死刑囚が弁護士に宛てた手紙をめぐり、「再審請求の弁護人を務めてほしい」「国賠訴訟提起で力になってほしい」と依頼した部分などを、大阪拘置所が切り取って削除したり、黒塗りにして抹消したりした対応の是非が問われた裁判。

最高裁は死刑囚側の上告を退ける決定をし、大阪拘置所の一部対応を違法として国に8万8000円の賠償を命じた大阪高裁の判決が確定しました。

(MBS司法担当 柳瀬良太)

訴えていたのは、大阪府寝屋川市の中学1年の男女2人を殺害した罪で死刑判決が確定し、大阪拘置所に収容されている山田浩二死刑囚(56)です。

▼厳しく制限される「死刑囚の手紙」

死刑囚の外部との連絡は、刑事収容施設法によって厳しく制限されていて、発送したり受け取ったりできる手紙は、
・親族との手紙
・婚姻関係の調整や裁判の遂行など「法律上または業務上の重大な利害に関わる用件」を処理するための手紙
・「心情の安定に資する」と認められる手紙
に限られます。

さらに手紙は拘置所職員によって検査され、場合によっては発送や受領が差し止められたり、一部が「削除=切り取り」や「抹消=黒塗り」されたりします。

▼「再審請求弁護人になってほしい」が切り取られ…受け取った弁護士も依頼を認識できず

1審判決によりますと、山田死刑囚は2022年6月、国家賠償訴訟の提訴などについて大野鉄平弁護士(愛知県弁護士会)に相談したいと、大阪拘置所長に申請。拘置所長は許可しました。

しかし、山田死刑囚が大野弁護士に宛てた手紙で、「色々と相談したいので大野弁護士には再審請求弁護人になってほしい」「大阪拘置所の死刑確定者の外部交通や処遇の件で国家賠償訴訟の準備を進めている。その力になってほしい」と記した部分は、検査の結果、「削除」=切り取られました。

実際、手紙を受け取った大野弁護士は、再審請求の弁護人を務めてほしいと頼まれていることが分からなかったといいます。

▼「削除されたのは違法」として山田死刑囚が国を提訴

山田死刑囚は「法的助言を求める記載で、『法律上または業務上の重大な利害に関わる用件』を処理するための手紙にあたるのに、削除されたのは違法」として、国に賠償を求める裁判を起こしました(山田死刑囚の刑事裁判で弁護人を務めた弁護士らも原告。他の削除・抹消措置や、差し入れの書籍の受け取りが認められなかった件をめぐる賠償請求も含め、請求額の合計は約86万円)。

一方、国側は当該の削除=切り取り箇所について、「山田死刑囚の記載は具体性を欠き、実質的に『訴訟の遂行』のための具体的な相談やアドバイスなどを求めているか判然としないものだった」などと反論。請求棄却を求めていました。


▼「法律的なアドバイスを求めていることを明確かつ容易に読み取れる」

1審の大阪地裁(横田典子裁判長)は去年2月末、国に6万6000円の賠償を命じた判決で、当該の削除=切り取り箇所について、「山田死刑囚が大野弁護士に対し、再審請求事件の受任を希望していることや、提訴を予定している国家賠償請求事件について法律的なアドバイスを求めていることを明確かつ容易に読み取れる」と指摘。「包括的に法律的なアドバイスを求めることも、訴訟の準備行為として合理性があるというべきで、記載内容が具体性を欠くとも言えない」として、山田死刑囚側の主張を認めました。

そして、「大阪拘置所が、これらを刑事収容施設法が死刑囚に認めている手紙に該当しないと判断したことは、職務上、通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく、漫然と判断したというべきで違法」と断じ、他の一部の削除(切り取り)・抹消(黒塗り)も違法と判断したうえで、国に対し、6万6000円を山田死刑囚に賠償するよう命じました。

▼「死刑囚本人の意見を踏まえたうえで訴訟内容などを検討するのが通常」高裁で賠償額が微増

山田死刑囚は請求が認められなかった部分を不服として控訴していましたが、大阪高裁(嶋末和秀裁判長)は去年9月の判決で、「削除=切り取りや抹消=黒塗りが違法」と判断した範囲を1審から増やしました。

具体的には、1審では計3通の手紙への削除・抹消措置が違法と判断されましたが、2審の高裁は、山田死刑囚が大野弁護士に宛てた、別のもう1通の手紙への抹消=黒塗りも違法と断定しました。

その手紙は、国賠訴訟提起への支援を訴えた部分などが削除・抹消された後に出された手紙で、拘置所のそうした措置への山田死刑囚の異議が記されていました。

高裁はこの部分も、「提起を予定していた国賠訴訟に関する記載だと明確かつ容易に読み取れる」としたうえで、「拘置所は山田死刑囚が自己の意見および感想を記載しているだけだとして抹消=黒塗りとしたが、拘置所での処遇について国賠訴訟の相談をされた弁護士としては、本人の意見を踏まえたうえで訴訟の内容などを検討するのが通常で、死刑囚の意見であるからといって、重要な利害にかかわる用務の処理のために不要であるとはいえない」と指弾。

結果として、国の賠償額を2万円あまり増やし、8万8000円としました。

▼最高裁が上告を退け、国に賠償を命じた高裁判決が確定

この高裁判決に対し、山田死刑囚側はさらに請求が認められなかった部分を不服として「憲法違反」などを理由に最高裁へ上告していました。

しかし、最高裁判所第一小法廷(堺徹裁判長)は今月9日付の決定で、「単なる事実誤認や法令違反の主張に過ぎず、上告の理由に該当しない」として訴えを退けました。

これにより、大阪拘置所の黒塗りや切り取り措置の一部を違法と認定し、国に8万8000円の賠償を命じた判決が確定しました。

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