「仕事を失う人が本格的に増えるのは、不況が始まって半年後、10月が危ない」という。「真っ先に“被害に遭う”のはパートや派遣社員だ」とも。
全国で約6万1,000人。これは厚生労働省の調査による、新型コロナウイルスの影響で仕事を失った人の数だ。とくに気がかりなのが、女性が7割を占めているといわれるパートや契約社員、派遣社員などの非正規労働者が、全国で約3万人も職を失っていること。
しかし、この数字でさえ実態を表していないと語るのは、労働問題に詳しいNPO法人POSSE代表の今野晴貴さん。
「解雇や、契約期間満了を理由に契約を終了させる雇い止めを、厚労省が集計した数字はハローワークが把握しているものだけ。すなわち氷山の一角でしかなく、仕事を失った人はもっと多くいます。
実態はより深刻であることは、9月25日付の『西日本新聞』でも明らかだ。今年4~7月に九州7県の各労働局へ届けのあった「会社都合の退職(=解雇・雇い止め)」の人数は2万3,692人に上り、同期間の厚労省の発表(九州7県で4,093人)と比べると、5倍以上の開きがあることが判明したのだ。
とくに福岡県では、飲食業や小売業、製造業を中心に、前年より53.8%増の1万1,416人が解雇や雇い止めになっており、その多くが“雇用の調整弁”ともいわれ、景気が悪くなると解雇されやすい非正規労働者だという。
「女性の比率が高い小売業や飲食業、観光業などの派遣社員の契約期間は3カ月間や6カ月間が多いことから、9月末に契約満了を迎える派遣社員も少なくありません。そんな人たちが一気に雇い止めをされたら、10月以降の解雇者数は激増してしまうでしょう。Go To キャンペーンがありますが、高級なホテルや旅館、レストランだけで使われることが予想されます。
非正規労働者になんら手立てはないのだろうかーー。
都内の大手デパートに入る和菓子店で働いていて、今年6月末で雇い止めにあった、加藤悦子さん(仮名・47)。’17年8月から勤めていた彼女は派遣社員で、3カ月ごとの不安定な雇用契約だった。
「1日8時間、週5日のフルタイムでシフトに入り、手取り約20万円で働いていました。
加藤さんが打った策には参考になることが多い。
「どうしても納得できなかったのは、臨時休業期間中に私は一銭ももらえなかったのに、ほかの派遣会社から派遣された人には休業手当が出ていたこと。
休業手当とは、働く側が会社都合で休まざるをえなくなった場合、その期間中、直近3カ月の平均賃金の6割以上を、雇い主が支払うもの。派遣社員の場合は派遣会社が支払うことになっている。
「派遣会社側は、最初は休業手当の支払いを拒否していました。ところが2回の団体交渉、そして初めての経験でしたが、会社が入っているビルの前でのビラ配りや街宣活動をしたところ、休業手当が支払われることになったのです」
労働組合に相談するのも効果的だが、解雇や雇い止めを告げられた際に、抵抗する術はまだある。
「安易に書面にサインしないで、まずは解雇回避を試みることです。
パートや派遣社員を襲う「30万人失業」時代を賢く乗り切ろう。
「女性自身」2020年10月20日号 掲載