タイタニック号生存者の救命胴衣がオークションに出品
Instagram@<a href="https://www.instagram.com/titanic_memorabilia/?utm_source=ig_embed&amp;ig_rid=d2e1c7c3-39f0-4b4a-b18f-706fd37837ea#" target="_blank">titanic_memorabilia</a>

タイタニック号生存者の救命胴衣がオークションに出品の画像はこちら >>

 悲劇の豪華客船タイタニック号が氷山に衝突し、海に沈んだのは1912年4月14日~15日にかけての深夜のことだった。

 それから114年が過ぎた2026年4月18日、タイタニック号の生存者が着用していた救命胴衣が、オークションに出品されることになった。

 この救命胴衣の表面には、救命ボートで生還した人たちの署名が、今もはっきりと残っている。

 犠牲者の遺品ではなく、生存者がその後も亡くなるまで、ずっと手元に置いていた品がオークションに出されるのはまれだという。

 気になる落札価格は、日本円で5,000~7,000万円になるのではないかと予想されているそうだ。

救命ボートで避難した乗客の救命胴衣

 この救命胴衣は、タイタニック号の一等客室に乗船していたローラ・メイベル・フランカテッリが着用していたものである。

 本人は「メイベル」と呼ばれることを好んでいたそうなので、ここではメイベルと呼ぶことにしよう。

 まずはその救命胴衣がどんなものか、じっくりと見てもらいたい。114年という時を超え、今もその表面にはタイタニックの生還者たちが書いた署名が残っている。

[画像を見る]

 事故当時、メイベルはコスモ・ダフ=ゴードン卿の妻でファッションデザイナーのレディ・ダフ=ゴードンの秘書兼世話係として、この船旅に同行していた。

 タイタニック号が氷山と衝突したのは、彼女たちがちょうど寝る支度をしていたところだったという。大きな衝撃が走り、船の中には水が入り込んで来たのだ。

 イギリスの王立グリニッジ博物館所蔵の彼女の手紙には、その時の様子が生々しく綴られている。

男の人が私のところへやって来て、救命胴衣を着せてくれました。彼は「ただの予防措置だから心配するな」と言っていました。



上甲板に出ると、右舷側で救命ボートが下ろされていました。その時、私は海面が昼間よりも近くに迫っていることに気づき、ダフ・ゴードン卿に「沈んでいます」と声をかけました。

すると卿は、「バカなことを言うな、さっさとここを離れろ」と言ったのです

 救命胴衣を着たメイベルとダフ・ゴードン夫妻は、1番ボートに乗って沈みゆくタイタニック号から避難した。

 下の写真は、沈没後に駆けつけた客船カルパチア号に救助された後に撮影された記念写真だ。丸で囲まれているのがメイベルである。

[画像を見る]

コルクが入った100年以上前の救命胴衣

 ともあれ、メイベルはタイタニック号の沈没から生き延び、同じボートで生還した7名の乗船者と共に、この救命胴衣に署名した。

 当時の救命胴衣は、布地の内側にコルクの浮力材を仕込み、肩当てと紐で体に固定する、素朴な構造の救命具だった。

 今回出品されるメイベルの胴衣も、キャンバス地に12個のコルク製浮力材を収めたタイプである。

 製造元の「Fosbery & Co, Rick Street, Limehouse, London」のロゴがステンシルで刻印されているのも、今もはっきりと読み取れる。

 表面に残る筆跡は、メイベルと消防士のチャールズ・ヘンドリクソン氏やジョージ・テイラー氏、水兵のジェームズ・ホースウィル氏など7人の生存者の署名である。

[画像を見る]

持ち主がわかっている救命胴衣は極めて貴重

 タイタニック関連の品がオークション市場に出ることは珍しくないが、生還者本人が着用し、かつ署名まで残るものとなると極めて貴重な「歴史の証人」である。

生存者が着用していた救命胴衣で、現在も残っているものはほんの一握りしかありません。

特に重要なのは、これがこれまでオークションに出た唯一の「生還者の救命胴衣」であるという点です。

犠牲者の救命胴衣は博物館に収蔵されていますが、そもそも数が少なく非常に貴重です。



生還者のもので、誰のものかがはっきりと記録されている救命胴衣は、ほかに3点しか確認されていません。それほどに希少なものなのです

 下は救助に駆けつけた客船カルパチアから撮影された、救命ボートの写真である。メイベルのものと同タイプの救命胴衣を身につけているのがわかると思う。

[画像を見る]

氷山衝突から3時間を待たずに沈没したタイタニック

 ここでタイタニック号の沈没事故についても、さらっとおさらいしておこう。

 事故当時、タイタニック号はイギリスのサウサンプトンを出港し、ニューヨークを目指して大西洋を航行していた。

 これがタイタニック号の処女航海だったのだが、それは出航からわずか4日後に終わりを告げることになる。

 航海中、周囲の船からは氷山があるという警告が複数届いていたが、タイタニックは大きく進路を変えることなく航行を続けていたとされる。

 現地時間で14日23時40分ごろ、タイタニックは北大西洋で氷山と衝突した。損傷は船体の広い範囲に及び、やがて複数の区画に海水が流入する。

 設計上は「区画がいくつか浸水しても沈まない」とされていたが、実際には想定を超える被害が出てしまったのだ。

[画像を見る]

