9月6日に秋篠宮家の長男・悠仁さまが19歳を迎え、40年ぶりとなる成年式が開かれた。勲章をつけた姿に、SNSでは“御曹司みたいだ”と話題になった。
コラムニストの矢部万紀子さんは「成年式を機に、悠仁さまらしさが注目を集めるようになった。これから同級生たちに見せた率直さを、国民にも見せていくことだと思う。自分を俯瞰できて、心を開ける人を、国民は受け入れるに違いない」という――。
■悠仁さまが“スーパー御曹司”だと話題に
秋篠宮家の長男悠仁さまが19歳を迎えた9月6日、皇室で40年ぶりという成年式があった。平安絵巻さながらの儀式から数日後、「悠仁さまが『ネットミーム』になっていますよ」と教えてくれる人がいた。昭和生まれには聞き慣れない言葉だったが、「ネット上の流行」を表すらしい。調べるとXなどで「悠仁さま=スーパー御曹司説」が盛り上がっていて、悠仁さまのカッコ良さをたくさんの人が今どきに表現していた。
何を隠そう今からさかのぼること6カ月前、私は悠仁さまの初めての記者会見(3月3日)を拝見し、プレジデントオンラインで「悠仁さま=スタイル抜群説」を打ち出している。会見前、「いつもつまらなそうな、笑わない高校生」という印象だった悠仁さまが、「よく笑う、足の長い、今どき男子」とわかってうれしかったので書いた(「天皇家への遠慮」が薄れ始めた…筑波大生になった悠仁さまに感じた「秋篠宮家」の“静かな変化”)。
ネットでの人気も、悠仁さまのイメージ激変にあるようだった。高校に向かう悠仁さまの写真(メディアの盗み撮り)と、「加冠の儀」を終えた浅葱色の装束姿の写真(正式バージョン)を並べ、劇的ビフォー(クラスのさえない男子)・アフター(スーパー御曹司)と見立てる投稿がXにあって、「いいね!」がつきまくっていた。なるほどドラマや少女漫画みたいな見立てで、私も心で「いいね!」を押した。

