2026年6月、スイス陸軍の訓練場を舞台に、欧州最大規模の軍用ロボット競技会「ELROB 2026」が開催される。
ヨーロッパ各国とカナダから20チームが参加し、無人地上車両とドローンが偵察・物資輸送・捜索救助の3種目で性能を競う。
広大な自然地形のみを舞台とした実戦さながらの条件下で、ロボットの機動性と自律性はどこまで通用するのか。世界最難関と呼ばれる試験の行方が注目される。
スイス陸軍の訓練場が世界の試験場になる
2026年6月15日から19日にかけて、スイス中部ベルン州の都市トゥーンにある陸軍訓練場で、軍用ロボットの野外競技会「ELROB(European Land Robot Trial=ヨーロッパ陸上ロボット試験)2026」が開催される。
主催はスイス連邦国防調達庁「Armasuisse」とスイス陸軍で、欧州各国とカナダから20チームが参加する。参加枠はすでに2026年1月末時点で満席となっており、過去最多の参加数を記録した。
ELROBは2006年からドイツの応用研究機関「フラウンホーファーFKIE」のフランク・E・シュナイダー博士が中心となって2年ごとに開催してきた競技会で、軍用・救助用ロボットの実力を自然環境の中で試す場として、世界で最も権威ある野外試験の一つとされている。
ドイツ・オーストリア・スイスの3か国が2年ごとにホスト国を交代する形で運営されており、トゥーンでの開催は2012年以来14年ぶりとなる。
偵察・輸送・救助の3種目でロボットの限界を試す
競技の種目は「偵察」「輸送(ミュール)」「捜索救助(SAR)」の3つだ。参加チームはそれぞれ無人地上車両(UGV)と無人航空機(UAV、いわゆるドローン)を駆使して、4日間にわたりこれらの課題に挑む。
なかでも注目を集めているのが輸送種目「ミュール」だ。
ミュールとは荷役用のラバを意味する英語で、ロボットが人間の代わりに装備や物資を自律的に運ぶ課題を指す。今年は20チーム中、約12チームがこの種目にエントリーしている。
シュナイダー博士は「人員や装備の輸送は軍事作戦の不可欠な要素だ。敵対的な環境下では危険で過酷な任務になるため、無人地上車両の投入が増えている」と、その重要性を説明する。
シナリオは非公開、自然地形だけが手がかり
今回の競技では、シナリオの詳細は一切公表されていない。
主催チームが唯一明かしているのは、都市環境が除外されているという点だけだ。
建物や構造物の内部を探索するような課題はなく、各チームは開けた自然の地形を前提に、まったく新しい戦略と技術的解決策を組み立てなければならない。
会場となるトゥーン訓練場は、面積約6.5km²を誇るスイス最大かつ最古の陸軍訓練場だ。
アルプス山脈の北麓に位置するこの訓練場は起伏に富んだ地形が広がり、ロボットの機動性・センシング能力・自律性を極限まで試すのに適した環境を備えている。
訓練場の中心には仮設のテント村が設営され、各チームは試験開始前にここでロボットのプログラム調整や動作確認を24時間体制で行う。
シュナイダー博士は、「ロボティクスへの要求が急速に高まっている。だからこそ、シナリオを絶えず再設計することでそれに応えている」と説明した。
軍・研究者・産業界が一堂に集う国際試験
審査はデンマーク出身のロボット工学者で、カリフォルニア大学サンディエゴ校ジェイコブス工学部コンピュータサイエンス教授のヘンリク・I・クリステンセン教授が率いる国際審査員団が担当する。
評価基準は性能・適応性・信頼性・実世界への適用可能性の4点だ。
参加チームはポーランド、ドイツ、オランダ、オーストリア、スイス、チェコ共和国などの欧州諸国に加え、カナダからも2チームが参加する。
シュナイダー博士によれば、過去のイベントで実績を積んだチームと初参加のチームが面白い形で混在しており、今年は例年以上に興味深い顔ぶれだという。
スイス連邦国防調達庁Armasuisseの科学技術部門長のトーマス・ロタッハー博士は、国境を越えた協力が経験と知識の貴重な交換につながると述べ、ELROBを産業界・大学・国内外のパートナー間の安全保障関連ロボット研究を強化する絶好の機会と位置づけている。
さて今回はどの国のどのチームが最も高く評価されるのか、結果が楽しみである。
References: ELROB 2026: Military robotics put to the test[https://www.fkie.fraunhofer.de/en/press-releases/2026-elrob.html]