 乗客の避難が始まったが、タイタニックに積んでいた救命ボートの数は、乗員・乗客の全員を収容するには程遠いものだった。

 衝突から約2時間40分後の1912年4月15日午前2時20分ごろ、タイタニックは完全に沈没。乗船していた約2200人のうち、1500人以上が命を落としたとされる。

 オークションを主催するヘンリー・オルドリッジ&サン社のアンドリュー・オルドリッジ氏は、タイタニック関連の品は常に関心を集めると語る。

私はよく、「なぜこの悲劇にこれほど強い関心が集まるのですか?」と尋ねられます。

タイタニックを一言で説明すると、「大きな船が氷山に衝突して沈没し、多くの命が失われた」出来事です。

しかし、私たちが語るのは、あの船に乗っていたすべての男性、女性、子供たちのことです。

スミス船長から、アメリカやカナダで新生活を始めるために旅立った移民の家族まで、一人ひとりに語るべき物語があります。

その物語の中には、2,200もの章があるのです。そして、それらの章は114年後の今、船に残された品々を通して語られているのです

 メイベルの救命胴衣も、そういったタイタニック号の乗船者たちが紡ぐ「物語」のひとつなのだ。

[画像を見る]

生存者が保管していた救命胴衣がオークションに

 メイベルは救助後イギリスに戻ったが、その翌年、スイス出身のマックス・ヘアリングと結婚。アメリカへ移住し、夫と2人でホテルを経営していたそうだ。

 夫の死後は再びイギリスに戻り、1967年6月2日、脳卒中のため87歳で亡くなった。タイタニックから生還した後、半世紀以上を生きたことになる。

 彼女はこの救命胴衣を生涯手元に置いていたが、亡くなった後は甥へと受け継がれ、フランカテッリ家が保管し続けていた。

 だが2007年に一度クリスティーズのオークションに出品され、6万ポンド(現在のレートで約1,850万円)で売却された。

 その後、個人所有を経て、今回再び売りに出されることとなった。今回の落札額は、2007年よりもさらに高額の25万~35万ポンド(約5,350万~7,500万円)になるだろうと予想されている。

この品の価値の中心にあるのは、著名な乗客であるローラ・メイベル・フランカテッリが所有していたという点です。

さらに、彼女が1号ボートの生存者であること、ダフ=ゴードン卿夫妻とのつながりもあります。

こういった複数の要素が重なって、コレクターにとっての価値を高めているのです

[画像を見る]

「億万長者のボート」での生還者

 メイベルが乗った1号ボートは、定員40名に対し、わずか12名しか乗せていなかった。これはその夜、一隻のボートで脱出した人数としては最少だった。

 さらにタイタニックが沈没した後も、海に投げ出された人たちを救助しようとはしなかった。ボートにはかなりの空きがあったにもかかわらず、である。

 そのため、後にダフ=ゴードン卿が乗員に金を渡して買収し、おぼれている人たちを助けに戻らせないようにしたのではないかという疑いがかけられた。

 この救命ボートが「富豪のボート」「億万長者のボート」などと呼ばれるようになった背景には、そんな根拠のない告発があったのた。

 後にタイタニック号沈没事故に関する調査委員会は、この告発には根拠がないと結論づけたが、一度広まった噂が消えることはなかった。

 ダフ=ゴードン卿の疑いは晴れたものの、20年後に亡くなるまで「彼はその恥辱から決して立ち直ることができなかった」と、妻のルーシーは語っていたという。

[動画を見る]

 今回の出品が特別である理由について、オルドリッジ氏はさらにこう付け加えている。

1,500人以上が亡くなった悲劇の中で、これはいわば「生き残った証」なのです。同じオークションで、犠牲者の遺族が所有していた腕時計も出品しています。

タイタニック号の真髄はそこにあるんです。人間のあらゆる感​​情を凝縮していると言えるでしょう。

船に乗り込んだときの喜びや出航の興奮、未来への希望。そして、それが一転して恐怖や悲しみ、つまり正反対の感情へと変わってしまったのですから

 このオークションの結果は、日本時間で18日の夕方には判明するものと思われる。メイベルの「生還の証」には、いったいどのくらいの値がつくのだろうか。

[画像を見る]

References: Titanic survivor life jacket set to fetch staggering price as anniversary nears[https://www.foxnews.com/travel/titanic-survivor-life-jacket-set-fetch-staggering-price-anniversary-nears] / Titanic survivor life jacket set to fetch staggering price during 114th-anniversary of historic sinking[https://nypost.com/2026/04/15/us-news/titanic-survivor-life-jacket-set-to-fetch-staggering-price-during-114-year-anniversary-of-historic-sinking/]

編集部おすすめ