英検をはじめとする「外部検定」が注目されている。大学入試で有利になるのはもちろん、留学や就職などわが子の可能性を広げることができる。
小学生にとって、いつまでにどれくらいのレベルの資格を取ればいいのだろうか。
■豊島岡、頌栄。中学入試で英語導入のワケ
早稲田大や慶應義塾大に多くの合格者を出している人気校、頌栄女子学院が2026年度から実用英語技能検定(英検)を使った英語利用入試を導入すると発表した。中学受験の世界で、英語入試が話題になっている。
「いまの大学入試は英語で決まると言っていい。英語は難易度も高く配点も高いので一番差がつくからです。大学受験で有利な、英語ができる子が欲しいと学校側が考えるのは当然です」と、グローバル教育に詳しい、4技能型英語塾キャタル代表の三石郷史さんは言う。
「帰国生向けと冠した入試を除くと、有名校では、19年度に慶應義塾湘南藤沢中等部が一般入試で国語+算数+英語の3教科入試を始めました。そして25年度には女子トップ校のひとつで人気の豊島岡女子学園が英検を使った英語資格入試を導入して大きな話題になりました。頌栄はそれに続くものです」(三石さん、以下同)
豊島岡が取り入れたことで、いよいよ中学受験も本格的に英語が導入されるのだろうか。
「トップ校の豊島岡が参入したインパクトは確かに大きいですが、募集は若干名ですし、内容を見ても、小6で英検2級や準1級以上を取っている帰国生やインター出身の子向けのもの。中学受験の主流とは言えません」
例えば慶應SFCの中学入試問題は、公立小学校の外国語の授業だけではまったく太刀打ちできない。
「英検準1級レベル」(三石さん)の英語力が求められるからだ。豊島岡の英語資格入試にしても、英検3級が50点、準2級が70~80点、2級が90点、準1級以上が100点という、みなし得点だ。
公立小学校で外国語を学んだ子の英語力をみる入試ではなく、帰国生や英語を特別にがんばった子を救済するためのものだろう。学校以外に英語教育をしていない家庭が焦る必要はないという。
英語に関心が高い層では、最近、中学受験ではなく高校受験を視野に入れた家庭もあるという。
「多いのは、中学受験をスキップして小学生のうちから英語に注力し、高校受験を目指すというご家庭です。いまは海外留学費用が高騰していますが、都立高生を支援するプログラム『次世代リーダー育成道場』に選ばれれば80万円で約1年間の留学ができます」
同プログラムでは、留学出発時までにCEFR B1(CEFRは外国語能力の国際基準。B1は英検2級レベル)の英語力が求められている。
そして、最も外部検定が有利になるのは、大学受験だ。
「早慶を含む有名私大や国立大の多くが外部検定を入試に導入しています。立教大のように英語の独自試験を廃止した例も。英語が重視されているのは、文系・理系問わず、医学部さえ例外ではありません。
実際、順天堂大にも外部検定利用入試があります。つまり18歳時点の英語力で、選択肢が決まってしまう面があるのです」
さらに、協定校の交換留学に行けるかどうかもTOEFLやIELTSの点数が影響するという。
では、いったいいつまでに、どのくらいのレベルの検定を目指すべきなのか、いまのうちから知っておいたほうがいいだろう。
■どの外部検定を受ければいいのか
外部検定にはどのような種類があるのか。
20年度の大学入試改革で、大学入学共通テスト(以下、共通テスト)に外部検定を導入しようという動きがあった。結局、導入は断念されたが、そのときに文部科学省が大学入試のために認定したのが、次の七つだ。
・実用英語技能検定(英検)

・GTEC

・TEAP

・IELTS

・TOEFL

・TOEIC

・ケンブリッジ英語検定
「英検は、最も知られている外部検定試験で、5級から1級までのレベルによって試験が分かれているため、目標設定しやすいのが特徴です」
国内の大学入試では、ほとんどの外部検定入試で英検が活用でき、シェアは圧倒的となっている。受験料が安く受験機会も多いなど身近な点も嬉しい。ただ、注意も必要と三石さんは言う。
ひとつは、級の合格は目標としてわかりやすいが、英語力を身につけることよりも合格することが目的となってしまうことがあるという。
「英検では合否とは別にCSEスコアという共通スコアも判定されます。例えば3級ならCSEスコア1456で合格ですが、1699まで測れます。
ぜひ満点に近い合格を目指すようにしてください」
もうひとつは海外ではほぼ通用しないことだ。
「英検は留学をするときの英語力の証明としては使えません。英検準1級を取って、海外を進路に考える子には次の目標は英検1級ではなくTOEFLかIELTSをおすすめしています」
GTECはベネッセコーポレーションが運営する外部検定でCore、Basic、Advanced、CBTに分かれている。
TEAPは上智大などが開発した大学入試向けの英語検定で、主に同大学のTEAPスコア利用方式などで使われている。
「TOEFLは海外留学を目指す人のためにつくられた検定です。アカデミックな内容で、大学の講義のような題材やキャンパスでの会話などが扱われます。IELTSは留学や移住のための英語力を測るテストで、アカデミック以外に日常的なコミュニケーションについても出題されます」
海外大学に進学したり、日本の大学から海外大に短期留学をしたりする場合などは、どちらかの検定を受けるケースが多い。ただ、ネックとなるのが、TOEFLは195ドル(約2万8000円)、IELTSは2万5380円と、国内の検定と比べると受験料が高いことだ。
TOEICは社会人におなじみの検定。日本企業の採用や海外赴任、外資系企業の採用などの際に英語力の保証として使われる。大学入学後の進級やその先の就職活動など継続的に学ぶことができる。
■英検は何級を目指せばいいのか
では、どのレベルまで目指せばいいのだろうか。

子供の英語力向上に取り組む文部科学省は、中3で英検3級相当以上、高3で英検準2級相当以上がそれぞれ60%以上という目標を立てている。
だが、英検を使って難関大学を目指すのなら、これでは足りない。
「早慶や国立大など難関大学を目指すのなら、最低でも英検2級、できれば準1級を高3までに取得することが必要です」
例えば早稲田大なら、国際教養学部は、2級で7点、準1級で14点、級で20点の加算がある。文学部や文化構想学部の英語4技能テスト利用方式なら、英検CSEスコア2200(2級~準1級)が出願要件となっている。
慶應義塾大の文学部では、外国語150点分を、英検CSEスコア2500以上で得点換算することができる。
「推薦型の選抜でも、内申点や提出書類のほかに学力をアピールするものとして英検準1級を取っているとかなり有利になります」
海外大学への留学を目指す場合、一般的にTOEFLで80点以上、IELTSで6.0以上が求められる。さらにアメリカのアイビーリーグなどのトップ大学を目指す場合は、TOEFL100点以上、IELTS7.0以上が必要だ。

※本稿は、『プレジデントFamily2025夏号』の一部を再編集したものです。

----------

三石 郷史(みついし・さとし)

英語塾キャタル代表

慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系企業に勤務。2002年にバイリンガルが教える英語塾キャタルを創業。MIT大学院を卒業。

----------

(英語塾キャタル代表 三石 郷史 文=本誌編集部)

編集部おすすめ