スポーツ観戦では、知らない者同士でも心が同期する

2026年5月1日
株式会社 電 通

 株式会社電通(本社:東京都港区、代表取締役 社長執行役員:松本 千里)は、学校法人早稲田大学・学校法人東海大学との共同研究で、脳波や心拍といった生体データの分析などから、スポーツ観戦時に生じる人と人との「感情のシンクロ」の現象を確認し、その特徴を解明しました。当社は、2025年7月にスポーツ未来研究所※を発足させ、長年のスポーツビジネスを通じて培ってきた知見・ノウハウを生かして、未来志向でスポーツの真の価値を探求する取り組みを推進しています。
本研究は、同研究所と両大学との共同研究として、2025年9月に開催された第27回日本感性工学会大会および、2026年2月に開催された日本スポーツマネジメント学会第18回大会において、その成果を発表しました。

 

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202604308378-O2-04xyKa87

 

 今回の研究は、公益財団法人日本サッカー協会の協力の下、SAMURAI BLUE(日本代表)がFIFAワールドカップの出場権を獲得した2025年3月20日のサッカー日本代表戦(埼玉スタジアム2002)を対象に実施しました。スタジアムで観戦中の会場観戦者の脳波や心拍といった生体データを計測するとともに、観戦後の満足度や心理的なつながりについて調査を実施。あわせて、テレビなどの観戦者に対するアスキング調査も行うことで、スポーツ観戦に特有の「ワクワク」「ドキドキ」「ハラハラ」といった感情を定量的に捉え、人の感情が他者と同期・同調する「感情のシンクロ」について解明を試みました。

 

[研究の概要]

研究主体:株式会社電通 スポーツ未来研究所、学校法人早稲田大学 スポーツ&エンターテインメントマネ
     ジメント研究室、学校法人東海大学 スポーツマネジメント戦略研究室

調査環境:2025年3月20日 FIFAワールドカップ アジア最終予選(3次予選) 日本代表vsバーレーン代表
     (埼玉スタジアム2002)

調査対象1:日本人14人(男性8人・女性6人)が計測機器を着用して試合を会場で観戦。脳波や心拍の測
      定、アスキング調査を実施

調査対象2:テレビなどで試合を観戦した日本人817人に、試合当日と2週間後の2回、アスキング調査を実
      施

 

 分析の結果、以下の事象が確認されました。



① 感情は他人でもシンクロする

観戦者の感情は、友人間はもちろん、他人間でも強くシンクロする傾向が見られました。

会場観戦者の生体データを分析したところ、友人間(友人と並んで観戦)でも他人間(他人同士が並んで観戦)でも脳波や心拍は同調し、感情のシンクロが起きていることが分かりました。また、友人と並んで観戦している場合であっても、感情は離れた席の他人とより強く同期する傾向が確認されました。これは、スポーツ観戦における感情反応が、個人的な関係性よりも、スタジアム全体の観客の感情に影響されること、つまり「同じ試合・同じ瞬間を共有している」という状況そのものに強く影響されることを示唆しています。



② 感情が他人とシンクロする体験が、満足感を生む

他者と感情がシンクロする体験は、観戦後の満足感や没入感を高めることが分かりました。

会場観戦者の生体データを分析したところ、周囲の観客と感情が一致している人ほど、試合への集中度が高まり、アスキング調査からは観戦体験全体への満足感が高い傾向が見られました。
感情のシンクロは、単なる盛り上がりにとどまらず、「その場に深く入り込んでいた」という主観的な体験価値を高める要因として機能していることを示唆しています。



③ スポーツ観戦は心理的なつながりを生む

スポーツ観戦は、特に初対面同士の間で心理的なつながりを生み出す体験であることが確認されました。

会場観戦者へのアスキング調査からは、試合観戦の前後で、他者との心理的なつながりに関する指標が高まっており、とりわけ他人間ではその上昇幅が大きい傾向が見られました。この結果は、スポーツ観戦が、会話や交流の有無にかかわらず、人と人との距離感を自然に縮める社会的な体験であることを示しています。


④ ファンとしての自覚・共感が人生の幸福感に影響する

観戦体験を「ファンとして意味のある経験だった」と捉える人ほど、「楽しかった」という一時的な感情にとどまらず、その後の幸福感の評価とも関連していることが分かりました。

テレビ観戦者へのアスキング調査では、観戦体験を「他者と感情を共有できた」と認識した人ほど、「自分はファンであるという自覚」といった評価が高い傾向が見られました。こうした評価は、その後の人生の充実感や幸福感に関する主観的評価とも関連しており、その傾向は一定期間後の調査においても確認されました。これらの結果から、他者と感情を共有できたと認識されるスポーツ観戦は、体験そのものの楽しさに加えて、「自分にとって意味のある経験だった」という認識を通じて、人のウェルビーイングに持続的に影響しうることが示唆されました。

 

[本研究から得られる示唆]

スポーツは人と人との感情をシンクロさせる

スポーツ観戦の価値は、人と人との感情がシンクロする体験そのものにあり、それが友人・他人といった関係性を超えて生じていることが示されました。

また、こうした感情のシンクロを伴う観戦体験は、ファンとしての満足感や、「自分にとって価値のある経験だった」「自分はそのチームや競技のファンである」といった自己認識と結びつき、幸福感やウェルビーイングとも関連していることが確認されました。感情のシンクロは、人と人の関係性の有無を超えて、試合そのものが生み出す共有体験であり、人々のウェルビーイングにつながりうる体験であると考えられます。

 

 当社は、今回の研究成果を通じて、スポーツ観戦の本質的な価値は、スポーツへの感動にとどまらず、人と人との感情的なつながりにあると考えています。
今後は、調査データの分析・検証による研究を深め、「感情のシンクロ」のさらなる解明や、スポーツの価値の探求に取り組んでいきます。また、スタジアムやイベント空間の体験設計、スポンサー企業のコミュニケーション、地域や社会をつなぐ施策などに本知見を活用することで、スポーツを通じた新たな価値の創出を目指します。当社は引き続き、スポーツが持つ社会的な力を科学的に捉え、より多くの人々にとって意味のある体験を広げていく取り組みを推進してまいります。

 

※2025年7月23日ニュースリリース「電通、スポーツの真の価値を探求する スポーツ未来研究所を発足」

https://www.dentsu.co.jp/news/release/2025/0723-010917.html

スポーツ未来研究所

https://www.dentsu.co.jp/labo/sports_future/index.html

                                              以上

 

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dentsu Japan(国内電通グループ)は「スポーツビジネスに関するガイドライン」において、公正な事業活動の推進と、業務遂行を通じてスポーツに関連する事業の健全な発展とより良い社会づくりに寄与・貢献することを規定しています。https://www.dentsu.co.jp/sustainability/sports_business.html

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