12日に開かれた自民党大会で、陸上自衛隊中央音楽隊の3等陸曹が国歌斉唱した。壇上で歌唱する姿は、会場内の大型スクリーンにも映し出された。
自衛隊法は「隊員は選挙権の行使を除き、政治的行為をしてはならない」としている。現役の自衛隊員が党大会に招かれること自体異例である。
木原稔官房長官は今回の参加について、長期休暇中だった自衛官が私人として依頼を受けたと説明。党大会のイベント会社が防衛省に問い合わせたところ、法に違反しないとの回答を得たため出演に至ったと述べた。
しかし、歌唱は制服姿で行われた。登壇時には司会者が、3等陸曹の陸自入隊の経緯についても紹介している。「私人」との説明には無理がある。
党大会への自衛官参加を「不適切」とする声は野党だけでなく、与党の日本維新の会からも上がっている。
これに対し、高市早苗首相は「国歌斉唱であり、特定の政党への支援を呼びかけたわけではない」とし、指摘は当たらないとした。
だが党大会は党の最高意思決定機関だ。
党大会で高市首相は党是とする憲法改正について「来年の党大会前には改憲の国会発議にめどを立てたい」とも踏み込んだ。
自衛官の参加で機運を高めようとしたのなら「政治利用」のそしりを免れない。
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自衛官の参加については高市首相、小泉進次郎防衛相共に事前に知らされていなかったという。それが事実なら、防衛省・自衛隊の組織としての意思決定の在り方にも問題があろう。
小泉氏は大会当日、3等陸曹との写真や「大役を担ってくれた」とするコメントをSNSに投稿もしている。後に削除したが、自衛隊を統括するトップとしての自覚に欠ける。
自衛隊を巡っては「文民統制」が危ぶまれる事案が続いている。
2年前には、陸自幹部らが靖国神社を集団参拝し、批判を浴びた。
防衛省は「部隊参拝」ではないとしつつも、公用車使用を不適切として関係者を訓戒処分にした経緯がある。
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先月下旬には、陸自の幹部自衛官が刃物を持って中国大使館に侵入する事件も起きた。一つ間違えれば国際問題にもつながりかねない重大事案だ。
自衛隊法における政治的中立性は、戦前の日本軍が暴走して国を破滅に導いたという痛切な反省に基づいて確立されたものだ。
自衛官の表現の自由を巡っては、最高裁も全体の利益を守るため「必要で合理的な制限を加えることは、憲法が許容している」との判断を示している。
実力組織である自衛隊が特定政党に肩入れするようでは、国民の信頼は得られない。

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