地域包括ケアシステムの構築が叫ばれる今、政府は地域住民によるボランティア活動など、助け合いのコミュニティづくりに手を尽くしています。
公的支援の拡充ではなく、地域での助け合いを推進する理由や背景に迫ります。
地域包括ケアシステムの基本的な考え方
団塊の世代が75歳以上となる2025年以降は、医療介護サービスの需要が、さらに増加すると予測されています。
厚生労働省は2025年を目途に、地域包括ケアシステムの構築を推進しています。
地域包括ケアシステムとは、高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的に、可能な限り住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう地域内で助け合う体制のことです。
4つの助とは
まずは、地域包括ケアシステムを機能させるための柱とされている「4つの助」を確認してみましょう。
自助 住み慣れた地域で暮らすために、日常生活の困りごとを自分で解決すること。市場サービスを自ら購入したり、介護予防活動に取り組んだり、健康維持のために検診を受けたり、自発的に自身の生活課題を解決する力を指す 互助 家族・友人・クラブ活動仲間など、個人的な関係性を持つ人同士が助け合い、それぞれが抱える生活課題をお互いに解決し合うこと。親しいお茶飲み仲間づくりや住民同士のちょっとした助け合い、自治会などの活動、ボランティアグループによる生活支援、NPOなどによる有償ボランティアなど幅広いさまざまな形態がある 共助 制度化された相互扶助いわゆる保険のこと(医療、年金、介護保険、社会保険制度など) 公助 自助・互助・共助では対応できないことに対して、最終的に必要な生活保障を行う社会福祉制度のこと
国は互助を推進したい
「4つの助」が提唱されているのは、専門職サービスだけでは地域の高齢者を支えきれないため、地域住民同士によるサポートが期待されているからです。
なかでも、政府は現役ではない高齢者同士による支え合いを促進する意向を示しています。
しかし、内閣府の『令和4年度高齢社会白書』によると、高齢者同士による支え合いが進んでいるとは言いがたい状況です。過去1年以内に高齢者が参加した社会活動の内訳の一部を紹介します。
- 健康・スポーツ(27.7%)
- 趣味(14.8%)
- 地域行事(13.2%)
- 高齢者の支援(2.4%)
高齢者の支援をした割合が2.4%であることは、「地域の高齢者が高齢者の支援をする」ことが互助として期待されていることを考えると、低迷していると言わざるを得ません。
ただ、ここで一度考えておかなければならないのは「互助」は個人の意思に基づいた行動ですから、外部から強制されるような類のものではありません。
皆さんも経験があるかと思いますが、主体的にやっていたことを、誰かから強制された途端にやりたくなくなってしまうことありませんか?
コロナ禍でさらに社会参加を促しにくい状況に
この状況に追い討ちをかけるようにコロナ禍の拡大が発生しました。自粛生活が長引くなか、社会参加を新たに行うことはハードルが高くなっています。
国は社会参加や互助を推し進めたいものの、コロナ対策で社会生活の制限は継続するというややこしい状況になっています。
「互助」は重要だが、強制できない
地域住民による互助は増大する社会保障費を抑える手段、高齢者が社会とつながりを持って生活する手段として重要です。
昨今の社会保障費の増大を考えると、住民主体の支え合いが国内に広まってほしいということは理解できます。
ただ、互助という関係は誰かに強制されるものではありません。
「社会参加は本人がやりたいからやっている」「互助を推進するのはわかるけど、強制されると話が変わってくる」ことを押さえつつ、個々が主体的に社会参加してみようという情報発信や環境整備をしていくことが必要ではないでしょうか。
そのうえで、私たちも積極的に地域活動などに参加し、本当の意味での助け合いが一般的になる社会を目指したいものですね。
