“寝たきり度”という言葉をご存知でしょうか?正式名称は、日常生活自立度といいます。
日常生活自立度とは要介護度を決める際に用いられる尺度で、ケアマネージャーなどが自宅に訪問して調査します。
そこで今回は、日常生活自立度について解説し、調査の際に知っておくべきポイントをご紹介いたします。
日常生活自立度判定までの流れ
介護保険には、介護の度合いを客観的に判断し、数値化する要介護認定があります。
要介護認定には、要支援1・2、要介護1~5まであることは多くの方はご存じだと思います。これはどちらも介護がどれくらい必要かを表す指標です。
さらに、認知症にも尺度があって、大きく5段階、細分化すると7段階に分かれています。詳細はこちらをご覧ください。
この日常生活自立度が活用されるのは、要介護認定判定のうち、主に訪問調査と主治医意見書です。
訪問調査はケアマネージャーなどの認定調査員が実施します。
本人の置かれている環境(家族・住居・病気など)や身体・認知機能、特記事項などを確認し、認定調査票に記載していきます。認定調査票の中には、「認知症高齢者の日常生活自立度」の記載欄もあり、これも調査員が記載します。
そして、最終的に主治医が診察の状況などをもとに主治医意見書内の「認知症高齢者の日常生活自立度」に記載します。
これら認定調査票と主治医意見書をもとに、必要な判定(一次判定と二次判定)を経て、要介護度が決定します。介護認定審査会(二次判定)では、「認知症高齢者の日常生活自立度」などを参考に、二次判定をして要介護度を決定します。
調査員と主治医で自立度ランクが異なる理由
しかし、認定調査票と主治医意見書の「認知症高齢者の日常生活自立度」のランクに差が生じることがあります。
なぜ、差が生じてしまうのでしょうか?原因の一つに、認定調査員と医師の視点に違いが挙げられます。その大きな要因は、医師に正確な情報が伝わっていない可能性が考えられます。
医師の診察に比べると、認定調査員は、訪問調査時に比較的時間をかけて本人やご家族と向き合います。また、本人の心情に配慮しながら、ご家族に日ごろの生活の様子をヒアリングしていきます。
私は、18年に及ぶ相談援助業務の中で、認知症の状態にある方の受診の付き添いを経験しました。
もちろん主治医意見書作成のため、受診にも付き添ったことがありますが、医師による診察では安定しているように見せる(医師からは安定しているように見えやすい)傾向にあると感じます。
たとえ身体や心の不調があったとしても、「特に変わりはありません」「大丈夫です」と話すこともあります。
生活の中での失敗が増えていると、自覚が多少あったとしても、それを知られたくない心境から、援助を求める言動を減らす傾向がみられることもあります。
その結果、身体や心に不調があったとしても、医師に打ち明けることをためらう方もいらっしゃいました。逆に、医師は多くの患者を診察しなければならないため、じっくり聞くことができません。
また、付き添いのご家族も、言葉で説明しようとしても、整理がつかず、伝えたいことが伝わらなかったということもあります。
医師の診察時には書面で伝えよう
医師に正確な情報を伝達するためにも、情報を書面にまとめて提出することをお勧めします。
書面にする際は、文章にする必要はなく、以下のポイントを箇条書きにすると良いでしょう。
医師が書面を見て、尋ねたいことがあれば質問があるでしょう。多くの医師は、「はい・いいえ」で答えられるように聞いてくれるはずです。

また、認知症の状態にある本人を目の前にして、行動・心理症状(本人ができなくなっていること、本人の困りごと・生活の不便さ・不安等から生じる言動)を、ご家族や介護の職員が話すことは、本人からすれば心地良いものではありません。
本人の自尊心を傷つけ、恥ずかしさや迷惑をかけているという気持ちから「何を言っているんだ」と怒らせてしまう可能性があります。
認知症の状態であっても、何もわからなくなったわけではありません。情報をもれなく伝えるだけでなく、配慮する視点からも書面は有効です。
ご家族に「認知症かもしれない」という方がいるのであれば、ぜひ覚えておいていただければと思います。
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