その記録は地下1268mと、前回の6倍近い深さで、到達したマントルからは岩石のサンプルも回収されている。
大西洋中央海嶺近くにあるアトランティス山塊を掘って回収されたサンプルは、地球の地質について知る手がかりとなるだけなく、生命の起源を紐解くヒントにもなるかもしれない。
海底下の地球掘削の新記録 この地球掘削の新記録は、深海掘削船「JOIDES・レゾリューション」の国際的地質学者チームによって達成された。
「マントル」とは、地殻の下から深さ2900kmまで続く半固体の岩石層のことだ。
普通、マントルにたどり着くには地殻を40kmも掘らねばならないが、「大西洋中央海嶺」のそばにあるアトランティス山塊では地殻がやたらと薄く、マントルが地上に近い。
掘削チームは当初、以前に達成された深さまで掘る予定だったが、思ったより順調に作業が進んだため、そのまま掘削を続けることにしたという。
その結果、前回の記録を6倍以上も上回る、深さ1268mという新記録を樹立することに成功したのだ。
ちなみに、海底からではなく、地上から地下への採掘では、ロシアが20年近くかけて、ペコラ半島のペチェングスキー地区に掘削リグを使って掘った12,262mのボーリング坑「コラ半島超深度掘削坑」が地球上で最も深い人工地点となっている。
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地球の内部構造を描いた予想図 / image credit:気象庁 / WIKI commons地殻とマントルの境界は流動的である可能性 採取されたマントルのサンプルは、主に「かんらん岩」で占められていた。面白いことに、かんらん岩のサンプルは、海水と作用した結果、蛇の皮のような見た目で蛇紋岩化していたという。
さらに、そこにあるはずのない予想外の岩石も含まれていた。このことは、地殻とマントルの境界が従来の説よりも流動的で曖昧である可能性を示している。
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アトランティス山塊の地下から掘削されたマントルのサンプル。蛇紋岩化している/Credit: John Lissenberg
もう一つの重要な発見は、蛇紋岩化したかんらん岩が広い範囲にわたって炭酸化していたことだ。
これは、この深さに炭素が隔離されていることを告げている。
この発見は、地球全体における炭素の循環プロセスを解明する手がかりになるほか、地殻深部に炭素を蓄え温暖化防止として利用できる可能性を示しているという。マントル内から微生物を発見 マントルのサンプルは地質学的なヒントになるだけでなく、生命の起源を紐解くヒントにもなるかもしれない。
なんと回収された岩石の中から微生物が見つかっているのだ。過去にもマントルで生命の痕跡が発見されたことはある。
だが、そんな地下奥深くの極限環境で微生物たちはどうやって生きているのだろうか?
今回の分析では、微生物がかんらん石と海水との化学反応によって作られる水素をエネルギー源にしているらしいことが分かっている。
こうした微生物は、深海底で織りなされる海洋生態系の限界を明らかにし、その起源について理解を深めるヒントになるばかりか、地球外生命についても知見を得られる可能性があるとのこと。
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顕微鏡で見たマントルの岩石/Credit: Johan Lissenberg
研究チームがとりわけ興味を示しているのは、「ニッケル」の役割だ。極限環境の微生物が水素を利用できるのは「ヒドロゲナーゼ酵素」のおかげだが、ニッケルはこの酵素の必須元素だ。
研究チームは今後も岩石サンプルの分析を続ける予定で、そこからの新発見がさまざまな科学分野に波及することを期待している。
今回のサンプルが採取されたアトランティス山塊は、地殻とマントルの境界で起きているプロセスや、海洋岩石圏の形成を理解するための重要な場所であり続けるだろう。
そこからもたらされる知見は、火星のほか、水と岩石の相互作用によって形作られる惑星についてもうかがい知る手がかりになるそうだ。
この研究は『Science』(2024年8月8日付)に掲載された。
References:Scientists Drill Record-Breaking Depth into Earth's Mantle, Uncovering Clues to Life's Origins / written by hiroching / edited by / parumo
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