産経新聞コラムが「引きこもりは自衛隊に入隊させて精神を鍛え直せ」 右派の徴兵制&強制収容所的発想があらわに

産経新聞コラムが「引きこもりは自衛隊に入隊させて精神を鍛え直せ」 右派の徴兵制&強制収容所的発想があらわに
自衛官募集ホームページより

 農林水産省元事務次官・熊沢英昭容疑者が長男を自宅で殺害した事件で、「親が引きこもりの子どもを殺すのは正しい」なる暴論が蔓延るなか、産経新聞が“引きこもりは自衛隊に入れて精神を鍛え直せ”という趣旨のコラムを掲載した。

 6日付のフォトジャーナリスト・宮嶋茂樹氏による連載コラム「直球&曲球」だ。宮嶋氏といえば、「不肖・宮嶋」の愛称で知られもともと「フライデー」(講談社)出身のフリーカメラマンだが、自衛隊従軍記ルポを数多く出版、雑誌「正論」(産経新聞社)や「WiLL」(ワック)常連の右派論壇の一員だ。

 その宮嶋氏が「日本もブッソウな国になったもんや」と題した産経紙面のコラムで、まず、川崎市の殺傷事件と元農水次官の殺人事件について〈これ、みーんな「引きこもり」が関係しとるかもしれんのやて?〉〈40歳、50歳にもなった大人が働きもせず、他人さまを巻き添えにしよって。ワシにはやっぱり、面倒見とる親(や親類ら)が甘やかしとるんとしか思えん〉と述べ、「マトモな政策」を考えついたとして“外国人労働者の代わりにニートや引きこもりを駆り出せ”と主張。続けてこう書いているのだ。

〈まだ10代のうちに自衛隊へ入隊させて、規則正しい生活送らせ、なまった肉体と屈折した精神を鍛え直すんや。
 その上で、自衛隊にはさまざまな職種があるから、個々に適した仕事を見つけてもらう。そのうちの何割かは、自衛隊員としての適性を見いだされ、そのまま正式に入隊してもエエやろ。そうなったら定員割れしとる自衛隊内の人手不足問題も解消や。結果、わが国の国防の役に立つやないか〉

 ようするに、10代の「引きこもり」を自衛隊に無理矢理入隊させろというのである。

 さらに、宮嶋氏は、自衛隊に強制入隊させたうちの何割かが引きこもりに戻ったら〈自治体の住民税、何割増しかにしてもらう〉と税負担増を主張、〈働かず税金も払うてない人間が大きな顔して行政サービス受けられるか?〉などと締めくくっている。

 いやはや、宮嶋氏も、それを掲載した産経新聞も、軍隊が好きすぎて、脳みそが迷彩カラーになっているとしか思えない。「引きこもりを自衛隊に入隊させろ」って徴兵制どころか、強制収容ではないか。完全に「意に反する苦役」を禁じる憲法18条違反である。

 いや、そんな当たり前の批判以前に、宮嶋氏がありえないのは、「引きこもり」のことを何も理解しておらず、差別感情丸出しで攻撃していることだ。

 そもそも引きこもりは、個人の資質だけに還元されるものでなく、学校教育の問題や、格差社会、不安定雇用など社会構造の問題も大きい。学校でいじめにあったり、職場での過重労働やパワハラ、リストラをきっかけに引きこもりになってしまったという人も少なくない。

 ところが、宮嶋氏は引きこもりを「甘やかすな」「大きな顔するな」などと完全に厄介者扱いして、「自衛隊に入れて、精神を鍛え直せ」と精神論をふりかざして恫喝するのだ。

●「自衛隊で引きこもり克服」って、自衛隊こそ“いじめ”で自殺者続出なのに

 だいたい“自衛隊大好き”宮嶋氏は、自衛隊に入れれば引きこもりを克服させられるかのように言っているが、そもそも、その自衛隊で、いじめやパワハラが横行し、それによる自殺者まで出していることをどう説明するのか。

