大学入試で約46万人が受ける共通テスト自体も、かつてのセンター試験とはかなり違ってきているという。
「保護者世代の方は、かつてのセンター試験の、発音や文法の細かい知識を問う問題を覚えているかもしれませんが、現在の共通テストにはそういった問題はありません。
つまり、20年度のセンター試験廃止時に外部検定を導入することは見送られたが、後継の共通テストは外部検定に寄せた本来の言語理解を測る内容へと進化しているというのだ。
「入試が変わったことで、英語の勉強法も変わってきます。キャタルでは入試対策のための英語ではなく、使える英語を身につけるために、多聴・多読、音源を聞きながら音読するシャドーイング、単語は英英辞典で英語のまま理解するなど、ネイティブが英語を学ぶやり方で学びます」
言語を習得するためには、コツコツ続ける必要がある。ただ、毎日少しの時間でも継続することで確実に力がつく。同教室では1年間で、英検で一つ上の級を取るペースで上達するという。
「小3でまったく英語をやったことがなくても、ABCから始めて、中3で英検2級や準1級を取った子はたくさんいます」
では、小学生でも英検の勉強を始めたほうがいいのだろうか。
「ご家庭の方針だと思います。例えば、小学生のうちは中学受験の勉強に集中して、中学生から本気で英語を始めるという考え方もあります。中1でゼロから始めても、大学入試がある高3で準1級を取ることは可能です。もちろん、毎日コツコツがんばる時間投資ができることが条件です」
一方で、言語習得には適した年齢もあるという。
「多くの保護者が焦ってしまうのは、中学受験のタイミングである小4から小6までの時期は言語習得のゴールデンエイジの最後のタイミングだからでしょう。この時期、特に英語の音に触れているかいないかはとても大きい」
ひとつのおすすめとして、英語のつづりと発音の関係を学ぶフォニックスだけでもこの時期にやっておくと、中学に入ってからスムーズに英語に入れるという。
中学の主要教科である英語が得意になるかどうかは、子供の自己肯定感にも大きく影響を与えると三石さんは言う。大切なのは中1の1学期の中間テスト。そこで英語でいい成績が取れないと、「自分は苦手なんだ」と思ってしまうこともあるそうだ。
「小学生で習うローマ字読みが影響してしまうこともあります。一度覚えたアルファベットのローマ字読みをアンラーニングしなくてはいけない。中1のときに、乗り物のBUSをBASUだと思って混乱してしまったのは、私自身の実話です(笑)」
少しずつ毎日、英語に触れておいて無駄にならないだろう。
■全員が「小学生で準1級」を目指すのはナンセンス
テレビ番組やSNSなどで、何歳で英検1級合格といった優秀な子が紹介されると、気になってしまうという人も多いかもしれない。
「隣の芝は青く見えるので、親が焦ってしまう気持ちはわかります。でも、“小学生で準1級”を、どのご家庭も目標にするのは意味がありません。わが子にとって何が大切なのか。どんな進路を歩んでほしいのか、ご家族で考えてほしいのです」
もちろん小学生のうちに高い英語力を獲得することができれば有利なのは間違いがない。ただ早ければいいというものでもない。
「親が無理して外部検定を受けさせることで、かえって英語嫌いにさせてしまっては本末転倒です。英検の上の級を焦って受けて落ちてしまえば子供には大きなショックです。私自身、中2で4級に落ちて『自分はバカなんだ』と思ってしまった経験があります」
試験で扱う内容と子供の発達段階とのズレもある。英検でいうと、準2級くらいまでは自分の身の回りのことを英語で表現できる力を測っているが、2級以上の級では、アカデミックな場で論理的に表現する能力がみられるという。
「それが小学生に本当に必要なのか。それよりは、おとぎ話を自分でつくれたりする力のほうが小学生には必要な英語力かもしれないのです」
世界大学ランキングなどで、オックスフォード大やハーバード大などと、東大や早稲田大、慶應義塾大が横並びで評価される時代。
「日本の大学も、アジアをはじめ世界の優秀な高校生から選ばれることを目指して国際化を進めています。この動きは止まりません」
大学だけではなく社会に出ても、例えばエンジニアになって英語ができれば、GAFAMなど世界を代表する企業に勤め高い収入を得るチャンスがつかめるかもしれない。
焦らず、わが子の適性を見ながら、親子で英語を楽しむことから始めてみたらどうだろうか。
※本稿は、『プレジデントFamily2025夏号』の一部を再編集したものです。
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三石 郷史(みついし・さとし)
英語塾キャタル代表
慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系企業に勤務。
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(英語塾キャタル代表 三石 郷史 文=本誌編集部)