成宮寛貴の8年ぶり俳優復帰作として話題になり、13日についに最終回を迎えたABEMAオリジナルドラマ『死ぬほど愛して』(「ABEMA」にて無料放送、Netflixでも同時配信中)。現在も“一気見”したい人や、“考察”のために2度見・3度見をしている人たちによる視聴も好調だ。
本作は、累計発行部数1億部以上突破のヒット作『金田一少年の事件簿』などで知られる天樹征丸氏の同名漫画が原作の純愛サスペンス。幸せな結婚生活の裏で巻き起こる「女性記者殺人事件」を発端に、やがて「究極の愛」と「狂気」に翻弄されていく神城真人(成宮)と澪(瀧本美織)の夫婦の物語であり、鬼才・城定秀夫監督がメガホンを握る。
大反響のうちに最終回を迎えた『死ぬほど愛して』について、プロデューサー・小林宙さんに番組制作の裏側を語ってもらった。
■8年ぶり俳優復帰となる成宮寛貴に抱いていた“不安”
最終回までご覧になっていただいた方、ありがとうございました。まだご覧になっていただいてない方、是非ご覧いただけますと嬉しいです。初心に戻って、成宮寛貴さんについて語りたいと思います。
皆さんご存知の通り、成宮さんは今回8年ぶりの俳優復帰となったのですが、私はこれまでお仕事をご一緒したことがなく、どこかでお会いしたこともありませんでした。
なので、成宮さんがどういった人間性の方なのかもわからず、ただ、私の持つ彼のイメージが神城真人という役に合うということでオファーしました。真人を演じる役者には、イケメンであること、殺人鬼が持つ謎のミステリアスさが必要であり、さらに卓越した芝居力を持っていることが必須条件でした。
そんな神秘性を兼ね備えている点については、成宮さんは長期間休んでいたことでさえもプラスになると思い、オファーしたところ、原作の天樹さんとの関係性もあり快諾してもらいました。
ただ、そうは言っても一抹の不安はありました。というのも、8年ぶりということで、年齢も重ねていることと、“出る側”から離れていることで、SNSではお姿は見ていましたが、映像にした時に真人の相応しい容貌のままであるのかというのが正直、心の片隅では気になっていました。
そうした不安を抱えながら、クランクイン前に監督とともに成宮さんにお会いしたのですが、一目で「疑ってごめんなさい」と心の中で思いました。お会いした後、ABEMAのスタッフと居酒屋に行き「めっちゃカッコよかったね」「色気やばい」と興奮しながら飲みました。それくらい完璧なビジュアルでした。
そしてお話ししてみて、非常に物腰が柔らかく、彼の今の雰囲気が滲み出ていると感じましたし、そこが「色気」というものなのかもしれません。もしかしたら昔からそうだったのかもしれませんが。
また、8年以上前の彼の演技はどこか野心的で反抗的な若さがあると思っていたのですが、今回お会いしてみて、いい意味で大人になり、成熟しているなと感じました。実際お芝居もしっかり大人の色気を醸し出してくれて、真人にピッタリでした。人間としていい8年を過ごしてきたんだろうなとすごく思いました。
そして何より思ったのは、「野心的な、反抗的な若さ」もお芝居に残っていることが魅力的でした。普段は優しいのに、狂気の芝居になる時はスイッチが入るようで、やりきれてしまう。アクセルを踏み込めるお芝居ができることが、これもまた真人にピッタリでした。
周りのキャスト、スタッフへの心遣いも素晴らしく、これから俳優としてずっと活躍されていくと思いますが、個人的にはどのような役者人生を成宮さんが歩んでいかれるのか楽しみです。
■原作コミックとドラマ版のラストの違いにご注目を
原作漫画とラストは少し違います。原作漫画もお読みになって欲しいのですが、真人と澪が直接対峙するラストにおいて、原作漫画での行動は、2人の愛の帰結を秀逸に表現しています。原作のそのラストが素晴らしいのは、真人の行動が言語化できない感情からきている行動なのですが、何となく読者には理解できるという究極の余白で愛を表現できているのですが、それをドラマではどう表現するか、真人と澪のラストをどうするか試行錯誤しました。
その結果、最終回終盤での2人の別れになり、その先からドラマは城定監督ワールドになります。「澪が一番やばかった」というのが、監督が最初から考えていたことですが、澪の狂気はここにいたるまでに丁寧に描いてきているので、ラストを見た多くの人に「最後の澪の表情、やばかった」と言われるのかもしれません。
原作の天樹さんも、澪を演じた瀧本さんに「最後の表情すごかった」と話しているのを聞いて、原作者の方もドラマオリジナルのラストを喜んでくれているのが非常に嬉しかったです。
ちなみに、タイトルの『死ぬほど愛して』という言葉の解釈は、最初は澪から真人への「死ぬほど愛して欲しい」という気持ちから始まり、ラストに真人から澪への「死ぬほど愛して欲しい」にかわり、そして、本当の最後は、2人の「死ぬほど愛してた」に変わっていくと私は思っています。
ただ、監督や成宮さん、瀧本さん、原作の天樹さんや、キャスト、スタッフの方々、はたまた視聴者の方々で解釈が全然違うと思いますし、私はそれはそれで非常にいいなと思っています。
いいドラマというのは、作り手から離れ、皆さん自身の物になっていくものですし、『死ぬほど愛して』はその意味で言うと、自信を持って皆さんにお預けできる作品になったと思っています。
■最後に――、『死ぬほど愛して2』で会いましょう!?
ドラマや映画作りを、私は20年以上やってきました。作品が終わるごとに、キャストやスタッフは解散して、また別の現場に向かっていきます。長くこの仕事に携わるほど、ドラマづくりって楽しいなと思いが深まっています。
毎回、スタッフにもキャストにも「お久しぶりです」「ご無沙汰しております」という人が何人もいます。令和の時代に正直、非常にきつい労働環境ではあると思います。決してオシャレな洗練された仕事ではありません。健全な肉体と精神力、そこにクリエイティブ思考が必要になるという、かなり特殊な仕事内容なので、ドラマや映画が好きではないと絶対続きません。
その意味では、再会するスタッフやキャストは、同じ志を持ってるんだなと勝手に思えてしまいます。「戦友」みたいな感覚でしょうか。
今回、私は、城定監督も、成宮さんも初めてでしたが、どこかでまた再会できれば本当に嬉しいです。それまで私も生き残れるように精一杯、作品作りをしたいと思います。
それと、視聴者の方にもより面白いドラマを提供できるように日々努力、挑戦していきたいと思っています。
最後まで『死ぬほど愛して』ご覧いただきありがとうございました。
また皆さんに見ていただける日を楽しみしています。
あ、『死ぬほど愛して2』があればいいと思っています。