春の訪れとともに、各地でクマの出没が話題になり始めた。世界遺産・白川郷合掌造り集落を抱える岐阜県白川村にとっても、クマの出没は深刻な問題だ。

観光客が増える一方でクマの目撃件数も急増し、昨年10月には外国人観光客が負傷する被害も発生。そのような状況を受け、岡山理科大学の辻維周特担教授らが4月21~22日にかけて、高周波でクマを遠ざける装置「熊ソニック」10基を村内に設置した。村は「住民と観光客の安全確保につながる大きな一歩」と期待を寄せている。

 白川郷は1995年に世界文化遺産に登録された。2025年の来訪者数は前年比12.8%増の211万人で、半数以上が外国人観光客。一方で、村内のクマ目撃件数は2024年度の35件から2025年度は137件へと約4倍に増加。昨年10月にはシャトルバス乗り場付近でスペイン人男性が子グマに腕を引っかかれて軽傷を負い、村内に緊張が走った。

 村は緊急対応として「BEWARE OF BEARS(クマに気をつけて)」と書かれた看板を20カ所に設置。今年度はより踏み込んだ対策として①熊ソニックの導入②クマが好む樹木の伐採③山裾の森を30メートル下げる緩衝帯整備――の3本柱を掲げる。熊ソニックは、山梨県の自動車部品メーカー「T.M.WORKS」が開発。クマが嫌う高周波を最大300メートルの範囲に発し、接近を防ぐ。富山県南砺市で効果が確認されているという。

 設置作業では、辻特担教授やT.M.WORKSの轟秀明社長らが村役場と協議し、目撃が特に多い5カ所を選定。太陽光パネルやスピーカーを単管パイプに取り付け、雪解け直後の山間部に次々と設置していった。村役場の高島一成・産業課長は「危険区域に入ってしまう観光客や、食べ物を捨てる人もいて頭を悩ませている。まずはクマを近づけないことが最優先」と語る。辻特担教授も「クマの脅威から村民と観光客を守れたらうれしい」と期待を込めた。

 世界的観光地・白川郷にとって、野生動物との距離をどう保つかは避けられない課題だ。熊ソニックの導入が、地域の安全と観光の両立にどこまで貢献するのか、今後の効果が注目される。

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