アレシボ天文台の望遠鏡が崩壊する決定的瞬間の映像が公開される

image by:National Science Foundation
 60年間さまざまな天文学的発見をしてくれたプエルトリコのアレシボ天文台で1963年から運用されていた電波望遠鏡が崩壊するという事故が起きた。その決定的瞬間をとらえた映像が、アメリカ国立財団(NSF)によって公開された。


 12月1日午前7時55分頃(現地時間)、副鏡を吊るすメインケーブルが突然断線し、重量900トンの受信機が落下。その下に設置されていた主鏡を突き破り、望遠鏡全体が完全に崩壊してしまった。
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Footage of Arecibo Observatory collapse

【老朽化により解体が決定されていたアレシボ望遠鏡】

 1963年に建設された主鏡の口径が305メートルのアレシボ望遠鏡は、2016年に中国の500メートル球面電波望遠鏡ができるまで世界最大の電波望遠鏡だった。

  主鏡はカルスト地形のくぼみを利用して設置され、その140メートル上に副鏡がぶら下げられた構造で、遠目にはまるでUFOが浮遊しているかのような姿が印象的だ。

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崩壊前のアレシボ望遠鏡 image by:National Science Foundation
 だが最近では老朽化が著しく、2020年8月10日には副鏡を支える補助ケーブルが突然断線。これによって主鏡に30メートルの亀裂が入ったために運用が中止。


 さらに11月6日にメインケーブルの一部が切れたことを受けて、補修の費用と安全が考慮された結果、解体が決定されていた。

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崩壊前のアレシボ望遠鏡 image by:National Science Foundation
【最後の崩壊の瞬間】

 ちなみに最後の崩壊の瞬間を撮影することができたのは、老朽化による破損が生じてから、作業員の立ち入りが禁止され、かわりにビジターセンタの屋上に設置されたカメラやドローンによる監視が行われていたからだ。

 アメリカ国立財団(NSF)のアレシボ関連プログラム責任者、アシュリー・ゾーダラー氏によると、ここ1週間でケーブルを構成する個々のワイヤーが切れていることが監視カメラによって確認されていた。そのため崩壊が避けられないだろうことは予測されていたのだそうだ。

ドローン撮影した崩壊後のアレシボ望遠鏡
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Observatory Collapses Arecibo Puerto Rico

【天文台自体は今後も存続予定】

 アレシボ天文台は57年の稼働期間の間に、初の太陽系外惑星の発見、初の反復する高速電波バーストの発見、初の中性子星の存在を示す証拠の発見など、さまざまな成果をあげてきた。また1995年公開の映画『007 ゴールデンアイ』の舞台になったこともある。


 アレシボの今後について、NSFの天文科学部門の責任者ラルフ・ガウム氏は、まだ評価を行っている最中とコメント。最終的にどうするか決めるのは時期尚早と述べている。

 ただ麓にある天文台自体は今後も存続する予定であるとのこと。まだ12メートルのアンテナが残されており、ビジターセンターも営業が続けられるそうだ。

References:NSF / spacenews/ written by hiroching / edited by parumo

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