2024年卒大学生向けの企業の採用活動が2023年3月1日から解禁され、いよいよ就職活動シーズンが本格化した。
就活生はいったいどんな企業の、どこに注目しているだろうか。
男子9万6000人、女子6万4000人、文系9万9000人、理系5万8000人、それぞれの大学生が選んだベスト20位の企業から見えてくるものは――。
総合上位は、若手の裁量権が大きく、成長させてくれる企業「OpenWork」は、主に社会人の会員ユーザーが自分の勤務している企業や官庁などのクチコミ情報を投稿する国内最大規模の口コミサイト。社会人のほか、口コミを通じて生々しい企業の就職情報を得ようとする学生ユーザーも多く登録している。会員数は約540万人(2023年2月時点)という。
OpenWorkでは、企業の評価を「待遇面の満足度」「社員の士気」「風通しの良さ」「社員の相互尊重」「20代成長環境」「人材の長期育成」「法令順守意識」「人事評価の適正感」の8つの指標を5段階で評価している。
今回の調査は、すでに登録している2024年卒業予定の学生ユーザー約16万人が、特にどの企業に注目して口コミ情報を調べたか、検索件数をもとに調査した。「検索件数が多い企業ほど注目度が高い」と評価したわけだ。
【総合】
まず、全体としての「総合」を見ると、1位は外資系コンサルト会社のアクセンチュアだ。以下、2位にITと人材に特化したメディアのレバレジーズ、3位にNTTグループ一員で情報サービス大手のNTTデータ、4位に総合不動産大手のオープンワーク、5位に自動制御機器開発・販売のキーエンスという結果になった【図表1】。
6位から10位を見ても、野村総合研究所(コンサルト)、サイバーエージェント(インターネットメディア・広告)、Sky(ソフトウェア開発)、富士通(総合エレクトロニクスメーカー)、日立製作所(電機メーカー)と、各分野からバランスよく選ばれている。
これら注目度が高い企業の共通点として、「20代成長環境」への社員からの評価が高いことがあげられる。
背景には、「転職前提の就職活動」というZ世代のキャリア観に加え、企業側も「ジョブ型雇用」を推進するなど、学生と企業双方に入社早々にスキルを高めたいというニーズがあることが考えられる。
また、最近では「ゆるい職場」(仕事に厳しさがなく、やりがいや成長の機会に乏しい職場)や「クワイエット・クィッティング」(静かな退職)がキーワードになるなど、今後ますます若手の裁量権の大きさに注目が集まりそうだ。
男子はメーカー、女子は人と関わる企業が人気【男女別】
男女別のランキングを見ると、男子学生では富士通や日立製作所、ソニーグループ、三菱電機、NECといったメーカー系の中でも総合電機・IT関連の企業への関心が高まっていることがわかる【図表2】。
一方、女子学生ではレバレジーズ、クイック、リクルート、パーソルキャリアといった人材関連サービス企業のランクインが目立っている。人と関わる業界への関心が高いことがうかがえる結果となった【再び図表2】。
男女ともに注目企業に目立って大きな差があるわけではないが、傾向としてどちらかというと、男子学生は「形がある製品」を扱う企業が、女子学生は「形がないサービス」を扱う企業が人気を集める傾向がありそうだ。
それぞれ、どういった働きがいや成長環境があるのか、新卒入社した社員クチコミから見ていくと――。
ソニーグループ「ハードワークが求められるタイミングもあるが、商品を世の中に届けた時、メディアなどで取り上げられた時には達成感を感じる」(ソフトウェア開発、男性)
日立製作所「国が携わるような生活に不可欠なインフラに関わる大型プロジェクトが多く、やりがいは大きい」(営業、男性)
クイック「自分の行動から、企業の成長に携われたり、転職者の人生を変えられたりすることにはやりがいを感じられる」(コンサルタント、女性)
パーソルキャリア「自身のキャリアについて悩んでいる方や、現状を改善したい方、キャリアアップを目指す方など様々な顧客にとってベストな選択を届けられた時や、転職活動を終えるまでの過程で何らかの形でサポートした折に感謝された際は働きがいを感じる」(キャリアコンサルタント、女性)文系は営業職、理系はエンジニア・研究職がある企業に注目
【文理別】
つづいて、文理別の結果をみていこう。文系学生の1位はレバレジーズ。また、オープンハウスやサイバーエージェント、キーエンス、サントリーといった営業職種がある企業がランキング上位になりやすい傾向が見られた【図表3】。
一方、理系学生の1位はNTTデータ。ほかに、SCSKや日鉄ソリューションズといったシステム構築やソフト開発関連企業への注目が高い傾向にあり、エンジニア職種がある企業に関心が集まっている。また、東京エレクトロンや旭化成、キヤノン、三菱重工業といった研究職種をある大手メーカー系企業も多くランクインした【再び図表3】。
それぞれの企業の魅力を、新卒入社した社員クチコミから見ていくと――。
オープンハウス「実際に自分がお客様に販売した物件を気に入っていただけた時はとても嬉しかったです。また、昇給や賞与にもしっかりと反映されるのでモチベーションを保ちやすいところがいいと思います」(営業、男性)
サイバーエージェント「インターネット広告マーケット1位である会社で、一定規模のクライアントを相手に広告営業・運用をした経験は、実際に転職したり、独立したりする際の市場価値もかなり高いと感じている」(広告営業、男性)
日鉄ソリューションズ「答えのない課題を具体的なシステムアーキテクチャ(システムの構成要素とその関連)に落とし込んでいく仕事が多く、それをリードする立場になるので、そういったチャレンジをしたい人には向いている」(システムエンジニア、男性)
三菱重工業「若手社員のうちからスケールが大きいプロジェクトに参加でき、自分が設計・開発したものがそのプロジェクトの製品の一部となるため、個々の仕事にやりがいを感じることができる」(研究開発、男性)
こうした「入ってよかった」という生の声を見る限り、若手のやる気を尊重して、スキルとキャリアを大いに伸ばす環境に恵まれている企業が多いようだ。
調査は、OpenWorkに登録している2024年卒学生ユーザー16万611人を対象に、2023年3月6日時点の検索企業を集計した。内訳は男子学生9万5989人、女子学生6万4622人。文系学生9万9184人、理系学生5万7579人。(福田和郎)