今月10日、TOKIOと会食して話題を集めたばかりの安倍首相が、またも芸能人との会食をおこなった。22日、大泉洋と高畑充希を首相公邸に招き、夕食をともにしたのである。

 大泉と高畑は昨年末に公開された映画『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』に出演したが、この映画を安倍首相は昨年12月31日に昭恵夫人、母親の洋子氏と一緒に鑑賞。映画の感想について、「本当に元気のでる映画でしたね。いろいろと考えさせられました」と記者に語っていた。

 実際、昨日に高畑は自身のInstagramに、〈#こんな夜更けにバナナかよ を気に入ってくださったご縁で、誘っていただいたディナー。 私と大泉さん、ど緊張で参加しましたが、爆笑トーク連発で楽しく帰りましたとさ〉と投稿。そして、〈#まさか自分の人生で首相とセルフィーする日が来ようとは〉というハッシュタグをつけて、大泉、高畑とともに微笑みを浮かべる安倍首相との3ショットを公開したのだ。

 そして、この高畑の投稿に対し、安倍首相もコメント欄で「昨日はありがとうございました」と返答。さらに本日、安倍首相の公式InstagramおよびTwitterが、大泉がスマートフォンをかざして3人で自撮りをしている様子の写真を投稿し、こう綴った。

〈先日、映画「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」に出演された、大泉洋さんと高畑充希さんのお二人と、御一緒させていただく機会を得ました。
筋ジストロフィーの男性が、ボランティアの方々とともに、自立した生活を送った実話に基づく映画です。年末に映画館で見ましたが、いろいろと考えさせられるとともに、本当に元気がでる映画でした。
撮影の際のご苦労なども伺い、あっという間のひとときでした。お二人のますますのご活躍をお祈りしております。〉(安倍晋三Instagramより)

 映画を観て筋ジストロフィーという難病と闘う患者やそれを支えるボランティアの人びとに思いを馳せたのなら、普通は患者やボランティアと対面して政策に活かすべきだと思うが、安倍首相はいまをときめく役者と食事を楽しみ、撮影の裏話を直接聞くという特権的な時間を過ごしたらしい。

 安倍首相は以前、国会で山本太郎議員から「芸能人とはしょっちゅうご飯食べるのに、生活保護の当事者の人たちの話は聞かないのか」と突っ込まれたり、ノーベル平和賞を受賞したICAN(国際NGO・核兵器廃絶国際キャンペーン)事務局長や翁長雄志沖縄県知事との面会を断って松本人志ら『ワイドナショー』ご一行と会食したことがあったが、弱者や困難の当事者にはとことん興味がないのか。

 安倍首相は2017年2月にも、鑑賞した百田尚樹原作の映画『海賊と呼ばれた男』に出演していた岡田准一、鈴木亮平と西麻布の高級フランス料理店で麻生太郎財務相を引き連れて会食しているが、まったく権力の濫用も甚だしい。安倍首相がいかに“王様”化しているかがよくわかるというものだろう。

 しかし、注目すべきは、王様然としたその振る舞いだけではない。TOKIOにつづき、芸能人の取り込み工作が本格化していることのほうだ。

 じつは、安倍首相は大泉、高畑と会食する2日前の20日にも、俳優の杉良太郎の自宅を訪問。杉の妻である歌手の伍代夏子とともに会食したと首相動静にはあるのだ。

 杉は日ベトナム特別大使と日・ASEAN特別大使を務めており、2017年にトランプ大統領が来日した際も晩餐会にも招待。杉の芸能活動50周年・福祉活動55周年を祝う会にも安倍首相が駆け付けるなど関係を深めてきたが、この杉・五代夫妻と1日開けて、今度は大泉、高畑とテーブルを囲んでいたのだ。ちなみに、安倍自民党をはじめとする与党は、予算委員会の開催をじつに約80日以上も拒否しつづけている最中にある。

●TOKIO、杉良太郎、大泉洋、高畑充希…芸能人との会食に精を出す安倍首相

 消費増税の是非などが確実にツッコまれる予算委員会は開催拒否をしつづける一方、年配層に人気の俳優・演歌歌手カップルに、テレビ・映画に引っぱりだこの人気俳優、そして老若男女に親しまれるアイドルグループと会食を繰り返す安倍首相……。今月だけでこのような幅広い国民的タレントたちと親交を深めているのは、無論、参院選を意識してのことなのは明々白々だ。