■“若い世代”のイメージも激変した
この流れ、宮内庁のインスタグラムが作ったと言っていいと思う。2024年4月から天皇ご一家だけを対象に始めたが、つい1カ月前、正式には8月18日に「7月のご活動を紹介します」という形で秋篠宮家をはじめ、他の皇族に対象を広げていた。
今となっては「成年式狙い」だったとわかるが、9月6日に早速「加冠の儀」関連写真16枚、その後も関連写真、リール動画が次々アップされた。これがデジタルネイティブ世代の目にも触れ、「スーパー御曹司説」になったと推測できる。
以前も書いたけれど、悠仁さまは今までアゲインの風に吹かれすぎていた。幼稚園から中学まで通ったお茶の水女子大の附属から、「提携校進学制度」によって筑波大学附属高校へ進んだ。名門校だったから、入学前は「特別扱い」、入学後は「成績不振」とネットや一部メディアが書き立てた。若い世代にも悠仁さまへのネガティブイメージがあったのだろう。それが一新されたとすれば、広報戦略としてのインスタ、本領発揮だ。
■インスタも愛子さまと比較される現実
ただし、複雑な構図も浮き彫りにするのがインスタだ。「いいね!」の数が刻一刻、明らかになる。悠仁さまの「加冠の儀」の写真には、9月16日現在で25万8000「いいね!」がついている。
女性自身はこの人気を14日に報じているのだが、その見出しは「《成年式の投稿が約25万いいね》悠仁さま 単独で宮内庁インスタに登場も…際立つ愛子さまの“国民的人気”」だった。
悠仁さまの存在感が高まりつつあるとしつつも、「8月に公開された、須崎御用邸でのラッシュガード姿のご一家のお写真が57.4万件」などと書き、愛子さま関連の「いいね!」に負けていると匂わせる。「愛子さまの国民人気の高さには驚くばかりです」という皇室ジャーナリストの言葉が最後の締めだ。
このように悠仁さまは、常に愛子さまと共にある。これも何度となく書いてきたが、かたや「次男の長男」、かたや「長男の長女」。このねじれと共にあるのだ。
成年式をノーカットで放映した「日テレニュース24」で、日本テレビ客員解説委員(元読売新聞宮内庁担当記者)の井上茂男さんが上皇さまや天皇陛下、秋篠宮さまの成年式と比較し、「親、子、孫と縦につながる流れが、今回は甥ごさん。横へ動くんだなと感じさせるものでもあります」と感想を語っていた。「横へ動く」という初めての事態に、ベテラン記者の井上さんも戸惑っているようだった。
■“愛子天皇”を感じながら、皇室を背負っていく
「トップの家に生まれ育ったのに、トップになれない」愛子さまと、「いずれはトップになるが、今いるのは二番手の家」の悠仁さま。前者は心を寄せる入り口になり、後者はつっこみを入れる入り口になる。それが秋篠宮家バッシングの根本にあると思っている。
おふたりの問題ではない、「男系男子」による継承を定めている皇室典範の問題だ。
井上さんも「これからの皇室は悠仁さまお一人の肩にかかっている」とした上で、「将来、悠仁さまが結婚をされる女性の負担は大変大きいのだろうと思います」と言っていた。「適応障害」という病を得た皇后雅子さまが念頭にあるはずだ。そして長い皇室取材を振り返り、皇位継承の問題について何も手が打たれていない現実に「政府の怠慢と思わずにいられません」と言っていた。
一方でずっと先をいっているのが世論だ。毎日新聞が2025年5月に実施した世論調査では、「女性天皇」を認めるという人が7割にのぼった。私も7割派に属する1人だが、とはいえ政府の怠慢さが急に改まるとは考えにくく、「愛子天皇」より「悠仁天皇」の可能性がずっと高いのだろうと思う。そして、そうなった時も国民の心には「幻の愛子天皇」が残るのではないか、そんなふうに思う。
■“悠仁さまのオーラ”は、国民の気持ちをつかむ拠り所になる
「加冠の儀」で気づいたことがある。冠をつけたあと、あごの下で結んだ白い紐を和鋏で切るという儀式があった。右、左と2度、パチン、パチンと音がする。鋏が顔に近付くからだろう、悠仁さまは音の瞬間、目をつぶり、ビクッとしていた。
日テレニュースNNN」は天皇陛下と秋篠宮さまの成年式での同じ場面も放送したが、2人ともほとんど目はつぶらず、顔も動かいていなかった。悠仁さまは繊細なんですよ、みなさん。
「スーパー御曹司説」に話を戻すと、ネットの人々は「悠仁さまのオーラがすごい」と言い合っていた。悠仁さまの同世代が感じた「オーラ」は、国民の気持ちをつかむ拠り所になるに違いない。とても喜ばしいと思う。
そして今回もう一つ、悠仁さまを支える拠り所を発見した。それは共学育ちパワーだ。中学、高校を男子だけで過ごした陛下や秋篠宮さまと違い、悠仁さまは幼稚園から大学まで、ずっと男女共学だ。これが強みだとはっきりわかったのが、8月31日に放映された「成年式へ 素顔の悠仁さま」(NHK)だった。
冒頭、筑波大学附属高校で3年間同じクラスだったという2人が登場した。まず女子が、悠仁さまの呼び方を話題にした。「なんて呼べばいいのかを友達と集まって聞いた」というのだ。
答えは「『ひいちゃん』とか『ひいくん』とか」だったという。
■同級生は「大人びて、受け入れている」と語った
未来の天皇が同級生になった時、私ならどうするだろう。筑波大附属では、まずはなんと呼べばいいのかを本人に聞きにいった。その堂々とした対等感に、感動してしまった。彼女は番組の最後でもう一つ、悠仁さまに聞きに行ったことについてこう語っている。
「皇族として自分の自由が制限されることもあると思うので、それが嫌にならないかというのを失礼ながら聞いてみたら、少し、悠仁さまは考えてから、『でも、そういう制限はあるけど、貴重な体験ができたりもするんだ』と。大人びてる感じがしましたし、そういう立場でご公務をしていくっていうのも受け入れていられる感じがしました」
これって、宮内庁記者はもとより誰もが聞きたいことだと思う。聞きたいけど、聞きづらいことを聞く。率直で度胸のある人だと思う。悠仁さまの立場について「大人びて、受け入れている」とまとめたのもすごい。悠仁さまの心情が垣間みえ、何か心がしーんとしてきた。
番組にはもう1人、男子同級生も登場した。
冒頭で彼は、「皇室ジョークがありましたね」と言っていた。何かというと、「校庭で蹴鞠をした時に『先祖の血が騒ぐ』って」。彼は悠仁さまを「お茶目、元気な方、感情を素直に表現するタイプ」と分析していた。
■“らしさ”を出していっていただきたい
2人を見て、悠仁さまには共学パワーがあると確信した。コミュ力豊かな女子との会話や男子とのジョークの応酬があって、自分の立場を俯瞰することができた。そして同級生たちに見せた率直さを、国民にも見せていくことだと思う。自分を俯瞰できて、心を開ける人を、国民は受け入れるに違いない。
悠仁さまは3月の記者会見で、皇族としての立場や受け止めについて「頂いたお仕事の一つ一つに心を込めて丁寧に取り組むことが大切であると考えています。また、お役に立てるよう努めてまいりたいと思います」と答えていた。
秋篠宮さまの「公務は受身的なもの」を思い出した。悠仁さまが誕生する2年前の2004年11月、秋篠宮さまは39歳の誕生日にあたっての会見で「公務というものはかなり受け身的なものではないかなと」と述べた。依頼があり、意義あることであれば務める、自分のための公務はつくらない。そのような考えだった。
この考えを、悠仁さまは十分ご存じだろう。成年皇族として歩み始めた悠仁さまだから、まずは父の背中を見ながらになるのは当然のことだ。だけど、少しずつ、悠仁さまらしさを出していっていただきたい。
■国民と向き合い続けていくことになる
「成年式へ 素顔の悠仁さま」の中で名古屋大学大学院准教授の河西秀哉さんは、悠仁さまは「国民が皇室に何を求めるかという問いにずっと向き合うことになる」と指摘していた。その上で、「今の象徴天皇制は天皇の人柄に左右されるところがあり、本人のキャラクターと国民の期待感が入り混じりながら展開されている」と語っていた。
成年式を機に見えてきた悠仁さまの「スーパー御曹司のオーラ」と「共学パワー」。このキャラクターを見せていけば、かなり期待される展開になりますよ。ささやかにそうお伝え申し上げたい。

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矢部 万紀子(やべ・まきこ)

コラムニスト

1961年生まれ。83年、朝日新聞社に入社。宇都宮支局、学芸部を経て、週刊誌「アエラ」の創刊メンバーに。その後、経済部、「週刊朝日」などで記者をし、「週刊朝日」副編集長、「アエラ」編集長代理、書籍編集部長などをつとめる。「週刊朝日」時代に担当したコラムが松本人志著『遺書』『松本』となり、ミリオンセラーになる。2011年4月、いきいき株式会社(現「株式会社ハルメク」)に入社、同年6月から2017年7月まで、50代からの女性のための月刊生活情報誌「いきいき」(現「ハルメク」)編集長。著書に『笑顔の雅子さま 生きづらさを超えて』『美智子さまという奇跡』『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』がある。

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(コラムニスト 矢部 万紀子)
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