「いまだに50代の人からは、土曜ワイド劇場『江戸川乱歩の美女シリーズ』を見ていましたと言われるんです。それで誰もが『途中、ヌードシーンになると家族が気まずくなって、親から“早く寝ろ!”って怒られました』って(笑)。

数年ぶりにDVDで過去の作品を見返しましたが、たしかに今では放送できないような裸のシーンがあって、改めてびっくりしました」

こう語るのは五十嵐めぐみさん(71)だ。出演当時は、まだ新人女優だったと振り返る。

「江戸川乱歩シリーズの主役・明智小五郎を演じたのが天知茂さんということもあって、所属事務所の後輩の私が抜擢されたんです。完全に事務所の力です」

とはいえ、大スターの天知さんは雲の上の存在だったという。

「ドラマの中で演じたのは、明智小五郎の助手・文代。女好きの明智に嫉妬したり皮肉を言ったりするキャラクターなのですが、本番以外では、おいそれと話しかけられる相手ではありません。毎回、撮影現場では緊張して、ごあいさつ以外は、ずっと遠巻きに天知さんを見ているような関係でした」

その緊張をほぐしてくれたのが、警部役の荒井注さんだった。

「注さんとは、当時掛け持ちで撮影していた『ムー』でも共演していたので、すごくかわいがってくださって。天知さんとも楽しそうにお話しできる人だし、NGを出しても、現場が和むようなムードメーカー。注さんがいらっしゃるとホッとしました」

撮影現場でもっとも緊張したのは、ドラマのヤマ場。

「変装した明智小五郎が、マスクを外して正体を明かすシーン。衣装も歌舞伎の引き抜きのように早替わりするので、失敗できないのです。

天知さんも周りのスタッフもすごく緊張していて、息ができないくらい空気が張り詰めた現場でした」

天知さんは、急死する直前まで、25作品におよぶ同シリーズに出演し続けた。

「天知さんはお優しいのですが、無口なために最後まで打ち解けることはありませんでした。ただ一度だけ『ティッシュを持っているかい?』と声をかけられたことがあったんです。私はあわてて探したのですが見当たらず、とっさにポッケに入ったくしゃくしゃになったティッシュを手渡してしまって……。それを笑いながら受け取ってくださったのが、天知さんとのいちばんの思い出です」

『江戸川乱歩の美女シリーズ』(テレビ朝日系、1977~1994年)

名探偵・明智小五郎(天知茂さん)が活躍する2時間ドラマの人気シリーズ。中盤に映し出される美女のヌードに引きつけれれ、変装から早替わりして謎を解明するクライマックスに夢中になった。

【PROFILE】

いがらし・めぐみ

1954年生まれ、愛知県出身。1976年にドラマ『さかなちゃん』のヒロインとしてデビュー。ドラマ、映画だけでなく、抜群のスタイルをいかして雑誌のグラビアでも活躍する。

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