はやぶさ2が目指す小惑星、旧ソ連の探査機である可能性
はやぶさ2 CGモデル Image credit:<a target="_blank" href="https://commons.wikimedia.org/w/index.php?title=User:Go_Miyazaki&amp;action=edit&amp;redlink=1">Go Miyazaki</a> / <a target="_blank" href="https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:%E5%B0%8F%E6%83%91%E6%98%9F%E6%8E%A2%E6%9F%BB%E6%A9%9F_%E3%81%AF%E3%82%84%E3%81%B6%E3%81%952_CG%E3%83%A2%E3%83%87%E3%83%AB.jpg">commons.wikimedia</a> /<a target="_blank" href="https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0/deed.ja"> CC BY-SA 4.0</a>

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 日本の小惑星探査機「はやぶさ2」は、現在小惑星1998 KY26に向かっており、2031年に至近距離に到着する予定だ。

 だがその小惑星、実は旧ソ連が打ち上げた探査機である可能性が、国際宇宙探査研究チームにより示唆された。

 問題となっている探査機フォボス1号は、1988年に交信を絶ち、行方がわからなくなっていた。

 この主張は査読前の論文によるもので、あくまで仮説にすぎないが、再観測によると、1998 KY26の直径は約11mほどしかなく、軌道、表面の明るさを示すデータが、フォボス1号のものとほぼ一致していたのだ。

 この研究成果は査読前の論文(プレプリント)として『arXiv』[https://lweb.cfa.harvard.edu/~loeb/HCL1.pdf](2026年5月31日付)に投稿された。

はやぶさ2が拡張ミッション、小惑星1998 KY26に向かう

 日本の小惑星探査機はやぶさ2は、小惑星リュウグウから砂のサンプルを持ち帰った

 2020年12月にサンプルの入ったカプセルを地球に届けたあと、本体はまだ燃料を半分ほど残していた。

 そこでJAXA(宇宙航空研究開発機構)[https://www.isas.jaxa.jp/missions/spacecraft/current/hayabusa2.html]は、はやぶさ2をもう一つの小惑星へ向かわせる拡張ミッションを決めた。目的地は「1998 KY26」という小惑星である。

 1998 KY26は、1998年に発見された地球に近づく軌道を回る小さな天体で、はやぶさ2は2031年7月にランデブー(至近距離に到着)する予定になっている。

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 もし探査に成功すれば、探査機がたどり着いた天体としては史上最小の記録になる。

 地球のすぐ近くを通る小惑星は、その性質や、過去に地球へどんな影響を与えてきたのかがまだよくわかっていない。

 小さくても、もし地球にぶつかれば大きな被害を出すおそれがあるため、その正体を間近で調べる意味は大きい。

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再観測の結果、1998 KY26は予測以上に小さかった

 ところが2031年のランデブーを前に、この小惑星が思ったよりずっと厄介な相手だとわかってきた。

 2024年、研究者たちがチリにあるヨーロッパ南天天文台の超大型望遠鏡(VLT)で1998 KY26を観測したところ、その姿は予想とまるで違っていた。

 観測を率いたスペイン・アリカンテ大学とバルセロナ大学の研究チームによると、1998 KY26は思っていたより3~4倍も小さく、直径はわずか11mほどしかなかったという。

 自転の速さもそれまで考えられていた2倍で、5分あまりで1回転してしまう。さらに、岩石にしては表面が明るく、太陽の光をよく反射していた。

 1998 KY26の直径が約11mなのに対して、向かっているはやぶさ2の本体は約6mだ。探査機が、目指す天体の半分以上もの大きさを占めることになる。

 探査先の小惑星は、探査機の2倍弱の大きさしかないのだ。

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小惑星1998 KY26は旧ソ連の探査機である可能性

 小さすぎて、速すぎて、明るすぎる。この奇妙な小惑星の正体について、新たな説が浮上した。

 イギリスに拠点を置く宇宙探査研究団体、恒星間研究イニシアチブ(i4is)に所属するアダム・ヒバード氏をはじめとする、ドイツやアメリカの国際研究チームによると、1998 KY26は、旧ソ連(現ロシア)の火星探査機フォボス1号かもしれないという。

 フォボス1号は1988年7月7日に打ち上げられ、火星とその衛星フォボスを探査することを目的としていた。

 ところが同じ年の9月2日、地上から送られた命令にたった一つハイフンが抜けるという間違いがあり、その誤った命令のせいで交信が途絶えてしまった。

 火星にたどり着くこともなく、行方がわからなくなったのである。 

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1998 KY26は謎多き暗黒彗星なので人工物かもしれない

 40年近く前に消えた探査機の名前が、なぜいま小惑星の正体として登場したのか?