 事実、10日にTOKIOの4人を自身の行きつけのピザ店「エンボカ東京」に招き、会食をおこなった際には、首相官邸のInstagramは「安倍総理からのメッセージ」として、こんな投稿をした。

〈TOKIOの皆さんと再会しました。#福島 復興のために頑張ってくださっています。話に花が咲き、本当に楽しいひとときを過ごすことができました!〉

 そして、「#TOKIO の皆さんと#pizza」だの「#TOKIO兄さん」だの「#ウマーベラス」「#ソーリメシ」だのといったハッシュタグがベタベタと貼り付けられた上、公開されたのは、和やかな雰囲気のTOKIOと安倍首相の会食風景の写真だった。この写真は首相官邸のInstagramだけではなく、安倍首相個人のInstagram、Facebook、Twitterにもアップされている。

 人気取りのためにここまでやるか、とも思うが、実際にこのInstagramへの投稿には安倍首相公式と首相官邸を合わせて約7万、Twitterにいたっては約28万もの「いいね!」がついているのである。

 しかも、TOKIOはジャニーズ事務所所属であり、ジャニーズといえば芸能界においてもっともネットへの写真掲載に厳しい事務所として知られている。所属タレントによるSNSでの発信も、木村拓哉と山下智久が中国の「微博(ウェイボー)」に公式アカウントを設けているのみだ。

●ネットへの写真掲載に厳しいはずのジャニーズが安倍首相のSNSにはOK

 毎日新聞によると、今回のTOKIOとの会食写真のSNS掲載について、内閣広報室は「先方(ジャニーズ事務所)の許可を得て掲載に至りました」と回答を寄せている。昨年12月28日にTOKIOは官邸を訪れ、自民党が発行する月刊女性誌「りるぶ」で安倍首相と対談、安倍首相のSNSアカウントが、センターの首相をTOKIOメンバーの4人が囲む写真を投稿し、ネット上では「安倍メンバー加入でTOKIOがまた5人に」などと盛り上がっていたが、このときの前例を踏襲したというのである。一方、毎日新聞はジャニーズ事務所に対しても「今回の安倍首相側の投稿は特例なのか?」「これからはオフショットのSNS投稿もあるのか?」といった質問を送ったというが〈期限までに回答はなかった〉という。

 ようするに、安倍首相との会食はジャニーズ的にも「プラスになる」と判断し、政治的な宣伝PRに使われることも黙認している、ということだ。

 政権批判をおこなうタレントや歌手には「政治的発言はするな」「音楽に政治を持ち込むな」などと難癖をつけながら、最高権力者がタレントにすり寄って自己PRに使われることには文句を言わない──。実際、「桜を見る会」に誘われながら辞退した千原ジュニアが「知らんおっさんと見たないわと思って断った」と発言すると、「言い方を選べ」「40を過ぎたおっさんがするコメントじゃない」などと非難が殺到した。

 こうした社会の空気を読んだのか、はたまたジャニー喜多川社長やメリー喜多川副社長と違って権力好きといわれる藤島ジュリー景子副社長が飛びついたのか。天下のジャニーズすら安倍首相に忖度したというわけだ。

 大手芸能事務所さえ味方につけた安倍首相。安倍首相にとって有名芸能人を使ったPRの場となっている「桜を見る会」には、今年もGENERATIONS from EXILE TRIBEやメンバーやももいろクローバーZ、カズレーザー、小峠英二、千原せいじ、ミッツ・マングローブ、石坂浩二、デヴィ夫人、市川猿之助などといった芸能人が参加し、首相官邸のInstagramに安倍首相との記念写真が多数アップされ反響を呼んでいたが、一方で年々参加者数が増え、2018年には内閣府が見込んだ予算の約3倍となる5229万円も支出された。不透明な運営に批判が集まっているが、内閣府は「今年の資料は破棄した」と言い放つ始末となっている。

 だが、このような問題が大きく取り上げられることもなく、安倍首相と芸能人たちの会食がニュースを飾り、政権PRとしてどんどんと拡散されてゆく。その先に待っているのは、人気芸能人たちが動員された憲法改正の大キャンペーンなのだということを、よく覚えていけなくてはいけないだろう。
(編集部)