約3000年前の古代ヨーロッパにおいて、死者の骨は社会的な価値のあるものだった。
アイルランドを中心とする国際研究チームが中央ヨーロッパの集落跡を調査したところ、当時の人々は墓から遺骨を掘り起こし、頭蓋骨を家に飾ったり、贈り物として利用していたことが明らかとなった。
古代ヨーロッパ人は、祖先の骨を日常的に共有し、社会の結束を固めるために活用していたのだ。
この研究成果は『Journal of Field Archaeology[https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/00934690.2026.2641968]』(2026年3月24日付)に掲載された。
古代ヨーロッパ人にとって遺骨は社会的価値のあるものだった
今から約3600年前から2700年前にかけての青銅器時代から鉄器時代初期、中央ヨーロッパのパンノニア平原では、遺骨を通じて死者との交流が行われていた。
アイルランド国立大学コーク校をはじめとする国際研究チームが、現在のセルビアやルーマニア、ハンガリーにあたる、この地域の遺跡を調査した結果、当時の人々は一度埋葬した遺体を再び掘り起こし、その骨をさまざまな目的で再利用していたことが判明した。
遺骨はコミュニティの絆を深めるための大切な道具や、信頼の証となる社会的通貨のように扱われていたのだ。
家族の頭蓋骨を加工して自宅に飾る習慣
研究チームが敵の侵入を防ぐために周囲を深い溝や土手で囲んだ大規模な村の要塞集落の跡地を詳しく分析したところ、家の中から加工された人骨が次々と見つかった。
その中には、遺骨から脳を取り出すために一度割った頭蓋骨を丁寧につなぎ合わせ、住居の中に飾っていたと思われるものが複数存在した。
紐で吊るすための穴が開けられており、日常的に人目に触れる場所に置かれていたことがわかる。
これらの遺骨には何度も手で触れられたことによる独特の摩耗や、外気にさらされて風化した跡が残っており、長い間、生者の生活空間に存在し続けていたことを物語っている。
遺骨はコミュニティ内を巡る贈り物の役割を果たした
死者の骨は家の中に飾られるだけでなく、地域の人々の間でやり取りされることもあった。
現在のクロアチアにあるクリサ遺跡の調査では、墓から取り出された骨が体の部位ごとに分類され、村の中で受け渡されていた形跡が見つかっている。
研究チームによると、こうした人骨のやり取りは、地域社会のまとまりを維持するための重要な役割を担っていたという。
祖先の骨を共有することは、お互いのアイデンティティを確認し合い、グループとしての連帯感を強めるための手段だっのだ。
最終的にこれらの骨は、役割を終えると再び一箇所にまとめられ、新しい場所へ丁寧に埋め戻されていた。
祖先と共生することで社会の結束を深めていた
今回の調査では、火葬や土葬、さらには屋外に遺体を置いて自然に骨にする空葬(エクスカネーション)など、多様な葬り方が確認された。
しかし、どの方法においても共通していたのは、生者と死者の境界線が驚くほど近いことだった。
集落を囲む溝の中から見つかった骨は、祖先がコミュニティを外敵から守る盾であることを象徴していたと考えられる。
古代の人々にとって、死者の骨を身近に置き、それを共有することは、過去から続く家族や仲間とのつながりを未来へ繋いでいくための、ごく自然で誠実な生活の一部だったと考えられる。
References: Encountering the Unburied Dead: Developments in Mortuary Practice in the Landscape of the Late Bronze Age Megaforts of the Carpathian Basin[https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/00934690.2026.2641968] / Archaeologists Discovered How Ancient Humans Used the Bones of Their Dead[https://www.popularmechanics.com/science/archaeology/a71028716/human-bones-bronze-age/]











