AIが生成したメールやSNSなどのメッセージは、知らなければ送信者への印象は人間が書いた場合と変わらないが、AIの使用が判明した途端、送信者の誠実さや信頼性への評価が大きく下がることが明らかになった。
またほとんどの人は、知らされない限りAIによるものだと気が付かないという。
これは、米ミシガン大学と米デューク大学の研究チームが、合計1300人以上のアメリカ人を対象に時期を変えて2回実施した実験で明らかになったものだ。
この研究成果は『Computers in Human Behavior[https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0747563226000269]』誌(2026年2月16日付)に掲載された。
AIが書いたメッセージは気付かれるのか
現在、多くの人の元にメールやSNS投稿、個人的な文章など、毎日数多くのメッセージが届いている。
それらが人間ではなくAIによって書かれていたとしたら、受け取った側は気付くことができるのだろうか。
米ミシガン大学のアンドラス・モルナー心理学助教授と米デューク大学のジアチー・ジュ氏は、ChatGPTやClaude(クロード)、Gemini(ジェミニ)といった生成AIが急速に普及するなかで、実験で検証した。
2024年11月に647人、翌2025年に654人、合計1301人のアメリカ人成人を対象に時期を変えて2回のオンライン実験を行ったところ、知らされない限り、ほとんどの人はAIが書いたメッセージだと気付かないことが明らかとなった。
AIだと知らなければ人間が書いたものと同じ評価
実験では、参加者に「友人からの感謝メール」「ベビーシッターの求職メール」「同僚からのプロジェクトへのフィードバック」といった架空のメッセージを読んでもらった。
参加者は4つのグループに分けられ、それぞれ異なる情報を与えられた。
「送信者が自分で書いた」と教えられたグループ、「AIが生成した」と教えられたグループ、「どちらか不明」と教えられたグループ、そして何も知らされなかったグループだ。
メッセージを読み終えた後、参加者は送信者を「親しみやすさ」「誠実さ」「信頼性」「本人らしさ」などの観点で評価した。
何も知らされなかったグループは、AIの書いたメッセージに対し、人間が書いたと教えられたグループとほぼ同じ評価を下した。
AIが書いたと明かされない限り、受信者は人間からのメッセージと区別できなかったのだ。
「どちらか不明」と教えられたグループも、AI開示グループよりも人間ライティンググループに近い評価を示した。
AIだと知った途端に評価が落ちる
一方、AIが使われたと明かされた場合の反応はまったく異なった。
送信者への評価は大きく下がり、参加者が使った言葉も「怠惰」「不誠実」「努力が感じられない」といったネガティブなものが増えた。
人間が書いたと知らされた場合に「誠実」「感謝が伝わる」「思いやりがある」と表現されたのとは対照的だ。
なぜこれほど評価が変わるのか。
研究チームは、メッセージを書く「手間」に対するものだと考えている。
心のこもったメッセージを書くには時間と精神的エネルギー、相手を思いやる気持ちが必要で、その努力が「この人は自分のために真剣に向き合ってくれた」という信頼の証になる。
AIに書かせることはその努力を省くことを意味し、受信者はそこに誠実さの欠如を感じ取る。場合によっては「裏切り」とすら受け取られかねない。
7カ月後に実施した2回目の実験でも結果は変わらなかった。
生成AIへの社会的認知が高まれば人々の疑念も増すのではないかと仮説を立て、夏のインターンシップに関するSNS投稿、夕食のキャンセルを謝罪するテキストメッセージ、出会い系サービスのプロフィールなど、より多様なシナリオを加えて検証した。
しかし7カ月が経過しても、人々がAI生成メッセージに気付く可能性は高まっていなかった。
黙って使えば得をする。AIにより生じる不公平
この研究で明らかになったことは、AIを使って書いたと告げた人は評価を下げる一方で、黙ったままでいれば、その事実に気が付かれず、評価も下がらないことだ。
自身が頻繁に生成AIを利用している人でさえ、他者のメッセージのAI使用を疑う傾向は低かった。
自分がAIをよく使うからといって、他人のメッセージへの疑いが増すわけではなかったのだ。
この現実はコミュニケーションの公平性に関わる問題をはらんでいる。
AIを使いたくない、あるいは使えない立場の人が不利になる一方で、AI活用者は正直に告げない限り、より洗練された書き手として得をし続けることができる。
モルナー助教授はこの状況について、「「AIを使ったと正直に言えば評価が下がる。黙っていれば誰も気付かない。だったら誰が正直に言うだろうか?」と話す。
今後の課題は、どのような状況が人々のAI使用への疑念を引き起こすかの解明だという。
日常的な会話ではAI使用を疑う人は少ないが、採用面接や成績評価のような高リスクな場面では、相手のメッセージがAIで書かれていないかどうかへの警戒心が高まるのかどうか。
また、過去にAIで書かれたメッセージで不快な経験をした人は、より敏感になるのかどうかを次の研究で検証する予定だ。
これは日本を含む他国での調査も視野に入れているという。
References: Blissful (A)Ignorance: People rarely notice AI-written messages in everyday communication[https://michigantoday.umich.edu/2026/03/26/blissful-aignorance-people-rarely-notice-ai-written-messages-in-everyday-communication/] / People remain “blissfully ignorant” of AI use in everyday messages, new research shows[https://www.psypost.org/people-remain-blissfully-ignorant-of-ai-use-in-everyday-messages-new-research-shows/] / Sciencedirect[https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0747563226000269]











