肉食哺乳類「ヒアエノドン」の新種の1400万年前の化石をパキスタンで発見

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 日本列島がユーラシア大陸から切り離され、日本海が現在の形に落ち着いた時代、南アジアにはこれまで知られていなかった肉食哺乳類が生息していたことが明らかとなった。 

 米ハリスバーグ科学技術大学などの国際共同研究チームによると、ヒアエノドンの仲間、3種の化石が、パキスタンの1400万年前の地層から発見された。

 そのうちの1種が、これまで、アフリカ大陸でしか発見されていなかった、ヒアエノドン目ヒアイナイロウロス科メタプテロドン属の新種だったという。

 現代のライオン、ヒョウ、オオカミが地上を支配するはるか以前に繁栄した肉食獣たちの知られざる歴史が明らかになりつつある。

新生代に繁栄していた絶滅肉食哺乳類「ヒアエノドン目」

 約1500万年前、日本列島はユーラシア大陸から分離し、日本海が現在の形に落ち着いた。

 その直後にあたる1400万年前、南アジアでは、現代とはまったく異なる肉食獣の一群が大地を闊歩したことが新たな研究で明らかになった。

 カラパイアでも2025年2月に紹介した「バステトドン」と同じグループ、ヒアエノドン目(Hyaenodonta)に属する動物たちだ。

 ヒアエノドン目は、ネコ科のライオンやヒョウ、イヌ科のオオカミ、クマ科が属する「食肉目」とはまったく異なる系統に位置する絶滅した肉食哺乳類のグループで、「肉歯目」とも呼ばれている。

 現代のヒョウほどの大きさを持ち、進化を始めたばかりの霊長類も捕食していたと考えられている。

 恐竜が絶滅した後の新生代に栄え、食肉目が多様化して勢力を広げるにつれ、徐々に姿を消していった。

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パキスタンで3種のヒアエノドン目を同定 

 パキスタン、インド、ネパール、ブータンにまたがるヒマラヤ山脈南麓に連なるシワリク丘陵は、ウシ類やサイ類、ウマ類、ゾウ類の祖先など、多様な哺乳類の化石を大量に産出することで世界的に知られている。

 米ペンシルベニア州ハリスバーグ科学技術大学のスティーブン・ジャシンスキー教授を中心とする国際共同研究チームは、シワリク地層の中でも約1400万年前から950万年前にあたる堆積層から採集された歯の化石を詳細に分析した。

 分析の結果、研究チームは3種のヒアエノドン目の動物を同定した。

 1種目は成体になると体重が最大500kgとホッキョクグマサイズのヒアイナイロウロス科のメギストテリウム属、またはヒアイナイロウロス属と暫定的に同定されたが、発見された化石が幼獣の乳歯だったため確実な種の特定には至っていない。

 乳歯は成体の歯と形態が大きく異なり、分類の根拠として使いにくいためだ。

 2種目はヒアエノドン科ヒアエノドン属で、体重約30kg程度と、ハイイロオオカミの小型個体やヒョウに近い大きさだった。

 北アメリカ、ヨーロッパ、アジアの広い範囲に分布していたことが知られているが、シワリク地域からの産出は今回が初めてだ。

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そのうちの1種が新種のヒアエノドン目と判明

 3種目は、これまでアフリカ大陸産の化石からしか知られていなかったヒアエノドン目ヒアイナイロウロス科メタプテロドン属[https://en.wikipedia.org/wiki/Metapterodon]の歯であることがわかった。

 既知の標本とは明確に異なる特徴を持つことから、新種として登録され「メタプテロドン・アナリ(Metapterodon anari)」と命名された。

 体重は約15kgで、大型のアカギツネやコヨーテに近い大きさだ。

 パキスタンでの発見は、メタプテロドン属が中新世(約2,303万年前から約533万年前まで)にアフリカ大陸の外へ移動していたことを初めて示す証拠になる。

 バステトドン目は、3000万年前のアフリカから、1500万年以上の時を経てインド亜大陸の手前まで到達していたことになる。

 さらにこの新種は、現在までに発表されたヒアエノドン目の化石の中でも最も新しい産出記録の一つになる可能性があり、ヒアエノドン目の歴史の「最終章」に近い時代を生きた個体を代表している。

 ジャシンスキー教授はこう語る。

メタプテロドン・アナリは、近縁種の中での系統的な位置づけという意味でも、時代的な位置づけという意味でも極めて重要です

メタプテロドン属の最末期を生きた存在であり、陸上の主要捕食者として台頭しつつあった食肉目動物との競争があったと考えられる時代を知る手がかりになります

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肉食に特化しすぎたことが、滅亡を招いた可能性

 今回発見された3種はいずれも、食性の大部分を肉が占める超肉食性の特徴を歯の形態から示していた。

 超肉食性とは食性の70~100%を動物の肉が占める状態で、チーターやタスマニアデビルがその現生の例にあたる。

 獲物が豊富な環境では大きな強みになるが、環境が変化したときに食性を切り替える余地がほとんどない。

 中新世には地球全体の寒冷化が進み、植生と動物相が大きく変化した。

 ネコ科やイヌ科などの食肉目動物はより柔軟な食性と多様な戦略で変化に対応し、生態系での存在感を着実に高めていった。

 同じ獲物をめぐって競合する2つのグループが長期的に共存できず、より適応力の高い側が生き残る現象を、生態学では「競争的排除」と呼ぶ。

 肉食への徹底した特化が、皮肉にもヒアエノドン目を競争的排除の犠牲にした可能性があるという。

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中新世の南アジアの生態系を知る手掛かりに

 今回の発見はヒアエノドン目の分布と移動の歴史を更新するだけでなく、中新世の南アジアがどのような生態系だったかを知る重要な記録になる。

 アフリカとユーラシアの間で動物の移動が活発に行われていたこと、中国など近隣地域からの移動の可能性も示唆されており、当時の大陸間のつながりを読み解く手がかりにもなる。

まとめ

この研究でわかったこと

  • 約1400万年前のパキスタンに、アフリカ大陸でしか見つかっていなかった肉食獣の新種が生息していた
  • 新種メタプテロドン・アナリは、絶滅した肉食獣グループ「ヒアエノドン目」の最末期を生きた動物の一つだった
  • ヒアエノドン目は肉食に特化しすぎたため、より柔軟な食肉目との競争に敗れ絶滅した可能性がある

まだわかっていないこと

  • 発見された他の2種のヒアエノドン目の乳歯化石は、メギストテリウム属かヒアイナイロウロス属か特定できていない
  • ヒアエノドン目がアフリカから南アジアへどのルートで移動したかは不明だ

References: Hyaenodonta from the Middle to Late Miocene deposits of the Siwaliks of Pakistan with a brief account of Indian subcontinent hyaenodonts[https://link.springer.com/article/10.1007/s12542-025-00766-5] / HU Professor Helps Identify New Hyaenodont Species in Study of South Asia’s Fossil Predators[https://www.harrisburgu.edu/news/2026-05-27-new-species-carnivorous-mammals/]

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