新NISAではどれに投資をすればいいのか。サラリーマン生活から投資で2億円の資産を築いた東山一悟さんは「個別株はハードルが高い。
コストが安く少額で分散投資ができる投資信託から始めるのが良い」という――。(第2回)
※本稿は、東山一悟『投資で2億稼いだ社畜のぼくが15歳の娘に伝えたい29の真実』(JTBパブリッシング)の一部を再編集したものです。
■個別株か投資信託か、最初の分かれ道
どこかの金融機関に口座を開いたら、いよいよ実際に投資を始めるにあたっての具体的なアドバイスに移る。まず、考えないといけないのは何に投資をするのかということだ。
株式へ国際分散投資をすることが一番お勧めだけど、株式投資の対象は大きく分けると、個別の株式と投資信託の二つがある。
個別の株式というのは自分で選んだ株に投資をするもので、証券会社の口座が必要となる。アメリカ、中国など一部の外国の株はネット証券などで手軽に投資できる。取引手数料も以前に比べてずいぶん安くなり、NISAで米国株に投資する場合、手数料を無料にしているネット証券もある。
投信は自分ではなくて、プロのファンドマネージャーに複数の株を選んでもらう商品だ。大勢の個人投資家からおカネを集めることで、投資資金が多額になるからたくさんの株を購入することができる。投信によって何に投資をするか変わってくるので、投資家はそこの違いで選ぶことができる。
現在、日本には約4000社が上場して、個人投資家が簡単に取引できる。
個人が簡単に購入できる投信(公募投信)は約6000本と、個別銘柄数より多い。投信は全世界の株式を対象とするものから、日本の銀行だけ、インドの株だけ、京都に本社がある会社だけ、アメリカのハイテク企業の株価の3倍の動きをするなど、さまざまな種類のものがある。
■プロも選ぶインデックスファンドの強み
さらに、投信はインデックスファンドとアクティブファンドの2種類に大別される。
インデックスは「パッシブ」といわれる手法で日経平均株価、ニューヨークダウなどの指数に連動するもの。アクティブはそのインデックス(ベンチマーク)を上回ることを基本としている。
投信は持っているだけでコスト(信託報酬)がかかるが、インデックスファンドの方が全体的に安い。
国内株のインデックスでは旧東証一部全部で、現在はプライム市場を中心としたTOPIXが2025年1月で約1700銘柄と、日経平均に採用されている225銘柄よりも多く分散効果が高いので、機関投資家は一般的にこちらを使う。
よくメディアで出ている日経平均は、文字通り株価を平均するため、ファーストリテイリング(2024年11月29日の株価5万1110円)といった値段の高い株(値嵩(がさ)株)の影響の大きさがデメリットとされることも、機関投資家がTOPIXを多く使う要因となっている。
また、アメリカ株も同様に、500銘柄を対象にしたS&P500の方が、30銘柄しかないニューヨークダウよりメジャーだ。このほか全世界株式のインデックス、アメリカのハイテク株を中心としたNASDAQ市場の上位100社からなるNASDAQ100、先進国や新興国だけのインデックスが日本では人気がある。
■買った時点では価格未定という投資信託のフシギ
投信は証券会社のほか、銀行や郵便局(ゆうちょ銀行)でも購入できるし、投信を運用している会社から直接買うこともできるが、金融機関によって取り扱う銘柄が異なっている。1日に一度しか値段がつかないし、購入時にはその価格がいくらか正確にわからないというのが特徴だ。

