最初は楽しかった船の移動。しかし途中でエチケット袋がおともだちになり胃の中は空っぽに。
最後は涙目のままひたすら下船を待っていた…
そんな切ない船酔い経験から、船だけはあかん!な人も少なからずいるわけだが、船員の胃袋をつかさどる料理人は、あらゆる揺れに耐えながら調理をせねばならない。
北大西洋を行く帆船の料理人、シュワルツさんの毎日はまさに揺れとの闘い。だが彼はどれだけ仕込みに苦労しても、空腹な仲間を笑顔にするためキッチンに立つ。
波に合わせてバランスを取りながら材料を切り、滑り落ちるお皿を拾いながらの下ごしらえ。荒波にも負けないシュワルツさんのお仕事にズームインだ。
[動画を見る]Cooking at rough sea on a sailing vessel
【どんな揺れにも対応し、使命を果たす料理人】
この動画は料理人のラッセ・シュワルツさん自身が投稿したお仕事風景。
この日は大荒れの大西洋を航海中のアヴォンテュール号のキッチンでこんな風に働いていたという。
大きく揺れる船内で体を傾けながらの仕込み。メニューは仲間を気遣ってヘルシーで栄養価が高いものを心がけている。
あまりの傾きでお皿が滑って落っこちた!
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やれやれ…お皿を拾って調理続行
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ね、時化(しけ)の時の船の料理はこうだから!
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【船酔いは克服。でも調理はそんなに楽じゃない】
経験豊富なシュワルツさんは、船乗りに共通の「海の足(sea legs)」を獲得している。
それは英語圏の表現で、船で長時間過ごす人々が持つどんな揺れでもバランスを取って歩く能力を指し、"海の足"を持つ人は船酔いしないといわれている。
おかげで彼は激しく揺れる調理場でもブレることなく使命を果たせる。でも、お皿はもちろん、鍋のお湯もこぼれそうだしいろいろ大変そう。
以下はその日のアヴォンテュール号からの景色
シュワルツさんの調理中、船はこんなに激しい波にもまれていた
[動画を見る]Cooking at rough sea, this is the same day just from outside
ちなみにこれは冒頭の動画を別のユーザーが編集した固定バージョン。
画像の一部が切れてるけど船の揺れ具合がわかるかな?
[動画を見る]Cooking at rough sea on a sailing vessel [STABILIZED]
【朝は弱いが調理は大好き。シュワルツさんの日常】
シュワルツさんがアヴォンテュール号のシェフになったのは2014年。それからおよそ5年経った現在、早起きだけはいまだに辛いけれど、この仕事を選んで良かったと心から思っている。
朝が弱いシュワルツさんが元気になるのは昼の仕込みから。以下は彼が綴ったものだ。
朝6時30分。鳴る目覚まし時計のアラームで起き、憂鬱な気分でのっそりと2階に上がる。
7時ジャストになると腹ペコの仲間たちが朝食をペロリと平らげる。彼らの笑顔にいつも癒される…でも完全に調子が出るのはもう少し後かな。
10時30分。今度は昼食の準備。やっぱり料理の支度は楽しいよ!
食事の下ごしらえが面倒という人もいるけれど、シュワルツさんは全く逆。船の中で野菜を切ったり、フライパンの肉を火にかけたり、ベジタリアンメニューを作ったりするのが本当に好きなのだ。
【毎日休まず頑張れるのは感謝の言葉のおかげ】
「アヴォンテュール号のシェフは人生で最高の職業だよ。たくさんの船旅ができる上にとびきりクールで親切な人たちのために料理を作れるんだから」
そんなシュワルツさん心の支えはみんなからの感謝の声だ。
「すごい料理ありがとな!」「うまかった!」って言われるだけで、毎日休まずキッチンに立てるという。
単に調理が好きなだけでなく、サービス精神旺盛で、揺れを上手にやり過ごせるシュワルツさん。うってつけの職業に就いたシェフは今日も海のどこかでおいしい料理を作っているに違いない。
References:laughingsquid / youtubeなど /written by D/ edited by parumo
記事全文はこちら:船での料理は揺れとの闘い。波に合わせてバランスを取りながらおいしい料理を作る船上の調理師 http://karapaia.com/archives/52284598.html