 たとえば昨年9月には、神奈川県横須賀基地の補給艦「ときわ」の司令部事務室で、当時32際の三等海尉が首を吊って自殺しているのが発見された。これは、ジャーナリストの寺澤有氏のスクープで判明したことだが、寺澤氏によれば三等海尉の自殺の背景には、艦長や上司からのパワハライジメがあった。三等海尉は上官から「バカ」「辞めろ」「死ね」「消えろ」などの暴言を吐かれ、処理しきれないほど大量の課題を与えられたり、艦内から陸上へ出ることを禁止されたりと執拗ないじめにあっていたという。しかも、海自はこの自殺を「過労死」として処理、隠蔽しようとまでしていた。

 他にも、有名なのは2004年には護衛艦「たちかぜ」の乗員(当時24歳)が電車に飛び込み自殺。遺書には上司を名指しで「許さねえ」と記されており、海上自衛隊横須賀地方総監部が内部調査を行ったところ、「虐待」が判明した。 

 また2014年9月1日には、同じく海自の横須賀護衛艦乗務員が、上司の1等海曹からペンライトで頭を殴られたり、館内の出入り口の扉で手を挟まれたり、バケツを持って立たせられたりするなどのイジメやパワハラを受け、自殺した。

 幹部自衛官を育成する防衛大学校でもいじめが蔓延っている。今年2月には、上級生らから暴行や嫌がらせを受けたとして、退学した元男子学生が、在学時に学生だった8人と国に損害賠償を求めた裁判で、福岡地裁がうち7人の違法性を認め95万円の支払いを命じ確定した(国との裁判は継続中)。

 宮嶋氏と産経新聞の言うように、もし懲罰的にこんな人権無視の自衛隊に入隊させたら、それこそ、自殺者が続出するだろう。このグロテスクな提案を聞いていると、もしかしたら「自衛隊に送り込んで、それでも役に立たないやつはどんどん自殺させろ」とでも思っているのか、と勘ぐりたくなる。だとしたら、それこそナチスばりの強制収容所的発想だろう。

 川崎児童殺傷事件をめぐっては、立川志らくらの「ひとりで死ね」発言や松本人志の「不良品」発言が批判を浴びたが、しかし、産経などの右派論壇界隈ではもっとひどいこんな暴論が平気で野放しにされているのだ。いかに、この国の言論が狂ってきているか、の証明と言えるだろう。

●政治家にも同じ発想! 稲田朋美も「自衛隊入隊を“教育の一環”に」

 いや、恐ろしいのは言論だけではない。「自衛隊で若者の精神を鍛え直せ」と考えている連中は、政治家、権力を握る自民党・安倍政権のなかにうじゃうじゃいるのだ。

 その代表例が元防衛大臣の稲田朋美衆院議員だ。稲田氏は「正論」(産経新聞社)2011年3月号での元空将・佐藤守氏との対談で「徴兵制」に高い関心を示し、佐藤氏が現状では必要ないと言っているにもかかわらず、こう述べている。

「教育体験のような形で、若者全員に一度は自衛隊に触れてもらう制度はどうですか」
「『草食系』といわれる今の男子たちも背筋がビシッとするかもしれませんね」

 また、2015年には上の発言について「女性自身」(光文社)2015年11月10日号に問われて、「でも、たとえば自衛隊に一時期、体験入学するとか、農業とか、そういう体験をすることはすごく重要だと思います」「(自衛隊体験入学は)まあ、男子も女子もですね」と変わらぬ態度をとっている。

「教育機関」でもなんでもない自衛隊入隊を「教育の一環」として強制化する──。徴兵制そのものであり、軍国主義国家復活丸出しだが、しかしこれこそが、右派政治家の本音なのだ。

 右派メディアや政治家はふだん、護憲派を「頭がお花畑」と攻撃し、「日本を守るためには現実的な政策が必要だ」としたり顔で語っているが、実は連中が改憲や軍備増強を叫んでいるのは「日本を守るための」などではない。連中の最大の目的は、「軍」を復活させることで、国民が国のあらゆる命令に従い、国家のために命を捧げるように作り変えたい、それこそ「精神を鍛え直したい」ということなのだ。

 今回、「引きこもり」が問題の俎上に上がったことで、その本音は頭の悪いメディアと言論人の口からだだ漏れになった。しかし、同じことを考えている連中が権力中枢にその何倍もいることを、私たちは知っておくべきだろう。
(編集部)

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