我が子を思う気持ちは恐竜も同じだった。7500万年前の歯の化石が示す親子の絆
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 我が子には一番栄養のあるものを食べさせたい。その親心は、7500万年前の恐竜も同じだったことが化石の研究で明らかになった。

 米オハイオ州立大学の研究チームがモンタナ州で出土したハドロサウルス科の草食恐竜「マイアサウラ」の歯の化石を詳しく調べたところ、幼体と成体では歯の摩耗パターンがまったく異なっていた。

 これは、親は硬くて栄養の乏しい植物を食べながら、子どもには柔らかく栄養価の高い食べ物を優先して与えていたことがうかがえる。

 鳥類に特有と考えられてきた育児行動の起源が、はるか恐竜の時代にまでさかのぼる可能性を示す発見だ。

 この研究成果は『Palaeogeography, Palaeoclimatology, Palaeoecology[https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0031018226001707]』誌(2026年5月15日付)に掲載された

白亜紀に大きな群れで子育てをしていた草食恐竜

 今から約7500万年前の白亜紀後期、現在のアメリカ・モンタナ州にあたる地域に、マイアサウラ(Maiasaura peeblesorum)という大型の草食恐竜が生息していた。

 白亜紀は今から約1億4500万年前から6600万年前までの地質時代で、ティラノサウルスやトリケラトプスが生きた恐竜全盛期の終盤にあたる。

 1979年に古生物学者のジャック・ホーナー氏とロバート・マケラ氏によって命名された種で、子育てをする恐竜として古生物学の世界で長く研究されてきた。

 マイアサウラは体長約9mで、ハドロサウルス科(Hadrosauridae)に分類される草食恐竜だ。

 口先がカモのくちばしに似た平たい形をしていることからカモノハシ竜とも呼ばれ、白亜紀後期に北米大陸で大きく栄えたグループの一員でもある。

 マイアサウラという名前はラテン語で「良き母トカゲ」を意味する。モンタナ州の発掘現場では、巣の跡や卵の化石、さまざまな成長段階の個体の骨が一か所にまとまって発見されており、孵化した後も親が子どもの世話をしていた証拠として長く注目されてきた。

 群れで生活し、子育てをする恐竜として、古生物学の世界でも特に重要な研究対象となっている種だ。

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幼体と成体で歯の摩耗パターンがまったく異なっていた

 オハイオ州立大学で進化・生態・生物学を研究するジョン・ハンター准教授らの研究チームは、マイアサウラの化石歯の表面に残された微細な摩耗痕に着目した。

 歯の表面には食べ物を噛む際についた傷や削れた跡が残り、何を食べていたかによってその形や深さが異なる。

 化石の歯を詳しく観察することで、その動物が生前に何を食べていたかを推定できるのだ。

 分析の結果、幼体の歯には果実など柔らかく栄養価の高い食べ物を食べたときに生じる、押しつぶすような摩耗が多く確認された。

 一方、成体の歯には草や木の葉など繊維質の多い硬い植物を大量に食べたときに現れる、切り裂くような摩耗が目立った。

 現代の動物で言い換えると、成体の摩耗パターンは馬や牛、アンテロープのような草食動物の歯に見られるものと一致する。

 幼体の摩耗パターンは、柔らかい植物を好んで食べるバクという動物に近かった。

 バクは中南米や東南アジアに生息する大型の草食哺乳類で、長く伸びた鼻が特徴的な動物だ。

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親は子どもに栄養の高い食べ物を優先して与えていた

 この摩耗パターンの違いが示すのは、個体ごとの好みの差ではない。

 研究チームは、成体が硬くて繊維質の多い植物を食べながら、幼体には果実など柔らかく栄養価の高い食べ物を優先的に与えていた可能性があると結論づけた。

 親が自分の食事とは別に、子どもに適した食べ物を選んで持ち帰っていたとみられる。

 栄養価の高い食べ物を与えられた幼体は、生まれてから最初の1年間に特に急速に成長した可能性があるという。

 孵化直後の幼体は自力で動き回ることができず、親からの給餌に依存していたと考えられており、この時期にしっかり栄養を摂れるかどうかが生存を左右する重要な要素だったはずだ。

 また、研究チームはほかの可能性も検討している。

 親が一度飲み込んだ食べ物を再び口から出して幼体に与える、吐き戻しによる給餌だ。

 現代のペリカンやハトなど多くの鳥類で見られるこの行動が、恐竜の時代にも存在していた可能性は否定できない。

 幼体が自力で巣を離れて柔らかい植物を探していたという解釈も考えられるが、孵化直後の幼体が巣の外で自力採食できたとは考えにくく、研究チームはこの可能性は低いと判断している。

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鳥がヒナに餌を運ぶ育児本能は恐竜の時代から続いていた

 現代の鳥類では、孵化後しばらく巣で過ごす雛に親が食べ物を運ぶ行動が広く見られる。

 ハンター准教授は「ヒナに餌を与えようとする鳥の衝動は非常に古い行動だ。今回の研究が示すのは、その起源が鳥類の誕生よりもはるか以前、恐竜の起源にまでさかのぼる可能性があるということだ」と語っている。

 現在、鳥類は恐竜の子孫であることが広く認められている。

 親が子どもの栄養を気にかけて食べ物を選ぶという行動は、鳥類が空を飛ぶようになるよりもずっと前から、恐竜の系統の中にすでに根づいていた可能性がある。

 7500万年前の恐竜が歯の摩耗に刻み込んだ小さな痕跡は、我が子を思う親心がいかに古くから生き物の中に受け継がれてきたかを物語っている。

 今後は恐竜の胚や孵化直後の個体の歯の化石についても同様の分析を進め、恐竜の子育て行動の全体像をさらに明らかにしていく予定だという。

まとめ

この研究でわかったこと

  • 7500万年前のカモノハシ竜の仲間マイアサウラは、幼体と成体で食べているものが違った
  • 親は硬い植物を食べながら、子どもには柔らかく栄養価の高い食べ物を与えていたとみられる
  • 我が子に良いものを食べさせる育児行動は、鳥類が誕生するより前から存在していた可能性がある

まだわかっていないこと

  • 親が食べ物を選んで持ち帰っていたのか、吐き戻して与えていたのかはまだ確認されていない
  • 恐竜の胚や孵化直後の個体の歯の化石でも同様の分析を行い、仮説をさらに検証する必要がある

References: Dinosaur dental fossils reveal bird-like parental care bonds[https://phys.org/news/2026-05-dinosaur-dental-fossils-reveal-bird.html#google_vignette] / Dinosaur Dental Fossils Uncover Evidence of Bird-Like Parental Care Bonds[https://bioengineer.org/dinosaur-dental-fossils-uncover-evidence-of-bird-like-parental-care-bonds/] / DOI: 10.1016/j.palaeo.2026.113707[https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0031018226001707]

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