株式の場合は原則、証券取引所が開いている時間(東京証券取引所なら午前9時~午後3時半)なら、いつでも取引ができる。買いたい人と売りたい人の値段をマッチングさせ値段がつくから、取引時間中はリアルタイムに値段が変わり、いくらで買いたいと値段を指定する指値(さしね)も可能だ。指値がよくわからなければ成行(なりゆき)といって、いくらでもいいから買いたい、売りたいというと、現在の株価で取引を成立させようとする方法もある。
投信の場合、株式の終値(東京証券取引所なら午後3時半の取引終了時点の価格)によって、その値段(基準価額という)が決まる。しかし、日本株を対象にした投信は、原則午後3時までに注文しないと、その日のうちに投信を買えない。だから、終値が決まらない時点で注文を出すため、だいたいいくらくらいという見通しがついても、正確な価格はわからない。
まして海外株の投信は、時差が影響する。例えばニューヨーク証券取引所の営業時間は日本時間の午後11時半から翌日の午前6時(夏時間期間中は午後10時半から翌午前5時)になる。そのため、当日に出した注文が翌日以降にならないと買えないことになる。ますますいくらで買えるかわからないというわけだ。
■投信の圧倒的メリット
ただ、これまでも強調したように中長期で株価が上がるという考えに基づいての投資だから、その日の株価が高かった、安かったは長期投資には影響がないといえる。
投信のなかでも、証券取引所で売買できるETF(上場投信)というのがあり、これは投信だけど取引時間中ならリアルタイムで購入できる。
日銀が日本株を購入する際はETFを活用していたこともあり、プロからも注目される投資商品。ぼく自身は、ETFは全世界に投資するものや、アメリカのハイテク企業に投資するものなど4種類持っている。
初心者は投信をベースにすることをお勧めする。
余裕や関心があれば個別株、さらに余裕があれば暗号資産、金など他の投資商品に手を広げればいい。
なぜ投信がベースになるかというと、少額で国際分散が手軽にできるからだ。投信の場合、ネット証券では100円から買える。さらに、Vポイント、楽天ポイントなどポイントだけで投資することも可能だ。
日本株は単位株といって通常は100株単位で購入するため、一般的に数万円から数百万円かかる。最近はミニ株といって1株だけ購入可能なところもあるが、国際分散投資を手軽にやろうとするとやはり投信に軍配が上がる。
■全世界に分散、最強投信「オルカン」の実力
2024年から始まった新NISAで一番人気があるのは、三菱UFJアセットマネジメントが運用している「オルカン」こと「eMAXIS Slim 全世界株式」だ。ぼくももちろん購入している。
オルカンは日本、アメリカ、イギリス、中国、インド、ブラジルなど世界47カ国・地域の約3000社に投資している。
時価総額の大きい企業から購入。円だけでなく、ドル、ユーロ、中国元、インドルピーなどさまざまな為替もあるため、個人でこれだけのものに投資をするのは極めて困難だ。
世界を代表する大企業に投資をしており、2024年10月現在、NVIDIA、アップル、マイクロソフト、アマゾン、メタ・プラットフォームズが組み入れ上位。オルカンのうち、NVIDIA、アップル、マイクロソフトは4%程度、アマゾンが2%、それ以外の企業は2%未満から構成されている。日本のトヨタ自動車、三菱UFJフィナンシャル・グループ、韓国のサムスン電子、スイスのネスレ、ドイツのメルセデス・ベンツグループなど名だたる企業を購入している。
これだけの企業が一斉に倒産するというのは、前に触れたように核戦争などで文明が崩壊することぐらいしか思いつかない。3000社の株価が長期にわたって一斉に下がりっぱなしということも、資本主義のメカニズムからすると考えにくい。だから、オルカン一本あれば良いという言説は、理屈を納得していればおかしいとは思わない。
■4兆円「オルカン」人気を支える低コストの威力
オルカンの国別比率はアメリカが64.1%、日本4.7%、イギリス3.1%の順(2024年10月現在)。よく同シリーズの米国株式(S&P500)とどちらが良いか議論になる。でも、アメリカに6割投資しているから、それほど大きな差はつかないし、分散の重要性のところでも指摘したが、ぼくはこちらの方が好き。でも、アメリカ株の比率を上げるために両ファンドを購入するのも可能だ。

全世界株式や米国株式に投資するファンドはいろんな運用会社から出ているが、今回eMAXIS Slimを紹介しているのは、三菱UFJアセットマネジメントがこのシリーズについて業界最低水準のコストを将来にわたってめざし続けるということを掲げているため。オルカンの残高にあたる純資産総額も2024年9月に4兆円を超え、規模の利益でコスト面で優位に立てるから安心できる。
ちなみに、インデックスファンドの場合はコストが非常に重要になる。なぜなら、将来のリターンがどうなるかは誰にもわからない。しかし、コストならば今、投資家の意思で安いものを選択できるからだ。コストがかかる分、投信のリターンが押し下げられる。0.1%違うだけでも長期投資で考えると大きな差が出てしまう。
だから、オルカンは人気がある。

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東山 一悟(とうやま・いちご)

個人投資家

1991年筑波大学卒業後、メディア企業で勤務。20年に戦力外通告を受け同社を退社。投資を続けてきた結果、総資産は2億円を突破。現在は中小メディア企業に勤務しながら、投資に関する情報等を寄稿。


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(個人投資家 東山 一悟)
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