「ダイエットのモチベアップ術」とは……

前回述べたとおり、デブ味覚から脱却するために必要なことは、薄味でも満足できる“痩せ味覚”を取り戻すこと。

そこで真価を発揮するのが、かつお節や煮干しなどが入った出汁を飲み続ける「出汁ダイエット」だ。

今回はその具体的な方法とポイントを肥満治療専門の医師・工藤孝文先生に教えてもらった。

話を聞いたのはこの人!
デブ卒業の近道は“出汁ダイエット”にあり! その効果と方法を...の画像はこちら >>


赤ちゃんの頃から馴染みのある“うま味”

まずは、工藤先生が提唱する「痩せる出汁」を作ってみた。作り方は驚くほどカンタン。食材は4種類で、道具はミキサーとレンジがあればOKだ。  

デブ卒業の近道は“出汁ダイエット”にあり! その効果と方法をレクチャー

■材料(10~14日分)
・かつお節 30g
・煮干し 10g
・刻み昆布(塩分不使用) 10g
・緑茶 5g

■作り方
平らな耐熱皿にクッキングペーパーを敷いてかつお節を広げ、ラップをせずに電子レンジで2分間加熱して水分を飛ばす。同じように煮干しも1分加熱して水分を飛ばす。
ミキサーに刻み昆布、緑茶、の順番に入れて細かく撹拌する。


パウダー状になったら出来あがり。
※出汁の粉は冷暗所で保存し、2週間以内に使いきる。

飲み方は、完成した出汁の粉を大さじ一杯コップに入れ、熱湯を150~200mlほど注ぐだけ。1分ほど待ち、刻み昆布が柔らかくなれば飲み頃だ。

早速飲んでみたところ、出汁の濃厚なうま味が口いっぱいに広がる。美味しい!

そもそも出汁のうま味がなぜ、味覚のリセットに役立つのだろうか?

 「実はうま味は我々が生まれる前から、もっとも馴染みのある原始的な味覚だからです。

味覚は母親のお腹の中にいるときに発達しますが、羊水の中にはうま味物質のグルタミン酸が含まれていているんです。

また、『うま味インフォメーションセンター』が生後4カ月の赤ちゃんに対して行った実験では、酸味と苦みは拒絶するものの、うま味を加えたスープを与えると穏やかな表情になった、という結果が報告されています」。

確かに飲んでいるうちに、気持ちがほっと落ち着く。これはコーヒーやお茶とは違う感覚だ。


食欲を抑えるカギは、かつお節に含まれる“ヒスタジン”

「4種類の食材のうち、ことダイエットにおいて威力を発揮するのがかつお節です。そのまま食べたり、出汁を飲むことで、食欲を抑えることができます」。

デブ卒業の近道は“出汁ダイエット”にあり! その効果と方法をレクチャー

メカニズムはこう。

脳内で食欲を抑える働きをするヒスタミンという物質があるが、これは食べ物から直接摂取することができない。

ただ、かつお節に含まれるヒスチジンを摂取すれば、酵素の働きによってヒスタミンとなり、脳内の満腹中枢を刺激して食欲を抑制することができるのだ。

「研究ではヒスチジンを多く含む食品をたくさん摂取する人は、1日の摂取カロリーが少ない傾向にあることがわかっています。ネズミにヒスチジンを混ぜたエサを与えると、そうでないネズミに比べ、食べる量が約3割減少したという報告もあります。

さらに、脳内で作られるヒスタミンは、交感神経を刺激することで脂肪燃焼を促進し、内臓脂肪を減少させる働きもあるんです」。

かつお節にはリラックス効果もある。

トリプトファンは、心を落ち着かせるセロトニンのもとになる栄養素。胃にうま味成分が送られると副交感神経の働きが促進され、緊張が緩和されるのだ。


痩せる秘密は4つの最強のダイエット食材

満腹中枢を刺激するヒスチジンを持つかつお節。その脇をがっちり固める食材が、煮干しと昆布、緑茶だ。

「まず、煮干しのイノシン酸には細胞の新陳代謝を活性化させる働きがあり、全身を若々しく保ってくれる効果があります。さらに、良質な油であるEPAやDHAが血中中性脂肪を減らし、豊富なカルシウムがイライラを防止します。

昆布には食欲の暴走を防ぐ働きがあるほか、ネバネバ成分の水溶性食物繊維は、糖質や脂質の吸収を抑えて血糖値をコントロールします。

そして、高い抗酸化作用を持つ緑茶。茶カテキンを摂取すると脂質の代謝が活発化し、摂取し続けることで腸内の善玉菌が増加して腸内環境が整います」。

そう、痩せる出汁には最強のダイエット食材が集結しているのだ。


痩せる出汁の効果を引き出すオススメの飲み方

「朝起きたら、朝食前にお湯で溶いた痩せる出汁を一杯飲みましょう。まっさらな舌でうま味を感じることで、味覚のリセットが促されます。そのあとに朝食を食べてください」。

朝一杯が基本だが、味覚リセットを促進させるには、昼や夜に飲むのもアリ。

昼ならお弁当のスープやふりかけ代わりに、夜はサラダや納豆、豆腐などにかけてもおいしい。

就寝前に飲めば、体温が上がることで気持ちが落ち着き、熟睡しやすくなる。小腹が空いたときにもおすすめだ。


我慢すればするほど痩せられない

最後に、出汁ダイエットに取り組む人へ向けて、心がけてほしい2つのことがあるという。

1つめは「食べてはいけない」という考え方を捨てること。

「なぜなら、アメリカで行われた実験で『人は太りそうな食べ物を我慢すればするほど、それを食べたくなる』ということがわかっているから。また、スタンフォード大学の研究でも『食べたいものを禁止すると、1.5倍欲しくなる』という結果が報告されています。つまり、朝食や昼食で我慢しすぎるのは逆効果だということです」。

デブ卒業の近道は“出汁ダイエット”にあり! その効果と方法をレクチャー
©︎Alexander Pyatenko/iStock

2つめは、時間ではなく空腹感を大切にすること。

「1日3食、決まった時間に同じ量を食べることにこだわらないでください。大切なのは時間ではなく、空腹感。『空腹感を覚えるまでは食べない』『空腹感がなくなったら食べるのをやめる』。

この2つを守るだけで、食事量が抑えられますし、ダラダラ食べ続けるという食行動のクセが解消されていきます。それに空腹には、細胞の若返りを促す長寿遺伝子をONにする働きがあると言われています」。

痩せる出汁は、確実にダイエットしたい人はもちろん、スマートで健康的な体を維持したい人にとっても、“黄金の習慣”となるということだ。

出汁ダイエットについてもっと知りたい! という人は下記をチェック。

『1日1杯飲むだけダイエット やせる出汁』(アスコム) 「ダイエットのモチベアップ術」とは……
一念発起してダイエットを始めたものの、「仕事が忙しくて時間がない」「なかなか成果が出ない」といった理由で諦めてしまった経験はないだろうか? 継続していくためには、正しい知識を蓄えてモチベーションを上手にコントロールしていくかが鍵。ここでは、ダイエットを“習慣”に変えていくためのヒントを探っていく。
上に戻る押条良太(押条事務所)=取材・文