 そのきっかけは、1998 KY26が暗黒彗星という変わった天体に分類されていたことにある。

 暗黒彗星[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9A%97%E9%BB%92%E5%BD%97%E6%98%9F]は、近年になって新しく分類された天体で、見た目は尾もガスの噴き出しもなく、ふつうの小惑星のように見える。

 だが、重力だけでは説明できない加速をするため、この不思議な動きをどう説明するかが、長く議論されてきた。

 2024年にはNSF(アメリカ国立科学財団)やNASA、ESAなどの研究チームにより、新たに7個の暗黒彗星が発見された[https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.2406424121]ことが報告されたことで注目が集まっている。

 1998 KY26もその一つで、自然の天体としては説明しづらい性質を抱えていた。

 だからこそ、自然の岩ではなく人工物ではないかという仮説が生まれたのだ。

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1998 KY26と行方不明の探査機の特徴が一致

 ヒバード氏ら研究チームは、フォボス1号がたどったはずの軌道と、1998 KY26の軌道を細かく比べた。

 すると2つの軌道はよく似ていた。

 研究チームの計算では、フォボス1号が交信を絶った直後と1996年5月の2回、合わせて秒速1.9km分の噴射を行ったと仮定すると、2つの軌道がほとんど区別できないほど重なるという。

 しかもこの秒速1.9kmという速度変化は、フォボス1号が持っていた燃料の余力でじゅうぶん出せる範囲だった。

 フォボス1号は火星を回る軌道に入るために、強力な推進装置を積んでいたからだ。

 軌道の一致だけでなく表面の明るさも、1998 KY26の性質も探査機に似ていた。

 表面が明るく光をよく反射するのは、金属や人工の素材なら説明がつく。

 速く自転しているのに崩れずまとまっているのも、小石が寄り集まっただけの小惑星では起こりにくく、頑丈な一つのかたまりなら無理がない。

 明るさが大きく変化することから、1998 KY26はかなり細長い形をしているとみられる。

 太陽電池パネルを左右に広げた探査機の姿に、ちょうど重なる特徴である。

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それでも仮説の域を出ない理由

 ここまで聞くと、1998 KY26は天体ではなく人工物の可能性が濃厚だ。

 だが研究チームは、今回の研究は「1998 KY26がフォボス1号だと断定するものではない」と、はっきり認めている。

 実際、天文学者の多くは今も1998 KY26をごくふつうの岩石の小惑星だと考えている。

 AIを使って観測データから天体の形を復元した別の研究では、人工物ではなく、でこぼこした小惑星らしい形が示されている。

 フォボス1号と1998 KY26の軌道が似ているのは、たまたま同じような道を通っているだけの、別々の天体だからかもしれない。

 だが今のところ、どちらが正しいと決める証拠はそろっていない。

答え合わせは2031年のはやぶさ2

 この議論に決着をつけてくれるのが「はやぶさ2」だ。

 2031年7月、はやぶさ2が1998 KY26にランデブーすれば、その目で確かめられる。

 岩のかたまりなのか、それとも37年前に消えた探査機の成れの果てなのか。

 はやぶさ2のランデブーまであと約5年。無事にミッションを完遂してくれることを願ってやまない。

 現在のはやぶさ2の地球からの位置はJAXAの公式サイト「はやぶさ2拡張ミッション[https://www.hayabusa2.jaxa.jp/]」で随時見ることができる。

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まとめ

この研究でわかったこと

  • はやぶさ2が向かう小惑星1998 KY26が、消えた旧ソ連の探査機フォボス1号かもしれないという仮説が示された
  • 小惑星1998 KY26は自然の天体としては説明しづらい謎の「暗黒彗星」に分類されている
  • 小惑星のその軌道、表面の明るさ、自転の速さが、1988年に消えた旧ソ連の探査機フォボス1号とよく一致していた

まだわかっていないこと・今後の課題

  • 本当に探査機なのか自然の小惑星なのかはわかっていない
  • 2031年のはやぶさ2の観測で初めて判明する

References: Is the Dark Comet 1998 KY26 the Spacecraft Phobos 1? - Harvard & Smithsonian Center for Astrophysics[https://avi-loeb.medium.com/is-the-dark-comet-1998-ky26-the-spacecraft-phobos-1-304169bce8a2] / Two distinct populations of dark comets delineated by orbits and sizes[https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.2406424121] / Is the Dark Comet 1998 KY26 the Spacecraft Phobos 1?[https://lweb.cfa.harvard.edu/~loeb/HCL1.pdf]

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