ハンセン病患者の強制隔離を規定した「らい予防法」が1996年4月に廃止されて今年で30年となる。
 同法は明治期にハンセン病患者を療養所へ隔離する目的でできた。
31年には対象を広げ「強制隔離によるハンセン病絶滅政策」が広まる。
 戦後も53年に「新らい予防法」が制定された。廃止されるまで実に90年にわたり隔離政策が維持されてきたのである。療養所では断種や中絶の強要といった深刻な人権侵害も続いてきた。
 元患者らが起こした国家賠償請求訴訟で2001年、熊本地裁は隔離政策を憲法違反と判断して国に賠償を命じた。19年には家族が受けた差別被害についても国の賠償責任が認められた。国は謝罪し、補償と検証を進めている。
 しかし、社会にはびこった差別と偏見を取り払うのは容易ではない。
 厚生労働省が24年に初めて実施したハンセン病への意識調査では、元患者と家族に対する差別や偏見が「現在、世の中にあると思う」と回答した人は約4割に上った。
 「手をつなぐなど体に触れる」「同じ浴場を利用する」「元患者の家族と自分の家族が結婚する」ことにそれぞれ約2割の人が抵抗を感じるとも回答している。
 人権侵害を生んだ社会構造に向き合い、元患者や家族の名誉を回復する取り組みはなお道半ばだ。
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 こうした問題に、司法もまた真摯(しんし)に向き合っているとはいえない。

 ハンセン病患者の男性が隔離された特別法廷で死刑判決を受け、1962年に執行された「菊池事件」を巡り、熊本地裁は今年1月、再審を認めない決定をした。
 男性は無実を訴えたが、十分な弁護を受けることもできなかった。差別や偏見に基づく審理で公平な裁判が実施されたとは到底思えない。
 家族補償を巡っても訴訟は続いている。
 養子縁組などで元患者と家族となった熊本と沖縄の7人が、補償対象外とした国の処分取り消しを求めた訴訟の口頭弁論が先月、福岡地裁で開かれた。
 原告側は現行の補償法の盲点と指摘。「偏見差別を受けてきた家族に、平等に法の補償を認めてほしい」と訴える。
 不当な切り捨てが行われないよう、慎重な判断が求められる。
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 ハンセン病の国立療養所は全国13カ所にあり25年5月現在、入所者は639人。平均年齢は88・8歳となった。
 県内には沖縄愛楽園と宮古南静園の2カ所がある。愛楽園の交流会館では来月31日まで、入所者などの証言集を並べた企画展が開かれている。

 地域は患者や家族らをどう扱ってきたのか。社会から分断された人々は病と闘いながら、何を思い、どう生きてきたのか-。
 隔離政策廃止の節目を、差別と偏見の問題に向き合う機会としたい。 
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