都会の暮らしに適応した野生動物。種を問わず世界中で同様の行動をとっていた
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 世界中で様々な種の野生動物が人間の住む都会の暮らしに適応し、本来持っている警戒心を失い、種を問わず共通の行動をとっていることが最新の研究で判明した。

 ニューヨークのリス、ニューデリーのサル、シドニーの鳥、イギリスのカモメなど、人を恐れなくなり、ゴミを漁ったり食べ物を奪ったり、騒音に合わせた声で鳴くという振る舞いを見せるようになったのだ。

 米カリフォルニア大学などの国際研究チームは、この変化が生存戦略である一方で、生き残るための「行動の選択肢」を失わせ、将来の予期せぬ環境変化に対して集団全体が脆くなるリスクを指摘している。

この研究成果は『PLOS Biology[https://journals.plos.org/plosbiology/article?id=10.1371/journal.pbio.3003689]』(2026年3月2日付)に掲載された。

世界各地の都市で似たような行動をとる野生動物たち

 インドのニューデリーに生息する野生のサルは、人間の皿から直接食べ物を奪っていく。

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 アメリカのニューヨークではリスが人間の食べ物を奪おうとしたり[https://www.youtube.com/watch?v=Nvff5kIL7B4]、ゴミ箱を漁る。

 オーストラリアのシドニーではオーストラリアシロトキがゴミ箱を漁り、「ゴミバケツ・ニワトリ[https://youtu.be/9PKvkNnkxmk?si=b-jnrEJcWzxnyBcr]」という不名誉な呼び名で知られている。

 カラパイアの読者に最もおなじみなのは「ゴミパンダ(Trash Panda)」と呼ばれている北米原産のアライグマだろう。

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 本来、野生動物には見られない、人を恐れぬ大胆な行動は、今や世界中の都市部で共通して確認されている。

 アメリカ、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)のダニエル・T・ブラムスタイン教授らの最新研究によると、都市環境で暮らす動物たちが、種の違いに関わらず驚くほど似通った行動パターンを示すことが明らかとなった。

 科学者たちはこれを「行動の均質化」と呼んでいる。

 野生動物の都市化は、種の違った動物たちの振る舞いまでもが画一化していくプロセスを伴っているのである。

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人間の支配する都市での暮らしを選択した進化

 なぜ住む場所も種類も異なる動物たちが、同じような行動をとるようになるのか。

 それは、世界中の都市が「人間による支配」という共通の特徴を持っているからである。

 都市は周囲の郊外よりも気温が高く(ヒートアイランド現象)、夜間も光で汚染され、常に交通騒音に満ちている。

 こうした環境において、ニューヨークのリスやイギリス沿岸都市のカモメなどは、人間が安全な食物の供給源であることを学習した。

 人間が危害を加えないと認識した個体は、本来持っている警戒心を失い、人間を恐れない性質を持つようになる。

 都市は「進化」の原動力としても機能しており、こうした大胆な性質を持つ個体が優先的に生き残り、その形質(遺伝的な特徴)を次世代に受け継いでいく。

 これを科学的には環境による選択と呼ぶ。

 また、交通騒音にかき消されないよう、都市の鳥たちはより高い周波数(高音)や大きな声で鳴くようになり、鳴き声のパターンまでもが世界中で似通ってきている。

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都市で生きるために仲間を真似て学習

 動物たちは、新しい環境で生き抜くために互いの行動を模倣し、学習している。

 シドニーのキバタンはゴミ箱の開け方を学習し、カナダのトロントではアライグマが人間による動物よけのゴミ箱の設計を上回る知恵を見せている。

 都市のビルや橋はコウモリや鳥たちの住処となるが、その代償として、彼らは自然界での営巣地の利用方法を学ばなくなる。

田 舎の動物は多様な場所で多様な餌を探すが、都市の動物はゴミ箱やゴミ捨て場など、確実に餌が見つかる場所に集中する。

 結果として彼らは不健康な食事を摂ることになり、行動のバリエーションも極端に制限される。

 これは「行動の多様性」の喪失を意味しており、人間が自然への影響力を強めているあらゆる場所で起きている現象である。

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行動の多様性が失われることで全滅のリスクが高まる

 行動の多様性が失われることは、生物学的に深刻な懸念材料である。

 個体群における行動の変異は、遺伝的な変異を反映していることが多い。

 遺伝的なバリエーションが豊富であることは、将来の予期せぬ環境変化に対応するための「保険」の役割を果たす。

 例えば、特定の時期に繁殖する性質に偏りすぎると、ヒートアイランド現象による気温変化などのショックが起きた際、集団全体が対応できず全滅する恐れがある。

 さらに、動物が人間に慣れすぎることで、交通事故や咬傷被害、財産の損害、そして人獣共通感染症の伝播といった新たな対立が生じる。

 また、オーストラリアのキミミミツスイ(Regent Honeyeater)のように、個体数の減少で仲間から「正しい求愛の歌」を学ぶ機会を失い、繁殖に失敗して絶滅が加速する例も報告されている。

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 地域の渡りルートや独自の採餌技術といった「社会的に学習された知恵」が消え去ることは、都市の動物を再び野生に戻すことを困難にする。

 今回の研究は、野生動物の保全や都市計画において、動物たちが本来の多様な振る舞いを維持できる環境を整えることの重要性を強く示したものだ。

References: Behavioral convergence under urbanization: An overlooked dimension of biotic homogenization[https://journals.plos.org/plosbiology/article?id=10.1371/journal.pbio.3003689] / City animals act in the same brazen ways around the world[https://theconversation.com/city-animals-act-in-the-same-brazen-ways-around-the-world-279977]

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