1月9日に放送された『人志松本のすべらない話』(フジテレビ系)で、SMAPの中居正広がその日一番面白かった「MVS」(Most Valuable すべらない話)に選出されたことが話題になっている。
実際、中居くんの話はかなり面白く、さすがの話術を見せつけたかたちだが、しかし、奇妙なのはそれを伝えるスポーツ紙の報道だった。
中居くんがMVS をとったのは、ジャニーズ事務所のジャニー喜多川氏の誕生会で、近藤真彦の息子に遭遇した時の失敗談だったのだが、「日刊スポーツ」は〈MVSだと発表されたのは中居の「ジャニーさんの誕生日会」の話だった。〉とだけ。「デイリースポーツ」にいたっては、MVS をとった話のことでなく、中居くんが番組でした別のマネージャーの話を延々と書く始末だった。
いったいこの凍りつき方はなんなのか。それは中居くんがした話が、ジャニーズ事務所のタブーに触れるものだったからだ。
そのタブーネタを改めて紹介しよう。舞台は前述したように、昨年10月の開かれたジャニー喜多川社長の誕生日会でのことだった。上は近藤真彦、下はSexy Zone、ジャニーズJr.まで、ベテラン・若手問わず大集合の宴となったという。中居くんはこう切り出した。
「ジャニーさんのお誕生日会っていうのを、滝沢くんかなんかが仕切りでやったのかな。中居くんもいかがですか?って、別にいいけどどんなメンバー来るの?って、上からマッチさん、ヒガシくん、岡本くん、次は僕くらいであと下はSexy Zoneまで全員来ると」
ただ、パーティが始まってすぐ、中居くんはあることに違和感を覚える。
「ジャニーさんがいて。まず後輩うわーってきて。まず先輩からってジャニーさんいてマッチさんいてヒガシくんがいて、岡本くんがいて。岡本くんって元男闘呼組。僕がどうもーって挨拶して。ジャニーさんにおめでとうございますって。パッと座ってテーブルがあって。60~70人くらいいたのかな。ジャニーズJr.なのかそれからもうデビュー、Sexy Zoneの下でもうデビューしてるんだけども僕が無知なところであんまり顔がわかんなくて。誰なのかなと思いながら。ジャニーさんがいるその側に、Jr.っぽい子がいたんです」
下っ端の新人タレントが主賓のジャニーさんや幹部のいる上座に座るなど、とんでもないことである。
「こいつがなんで、そこに座ってんのか。そっち側で。これから出る人間なのか新人なのかわかんない。ジャニーズJr.なのかデビューしてる子なのか。でもそっち側に座るのはおかしいんじゃねぇかなと思って。マッチさんもヒガシくんもいるから僕が怒るわけにいかない。下か誰かが、直接、直の先輩が言わなきゃいけないんじゃないかって思いながら。雑談しながら。
少年を睨みながらそんな会話を続ける中居のもとに、上機嫌な近藤真彦がやって来た。
「どうしたんだよ中居、イライラしてんなよ、こんな所で。無礼講なんだからさ、ガチャガチャすんじゃねーよ、ジャニーの誕生日なんだからよ」
中居は当然のように、話を続ける。中居はこれまでずっと気になっていた少年のことについて近藤にぶちまけたのだという。
「すいません。あそこの一番端のガキ、僕わかんないんで。
すると、近藤から衝撃の一言が返された。
「俺の息子」──。うろたえる中居くん。しかし、それをよそに、近藤は息子を呼び寄せて、中居に引き合わせたのだという。
そのやりとりもなかなか笑えるものだった。近藤が「あいさつした?」ときくと、息子は「してなーい」。で、中居くんのほうが「あいさつまだでしたね、中居と申します」とあいさつしたのだという。すると、息子は「この人、僕のこと、ずっと怖い顔で見てたー」。この後、中居は平身低頭でマッチの息子に謝り続けた......。
これ、普通に聞くと、ほんわかした体育会系お笑いエピソードだが、しかし、ジャニーズの利害関係者にとっては、とても笑える話ではない。
なぜなら、中居くんの語ったエピソードは、ジャニーズの歪な権力構造を暴露するものだったからだ。周知のように、近藤真彦はメリー喜多川副社長から寵愛を受け、ジャニーズのタレントの中でも、破格の扱いを受けている。
メリー氏の近藤への愛情は異様とも言えるもので、昨年、「週刊文春」(文藝春秋)1月29日号のインタビューでは、娘の藤島ジュリー景子氏と結婚させようとしていたことを告白した上で、「私がマッチの面倒を見るのは当たり前だと思う......話しているだけで涙が出てきちゃう」とまで語っていた。
メリー氏、ジャニー氏亡き後は、ジュリー氏とともに、近藤が後継者として事務所経営の実権を握るのではないか、ともささやかれている。
しかし、こうしたジャニーズの異様なマッチ推しには、ジャニーズファンから批判の声も強く、一部のタレントの間では「なぜマッチさんばかり」という不満の声がくすぶっているとも聞く。
そんな中、中居くんが近藤の権勢ぶりを物語るエピソードをテレビでしゃべったのだ。まるで北朝鮮の金王朝のように、息子までが大きな顔をして、ジャニーさんの誕生会に上座に座り、他のタレントたちに生意気な口を聞く。おまけに、中居くんは近藤がジャニーさんのことを「ジャニー」と呼び捨てにしていることまで、さらりと口にしていた。
これは、普段、ジャニーズの機嫌をそこねることを異常に恐れ、悪口どころかすべての記事を書く際にお伺いをたてているスポーツ紙はじめ芸能マスコミが記事にしなかったのも当然だろう。実はフジテレビも松本人志の番組でなければ、オンエアすることもできなかったかもしれない。
しかし、ここで問題なのは、なぜジャニーズの中にいる中居くんが、こんなスポーツ紙も凍りつくようなタブーに踏み込んだのか、だ。頭のいい中居くんが単なる受け狙いのためにリスクを犯すとは思えない。
ここで、思い起こされるのが、ジャニーズの派閥抗争だ。
しかも、メリー氏は当然、娘のジュリー氏を推しており、昨年の「週刊文春」のインタビューでは、インタビュー中に飯島氏を呼びつけ、記者の前で「飯島、私はこう言いますよ。『あんた、文春さんがはっきり聞いているんだから、対立するならSMAPを連れていっても今日から出て行ってもらう。あなたは辞めなさい』と言いますよ」「もしジュリーと飯島が問題になっているなら、私はジュリーを残します。自分の子だから。飯島は辞めさせます。それしかない」と明言している。
そんなところから、飯島氏がSMAPを連れて独立するのではないか、という噂も根強くくすぶっている状態なのだ。
そんな中、中居くんが、メリー社長の寵愛を受けジャニーズの全タレントのトップに立っている近藤真彦の悪口ともとられかねないような暴露話をしたというのは、いったいどういうことか。これを、飯島派独立に向けた中居くんの決意の表れと考えるのは、ちょっと深読みのしすぎだろうか。
(新田 樹)