き、5000mでも大勢のメディアに囲まれ、終始うれしそうにしていた姿が印象的だった。

 一方、10000mで12位に終わった山口について、榎木監督は「想定通り」だと言う。

「山口は(4月開催の)関東インカレハーフ(マラソン)から4連戦でしたし、今回は28分30秒ぐらいを想定していました。ほぼその通りのタイム(28分35秒47)で、トラックでもしっかり走れていましたし、安定感が出てきました。夏の北海道マラソンで(来年10月の)MGC(マラソングランドチャンピオンシップ)出場権を得るのが上半期の目標で、ハーフをこなしながら体を強くすることができていると思います」

 山口は関東インカレハーフを1時間02分55秒で優勝。

その後、ぎふ清流ハーフ(4月26日)で1時間00分46秒の自己ベストで6位、さらに仙台国際ハーフ(5月10日)で3位とロードで強さを発揮している。今回の10000mは12位ながら、山口自身はあくまでマラソンを走るための通過点ととらえていた。

「目標は優勝でしたが、ペースが上がった時についていくことができず、力不足を感じた部分もありました。でも、連戦の疲労もなく、序盤から積極的なレースができました。タイムもセカンドベスト。自分にとっては内容のいいレースでした。夏のマラソンにもつながるレースだったと思います」

 マラソンのための脚作り、体作りが順調にできているのだろう。表情も明るく、好調ぶりがうかがえた。

【箱根の目標は、学内区間記録を合計したタイムの更新】

 主力が結果を出し、今季のチームは順調に来ているように見える。ただ、榎木監督は、「主力はよいですが......」と前置きして、こう語る。

「主力に続く中間層、特に2、3年ですね。ここがしっかり上がってこないといけないですし、ハーフで山口クラスの走りができる選手が3人くらい出てきてくれないと、箱根では戦えないと思っています」

 榎木監督の言葉通り、主力以外に目を向けると少々不安が残る。

「2、3年生はこのままではいけないという危機感を持っているでしょう。(箱根で走る距離に近い)ハーフはまだ1年生が経験していない領域なので、そこで優位に立とうという話を2年生以上には言っていて、その部分では力を多少は見せてくれているのですが、レベル的にはまだまだかなと思います」

 主力を支える中間層は、創価大にとって長年の課題だ。昨季は「神6(シックス)」こと出雲駅伝で3位を達成したメンバー6人以外がもうひとつ伸びてこなかった。今季に関しても、エースの小池は「チーム全体を考えると、まだ力が足りない」と言う。

「(5000m)13分台の1年生が6名入ってきて、下級生が下からグッと押し上げてくれるようなチームになっていくと思いますが、その反面、上級生がもっと元気を出していかないと、青山学院大や國學院大、駒澤大、早稲田大、中央大にはかなわないと思います。

(それと同時に)大きな舞台で自分が勝たないと『創価大、強いな』って言ってくれないでしょうし、メディアの取材もほかに行ってしまう。僕を含めて上級生は出たレースではしっかり勝っていかないといけない」

 そう小池は危機感を口にするが、榎木監督はそこまで悲観していない。

「ここまでチームとしてはすごくいい練習ができています。これから伸びてくる選手も多くいると思いますので、夏からが勝負ですね」

 榎木監督が言う「いい練習」とは、創価大の新たな取り組みのことだ。従来はレベル別に3チームに分かれ、それぞれ担当のコーチがついて練習を行なっていた。だが、今季は13分台の1年生が6名入ったことを受け、トラックの5000mで13分40秒を目指す川嶋伸次総監督グループと、毎月コンスタントにハーフを走るロード組の榎木監督グループのふたつに分けたのだ。

 川嶋総監督グループには、すでに13分40秒をクリアしている小池のほか、織橋巧(4年)、齊藤大空(4年)、ルーキーの村上ら13分台の選手のほとんどが属している。

一方の榎木監督グループには、山口、衣川勇太(2年)、榎木凜太朗(3年)ら約20名がいる。そのほかに山専門と育成の15名ほどを久保田満ヘッドコーチと築舘陽介コーチが指導している。

「高速化する箱根駅伝に対応するには、5000mは13分40秒台、10000mは28分30秒台の選手を揃える必要があります。トラック組は夏までに40秒台を出すことに重点を置き、絶対的なスピードを上げることに取り組んでいます。ロード組はハーフで1時間02分台を安定して出し、(勝負)レースで1時間00~01分台を出せる力をつけることを目標にしています。それぞれが得意なところでしっかりと力をつけ、それを秋の駅伝シーズンに結集して戦えるチームにしていきたいと思っています」

 今季の創価大の目標は、例年と少し異なる。昨年は青学大、駒大、國學院大、早大、中大の「5強」に割って入るトップ3を掲げていたが、今季は矢印を他校ではなく、自分たちに向けた。

「三大駅伝は、今まで3位以内という順位を目標にしてきたのですが、今季の箱根駅伝については、過去に創価大のOBが出してきた(学内)区間記録の合計タイムである10時間42分02秒を超えることを目標にしています。それでも前回大会(優勝した青学大は10時間37分34秒)に当てはめると3位相当なので、優勝はまだ遠いのですが、まずは身近なところをクリアしていこうということで、10区間の学内記録をすべて上回っていく。そうして、青学大に少しでも迫れるようにしていきたいですね」

 創価大は、一昨年に卒業した吉田響(現サンベルクス)の代から、選手の意識のベクトルが大きく変わった。

 上位校に負けたくないという気持ちに火がつき、そこそこ戦えることに満足せず、より上を目指すようになった。榎木監督もチームの発信力を高め、成長できる環境をつねに考えてきた。

とはいえ、生半可な覚悟では歴代の学内区間記録を更新することも、その先にある高みにも届かない。果たして今季、史上最強のチームを作り上げることができるか。

 創価大は野心をたぎらせている。

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