今年公開の新作の中で、この作品が一番面白いかもしれない。映画を見て「勉強になった」「考えさせられた」と思いたい人、怖がりたい人、ハートフルになりたい人、笑いたい人、押し寄せる全ての欲望を求められる以上に刺激し、駆け抜け、最後に「これがイランで、そして世界だ」と圧倒して去っていく。

 政府への不満を秘めたイランの人々の、実は煮えくり返っているハラワタと、相反する祖国への愛で、ぐちゃぐちゃになった心の爆発を、復讐(ふくしゅう)劇を出発点に描いたこの映画は、昨年のカンヌでパルムドールに輝いた。
 そして、監督が世界各国で宣伝活動にいそしんでいる最中だった。米国とイスラエルによるイラン攻撃が始まったのは。
 ジャファル・パナヒ監督は、ずっと映画で描いてきた祖国の人々の元へ危険を承知で帰っていき、その安否は現在確認されていない。(桜坂劇場・下地久美子)
◇8日から桜坂劇場で上映
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