大陸形成に関する新説、「クラトン」は30億年前に風化によって作られたと提唱する科学者
 地球の大陸を支えてきた古代の構造「クラトン」は、安定した状態でいきなり海上に姿を現したわけではなく、岩石の風化ではじまる一連のプロセスよって30億年前に形作られたようだ。

 「クラトン」(安定陸塊や剛塊とも)とは、大陸地殻のうちカンブリア紀より前に安定した古い部分のことだ。
大陸で一番古い基盤であり、何十億年もの間、大陸を安定させてきた。

 『Nature』(2024年5月8日付)で発表されたクラトンの形成に関する新説は、従来の説を覆すもので、惑星の進化や生命が誕生する条件を理解するうえで大切な示唆に富んでいる。

岩石の風化プロセスが大陸を安定させる 惑星が地球のようになるには、大陸地殻を作り、それを安定させる必要がある。

 米ペンシルベニア州立大学の研究チームによると、そのために鍵となるのが、ウラン・トリウム・カリウムといった熱を発生させる元素を地表近くに集めることだったという。

 こうした原子は崩壊するたびに熱を放出し、地殻を熱する。加熱され高温になった地殻は、不安定で、変形しやすく、固着もしにくい。
これを防ぐために、地球は発熱する元素をどうにかする必要があった。

 そのために重要になったのが「風化」だ。

 大陸塊が海面から姿を現すと、風雨や化学反応によって岩石が削られて河川に流れ込み、やがて海に運ばれていった。

 こうして出来上がったのが、ウラン・トリウム・カリウムなどたっぷり含まれた頁岩のような堆積物だ。

 発熱する堆積岩は、プレート同士の衝突によって地殻の奥深くへ埋もれ、その熱で周囲の地殻を溶かした。すると今度は溶けた地殻が浮かび上がり、発熱する元素と一緒に上昇していった。


 その結果、ウラン・トリウム・カリウムは地殻の浅いところに集められ、地殻の深いところは冷えて固まっていった。こうして厚く硬い岩石層が形成され、大陸の底が変形しないよう守ってくれたのだ。

 こうして誕生したクラトンは、今から30億~25億年前に形成されたと考えられている。ウランのような放射性元素が現在の2倍のペースで崩壊し、2倍の熱を放出していた時代のことだ。

 このことは、クラトンが形成された時期が、クラトンの安定化プロセスには適切だったことを示している。

 研究著者のジェシー・レイミンク氏は、「これは惑星進化の問題として考えることができます」と語る。


 彼によるなら、地球のような惑星を作るうえで重要になる要素の一つが、比較的早い時期に大陸が誕生することだろうという。

 それによって海面付近にできる高温の放射性堆積物が、安定した大陸地殻を作り出し、生命が繁殖するのに最適な環境をもたらすからだ。

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photo by iStock地下奥深くに埋もれた大陸史の痕跡 この研究では、岩石から放射される熱を評価するために、クラトンが形成された太古代の岩石サンプルを集め、そこに含まれるウラン・トリウム・カリウムの濃度を分析した。

 これまで、時間の経過による放射熱の変化が研究されたことはあった。だが岩石をもとに割り出した熱量を大陸の形成と結びつけたという点で、今回の研究は新しい。

 クラトンは地球上で最も古い岩石を含んでいるが、それを研究するのは簡単なことではない。
地殻変動が活発な地域ならば、山が形成される際に、地下深くに埋もれていた岩石が地表まで浮かび上がってくることがある。

 そもそもクラトンの起源は地下深くにあるので、直接アクセスすることはできない。

 今後の研究では、クラトン内部のコアサンプルを掘削するなどして集め、今回のモデルを検証することになるだろうとのことだ。

 そうした変成堆積岩には、圧力と温度が記録されている。これを調べることで、大陸地殻がこれまでどのような経緯を辿ってきたのか紐解くヒントが得られるのだそうだ。

References:Subaerial weathering drove stabilization of continents | Nature / The Craton Enigma: Scientists Propose a New Continental Formation Theory / written by hiroching / edited by / parumo

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