30代後半以上の音楽ファンには馴染み深いですが、若いリスナーの皆さんにはこの東京の街の名が付いた音楽ジャンルがどのようなものか知らない方も多いことでしょう。1990年代に文字通り渋谷を発信地としてブームとなった”渋谷系”。
当時、さまざまなジャンルの要素を意欲的に取り込んだ、オルタナティブな音楽を繰り広げるバンド/アーティストが登場し、渋谷にはその情報を発信する数多くのCD/レコードショップが存在。アーティストもリスナーも貪欲に音楽を楽しむ、世界的にも類稀なムーブメントとなりました。2017年は当時その中心的な存在だったアーティストが新作をリリースし、さらにフジロックにも挙って出演するとあって、改めて注目を浴びています。今回はフジロックに出演する5組を紹介します。


たゆまない歌心とアーティスト精神
小沢健二「流動体について」
出典元:(YouTube:UNIVERSAL MUSIC JAPAN)

この人がMステ出演時、公式発表前にも関わらずフジロック出演を口にしまったことで、今年のフジロックにおける”渋谷系”への再注目が取り沙汰されるようになったと言っていいでしょう。2月に突如としてリリースされた「流動体について」は耳障りのよいメロディと思わず口ずさんでしまう歌詞にそのたゆまない歌心を感じさせます。
また、その言動や活動には「渋谷系の王子様」と言われた当時から変わらぬ、何者にも侵されない強いアーティスト精神がにじみだすかのようです。日本の音楽史にこの人あり、という存在感です。


日本語詞とサウンドの構築美に酔いしれる
Cornelius「いつか / どこか "Sometime / Someplace"」
出典元:(YouTube:corneliusofficial)

最近ではMETAFIVEのメンバーとしても精力的な活動が目立った小山田圭吾。2017年は10年半ぶりに自身のプロジェクトCorneliusとしてアルバム「Mellow Waves」をリリースします。渋谷系ムーブメントの最前線で活動をスタートした当初から、海外のオルタナティブミュージックともリンクする音楽性で人気を博しましたが、まさにそのスタイル自体が”渋谷系”を物語っていると言えます。最新作も日本語詞の美しさと、サウンドの構築美を堪能できる内容。
フジロックでのステージも最新の表現方法を見せつけてくれることでしょう。


才能あふれるボーカリストをさらに輝かせる魔法
MONDO GROSSO「ラビリンス」
出典元:(YouTube:avex)

久しぶりのリリースという意味ではMONDO GROSSOの14年ぶりとなるアルバム『何度でも新しく生まれる』は大きな話題を呼びました。”渋谷系”の中でもダンスミュージックの寵児として活躍した大沢伸一によるこのプロジェクトは、これまで数々のシンガーをフィーチャリングした楽曲をリリースしてきましたが、最新作でも満島ひかりや乃木坂46の齋藤飛鳥を起用し、才能あふれるボーカリストをさらに磨き上げるような楽曲の数々が収録されています。


さまざまな音楽性を取り込んだ上質な音世界
SILENT POETS「ANOTHER TRIP from SUN」
出典元:(YouTube:Another Trip)

”渋谷系”は音楽性の幅広さも、その特徴と言えます。1991年に結成され、現在は下田法晴のソロプロジェクトであるSILENT POETSのように、ダブやアンビエント、アコースティックなどさまざまな手法で上質な音世界を繰り広げるバンドが数多く登場しました。また、SILENT POETSをはじめ海外で作品をリリースしているのもトピックスのひとつ。
サウンドトラックやCMにも起用される楽曲は、あらゆるリスナーに受け入れられる魅力があるものです。


”渋谷系”発、永遠のヒップホップ代表
スチャダラパーとEGO-WRAPPIN' 「ミクロボーイとマクロガール」
出典元:(YouTube:SPACE SHOWER MUSIC)

ロックやダンスミュージックだけでなくヒップホップやラップが一般に知れ渡ったのも、”渋谷系”の功績のひとつ。そのきっかけとも言えるのがスチャダラパーと小沢健二による「今夜はブギーバック」です。スチャダラパーは”渋谷系”以降も日本のヒップホップを代表するグループとして、常に最前線で活動をつづけ、2017年はEGO-WRAPPIN'とのコラボ曲を発表。ミュージックビデオはのんが出演する話題作です。


(KKBOXライター:小林“こばーん”朋寛)